暗殺側の命を懸けた博打。
「こちら、第3開発管理部特殊警護。配置についた。」
『こちら、第1・2開発管理部特殊警護同じく配置についた。』
『了解。今から逃走者の確保または排除を開始する。この部の存続のかかった任務だ。気を引き締めてかかれ。』
命を懸けた博打当日。
俺の神生が華やかになるか終わりとなるか。この作戦にかかっている。
目標は予定通り路地裏をひっそりと歩いている。
俺と同じく路地裏などの目立たない場所で移動するようだ。
俺はというとそいつの進行方向のビルに潜んでいる。
もう少しだ。もう少しで狙撃地点に来る。
『目標が狙撃地点に接近中。弾丸誘導は頼んだぞ。』
その通信が終わり次第、手に持っている誘導装置をそいつに向ける。
『誘導開始。3秒後に射撃する。』
ボタンを押し、そいつに向け続ける。
『3』
心臓の鼓動が増える。
『2』
外すなよ。
『1』
無線機から銃声が聞こえる。
聞こえたとたんに着弾音が確かになった。
だが、その音は肉をえぐる音ではなかった。
「クソッ!」
刹那、周りで速い風が吹き、隣を第一特殊の連中が通り過ぎた。
そいつらは一直線に目標へ向かっていった。
「へぇ。なかなか考えるじゃないか。」
だが、精鋭中の精鋭の第一特殊の攻撃はすべて空を切った。
「第一特殊?そんな奴らまで出てきたか。」
『第2!狙撃急げ!第三!第一を援護しながら狙撃を誘導しろ!』
『了解!』
「クソッたれが!」
狙撃はまだ始まっているわけではない。とはいえ、いつ始まるかはわからない。
誘導装置を左手に持ち、右手でワルサーを引き抜き、目標へと照準をつける。
「いやぁ。俺一人にここまで戦力を割く必要ってあるか?」
色々言っているが、俺は引き金を引く。
にらみ合いの中に何発かの弾丸が放たられる。
目標がよけようとした途端、いつの間に行ったのかわからないが、ビルのところどころにいる第1がライフルを連続して射撃した。
そして、その銃弾かすめる中に微塵もひるまずに右手にグロック、左手にナイフを持って飛び込んだやつもいる。
化け物か?銃弾に当たって死ぬとか考えないのか?
目標は弾丸をよけているが、何発か命中している。
さすが第1だ。射撃スキルが最高峰だ。
『第2、準備完了。誘導を頼む。』
俺は左手の誘導装置を作動させ、誘導をしながらワルサーを撃ち続けた。撃つのをやめれば感づかれる。
「持久戦か。」
第1はやはりすごい。目標が攻撃をしてこないのもあるのだろうが、一切弾幕を切らさない。
一人の銃が弾切れを起こす少し前に二人目が射撃をはじめ、すぐにリロード。これを続けていた。
それに弾幕を確実に張りつづけるために軽機関銃を発射し続けている兵もいる。
「あはは!すごいねぇ。」
そんな射撃をものともしないかのように目標はいまだに笑っている。
『第2、38式高速貫徹弾装填完了。必ず当ててくれ。』
やはりさっきの弾丸は外れていたか。クソッ。
38式高速貫徹弾、通称38式弾。天界で38番目に作られた高速弾だ。
7ミリ程度の弾頭に大きめな薬莢を取り付けた弾丸だ。
だが、薬莢の大きさと専用銃を使用する必要によって連続して射撃したりは一切できない。恐ろしい速さと回転のせいで銃身が溶けるから十分な加速をするために1メートルほどの長さの銃身を交換しなければならない。
俺は右手のワルサーを仕舞い、誘導装置を両手で持つ。
あの高速弾だ。よけるなんて不可能だ。
「第1、準備完了いつでも。」
『了解。外しはしない。』
そう、無線から聞こえたときには風を切り裂く音があたりを巻き込み、第1も身を伏せた。
『閃光弾発射!』
追撃するらしい。
キィーンという耳鳴り音が鳴り、薄暗い路地裏が光に包まれた。
耳鳴りが収まると、俺はおそらくぐちゃぐちゃになっている目標を見た。
「おいおい。嘘だろ。」
ぐちゃぐちゃになっているのは、腕だけだった。
「へぇ、38式か。いいの使ってるな。」
そいつはぐちゃぐちゃになった腕を再生し、周りの第1を見た。
「しゃ、射撃開始!」
呆然としていた第1がまたも射撃を始めた。
………はずだった。
射撃開始と叫んだ時には目を開け、立っていたものはいなかった。
立っているのは目標だけだった。
「いやぁ、第1も落ちたね。昔はこんなもんじゃなかったよ。」
目標はそういい、こちらを見た。
「神殺しの…趣味はないんじゃ…なかった……のか?」
「はは。殺してなんかねぇよ。」
確かによく見ると全員胸や腹が上下している。殺していないというのは事実らしい。
「な、なぜ最初から、こうしなかった。」
平静を装え。弱みを見せるな。一気に付け込まれる。
「いやぁ。お前ら、俺がそこまで強くなければこれ以上の戦力を送ってこないだろ。めんどくせぇんだよ。」
そいつはそう、吐き捨てるように言った。
『おい!第1・3!応答しろ。目標はまだいるぞ!』
無線機から怒鳴るような声が響く。だが、そんなことよりも俺は怖かった。
あれでもかなり遊んでいたんだ。もし本気で殺しにくればどうなっていただろうか。
ただただ怖かった。
「あー。こちらお前らの目標。大丈夫だ。全員生きてる。さて、最後通牒だ。これ以上俺に手を出すな。以上だ。」
そいつは無線からの返答すら待たずに電源を切った。
「さーて。お前はどうしようか。そうだな………これ以上お前らが手を出すならそん時は覚悟ししろよ。とでも言っておけ。」
そいつは俺にそう言い残して去っていった。
…………俺は何もできなかった。
第1が必死に攻撃している中、安全なところから拳銃を撃っていただけだ。
第1はあいつからの攻撃を食らった。俺はどうだ。ロクな働きすらしていないのに無傷だ。
このクズ野郎。俺がなにをしたんだ?仲間にただ任せただけじゃないか。
…………………………やめよう。結果にもしもはない。これが俺の結果だ。
俺は、倒れた勇敢な第1を送り返すために無線機の電源を再び入れた。
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