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ポンコツ女王の投資戦記  作者: 未知(いまだ・とも)


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9/10

番外編『おやすみの前に』

深夜。


寝衣に着替え、モノクルを外し……

軍師がベッドでくつろいでいると、スマホの通知が鳴った。


女王からのLINEだ。


「こんな時間に、何を……」


軍師はアプリを開く。


女王「軍師、まだ起きてる?」


軍師「起きておりますよ」


女王「ね、自撮り送って」


軍師「はい?」


突然の提案に、一瞬思考が止まる。


軍師「私の、ですか?」


女王「うん、自撮り写真。……だめ?」


軍師「別に構いませんが、何の意味が……」


女王「べつに? ちょっと見たくなっただけ」


軍師「私の顔が見たいなら、自室に来ていただければいくらでも」


女王「そういうんじゃないの! 自撮りが見たいの」


軍師「はあ……わかりました」


軍師はスマホを構えてシャッターを押した。

そして、画像を送信する。


挿絵(By みてみん)


軍師「これでよろしいですか?」


女王「うん、ありがと」


しばらくして、女王からまたメッセージが届く。


女王「ね」


軍師「はい」


女王「こういうの、他の人にも送ったことある?」


軍師「こういうの? 私の自撮り写真を、という意味ですか?」


女王「うん……」


軍師は、そこに秘められている女王の意図を考えた。


おそらく——。


女王本人は自覚していないが、本心では、誰か親しい女性でもいたのかと気になっているのだろう。

軍師は軽くため息をついて、返信を打った。


軍師「いえ、自撮りを送ったのは貴女が初めてですよ」


女王「そうなのね!」


嬉しかったのだろう。

返信は、ほとんど間を置かずに届いた。


軍師「そもそも私の自撮りなど、欲しがる人はおりませんでしたよ」


女王「……そっか」


それは事実だったが、理由は彼女が考えているものとはおそらく違う。


生前の軍師は、城内では『氷の鷲』の二つ名を持つほど、畏れられていた存在だったのだ。

気軽に自撮りを頼めるような人間など、いるはずもない。


女王からのメッセージは続く。


女王「ねえ軍師」


軍師「はい」


女王「すごくいい顔で笑ってるわ」


そう言われて、軍師は慌ててカメラロールに残っている写真を確認した。

そこに写っている自分は——、


誰かに心を許して、笑みを浮かべているように見えないこともない。


軍師「さて……気のせいではないでしょうか」


女王「そんなことないわ、すっごいいい顔。保存したわ!」


軍師は苦笑いを浮かべながら、カメラロールを閉じた。


軍師「これでよく眠れそうですか?」


女王「うん。ありがとね」


軍師「それはようございました」


女王「じゃあおやすみ、軍師」


軍師「おやすみなさいませ、女王。よい夢を」


軍師はスマホを置いた。

そして今頃、自分の写真を眺めながら、上機嫌で眠りにつこうとしている主君を思い……


彼は再び、柔らかな微笑みを浮かべた。


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