逃走側の夜更かし
総括の連中が出てきた。
つまりは奴らは手段を問わずにかかってくるということだ。
まぁ、いくら総括の連中がかかってこようとも追い返すだけだ。
不慮の事故が起きるかもだけどな。
そんな、考えるだけで面倒な、だけど少しだけあいつらを痛めつけられるチャンスかもしれないと思ってしまうことを考えた。
今日も今日とて夜景観賞だ。
前の時と違う場所で景色が違った。少し場所が変わるだけで光の当たり方なんかも変わり、まったく別の景色に見えた。
ただ、これだけは言える。
「きれいだ。」
このために下界に降りてきたともいえるだろう。
そんな夜景に浸っていると、ピロンとスマホが鳴った。
「んっ。」
ポケットからスマホを取り出し、確認すると一さんからの連絡だった。
ちなみに、本屋に行ってからたまに会って遊んだりするときもあった。
一さんと遊んでいるときは、一人でいる時よりも楽しかった。最近はあいつらから逃げる息抜きにもなっている。逃走生活はストレスを感じるものだ。
とっ、そんなことよりも送られてきたメールは、
「今から会えますか?」
そんな端的な一文だった。
休日の昼間に遊んだことはあるが、平日の夜は一度もない。
俺はそれに適当に返信し、どこで集合かを聞いた。
「さてと、行くか。夜遊びだ。」
そう言いながら隣のビルに飛び移った。
集合場所は駅前。
夜の駅前は退勤時間なのだろう。スーツを着たサラリーマンが多くいた。
そんな中、スーツを着たまま立っている女性を見つけた。一さんだ。
「こんばんは、一。珍しいね、こんな夜に。」
そう、声をかけると一さんはこちらを見た。
「こんばんは。」
そういい、彼女は顔に笑顔を浮かべた。
その顔は昼間には見えない光にかすかに照らされた顔だ。
「ごめんね。こんな夜に呼び出して。」
「いや、夜更かし中だったんで。大丈夫。」
最近は一さんにも敬語ではなく、ため口で話せるようになった。案外、慣れってのは優秀らしい。
「玲って、お酒、いける?」
「そこまで強くはないけどね。」
大嘘。天界ではすげぇ飲んでた。上司との付き合い、飲み比べで散々飲まされた。
そのせいで何度二日酔いになったか。
「じゃぁ、さ。今から飲み屋に行こうよ。すこし、話させて。」
やっぱか。
そうして、近くの飲み屋に入った。
店内は机といすで狭く、多くのサラリーマンによってにぎわっていた。
俺たちは空いていた4人席に座り、適当にビールとおつまみを注文した。
一さんはなぜか対面に座らず、俺の横に座った。少し席が狭いが、特段悪い気はしないのでそのままにしておく。
注文した品物が届くまで二人とも何もしゃべらなかった。
実際は数分ほどなのだろうが、とても長く感じた。
ようやく品物が届いたとき、一さんは口を開いた。
「飲もう。」
そう言ってビールをコップに注ぎ、一気に飲んだ。
「ぷはぁ。」
俺もそれに倣ってビールを飲み干す。喉に冷たい感覚が染み渡り、とても気持ちがよかった。
「はぁ、ごめんね。こんな夜に。」
一さんはそういうと、またビールを飲んだ。
もう一杯。もう一杯と。
一つの缶が空になると、もちろん飲む手を止めて店員にもう一度注文した。
そして、おつまみである枝豆を食べ始めた。
一さんは酒に強いわけではないらしく、缶一本ですでに酔っていた。
「ねぇ。玲。愚痴聞いて。」
俺に寄りかかりながら、顔を赤くしながらそう聞いてきた。
まぁ。予想通りだな。
「俺でよければ。」
そういうと、うれしそうな顔になり、枝豆を少し食べて話し始めた。
どうやらセクハラというのにあったらしい。
自分の仕事の上司に体をまさぐられたといい、その時の状況を逐一話し始めた。
かなり今の仕事に追われている状態で、部署全体が焦っている状態でその上司はロクに何もせずに酒を飲んで怒鳴るだけだったらしい。
そして酒を大量に飲み、顔を真っ赤にしながら一さんに近づいた。
「ねぇ。ムラムラするんだよ。仕事のじゃなまになるからさぁ。解消してよ。」
そういい、一さんの返答を待たずに体のいたるところをまさぐり始めた。
必死に抵抗したらしいが、もうすでに全員退社し、一さんだけが働いていた状態だったから誰にも見られていなかったらしい。
この説明をする間に一さんは3回ビールを注文し、計7本のビールを一人で飲み干していた。
俺は一さんの説明をただ静かに聞き続けた。
「ふぅ。ごめんね。こんな愚痴に付き合わせて。」
言い終わるとそういった。
「いや、大丈夫ですよ。それよりもその上司、捕まえられないんですか?」
「あの上司、人がいなくなった時を狙ってきてたもん。防犯カメラもないし。証拠がないんだよ。」
なるほど。警察は使えないな。
「わかった。協力できることがあったら言って。こっちもできること探してみるから。」
「ありがとう。玲。」
一さんはそう言い、目を閉じて倒れた。
俺のほうに。
俺は急に顔が熱くなるのを本当に感じた。
一さんは目を閉じていて、かわいい寝顔を見せていた。茶色っぽいつやのある滑らかな髪が俺の腕にまとまりつき、腕に頭の重さがのっかっていた。
本当に顔が熱い。
俺は飲みかけのビールを一気に飲み干し、何とかして顔を冷まそうとする。
だが、この程度ではこの熱さは冷めず、いまだに続いていた。
何なのだろう。この熱さは恥ずかしいだけじゃない。
まぁ。今はこの状況をどうするかだ!
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