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異世界ハーレムはただしイケメンに限る  作者: 日暮キルハ
8章 それはきっと尊い理想

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 と、啖呵を切ってはみたものの正直この場をどうにか出来る妙案はこれっぽっちも浮かんじゃいない。

 

 だってこいつ普通に強いし。

 そもそも、天使って人間がまともにやりあえる相手な気がしない。

 いま生きてるのだって完全にエールの力ありきの話だ。

 それがなかったら悲しいことだがトアの言う通り俺なんてとっくに死んでる。こいつが俺を弄んで殺そうと舐めてかかっていることを加味してもそれは間違いない。


「……」


 とはいえ、そんなのは割といつものことだ。

 いつだって相手は強くてこっちは弱くて、そのせいで散々痛い目にあってきた。

 今更、そんなことで泣き言を言うつもりも弱気になる必要もない。


 重要なのは、目の前の陰湿な天使をどうにかしないと俺は二度とうちのお転婆天使に何の話も聞けなくなるということだけ。

 目の前のこいつを何が何でも倒さなければいけないということだけ。


 そのために出来ることをすべてやるだけ。


「契約開放──5%」


 力が全身に漲るのを感じる。

 さて、まずはこれでどこまで──


「──ッ!?!?」


 気づいたときには体が重力に逆らって宙に浮いていた。

 数瞬遅れて腹部に鈍い痛みが走り、そこからさらに数瞬かけて自身が殴られ浮かされたのだと脳が理解した。


「とことん僕を不快にさせる主従だな君たちは。……舐めているのか? この僕を」


 状況を理解して、言葉が耳に入るよりも先に背中への強い衝撃が神経を揺さぶる。

 地面に這いつくばっている自身の身に何が起きたのかを理解すると同時に呼吸ができないと気付いた。


「『リザ……レ……クション』……っ」


 足りない空気を求めるように開いた口から半ば反射で散々お世話になった魔法の名と血がこぼれる。

 壊れた箇所が時間を巻き戻すように再生すると同時にようやく体が酸素にありつけた。


「どいてくれ、だっけ? 安心しなよ。君の望み通りエールとは会わせてあげるさ。僕が君の首を持っていったらどんな顔をするか今から楽しみだね」


 見誤った、つもりはないがどうやら様子見すらさせてくれるつもりはないらしい。

 あまりにも性格の悪い最高の笑みを浮かべながら最低な趣味の予定を語るトアを前にそれをはっきりと理解した。


 明らかに先ほどまでのお遊びとは違う速度と威力。

 どれほど出力を抑えていようがエールの力を本格的に借り受けるつもりなら手を抜くつもりはないということだろう。

 まったく、うちの天使は怯えられ過ぎている。


 なら、殺される前にこちらも全力で応えなければ。


「契約開放──10%」


 言葉と同時により一層強く青い力の塊が全身を覆うのを感じる。

 先ほどまでのそれとは違い、明らかに俺には分不相応でほんの少しでも気を抜けば体を突き破って暴れだしかねない力の流れが体中をすさまじい勢いで駆け巡るのを感じた。


 修行の結果、今の俺が制限時間付きで制御できるギリギリの塩梅。

 正真正銘の全力。


「……僕を、舐めるな……っ」


 正面から聞こえた声。

 今度は何が起きているのかをよく理解できた。

 ただまっすぐ走って殴る。それだけの一連の動作すら見えていなかった。


「……」


 けど、今度は違う。

 目で追えるし、体も反応する。


「舐めてねーよ。……舐めてねーから、全力で殺す!」


 左手で受け止めた拳。それを掴む手に力を込める。

 右手を握りしめ、掴んだ左手が逃げることを許さない。


「~~ッ!!」


 半身を引いて、全身の体重と共に打ち出した拳は寸分の狂いもなくトアの腹部にめり込んだ。


「『神之武器庫』──第一武器庫、第五武器庫、第八武器庫、第九武器庫、並列開門。来い、フラガラッハ! 天叢雲剣! ミョンニル! シュランガ!」


 ふわりと宙を舞うトアの体。すかさず蹴り上げてより高く体は浮き上がる。

 開いた門から人間には過ぎた力を取り出し構える。


「『複製』『念動力』『韋駄天』『威圧』『重力操作』『巨大化』『治癒不能』『増殖』『必中』『大爆発』」


 詠唱の直後、トアを囲む空は一帯が殺意に包まれる。

 一瞬の静寂、そして──


「──死ね」


 殺意は炸裂する。

 鉄すら切断する無数の剣が降り注ぎ、触れるだけであらゆるものを吹き飛ばす規模の爆発を引き起こす矢が無数に降り注ぎ、間断なく理解不能な質量が襲い掛かり、一度でも体を許せば二度と解放されることのない重力と体を縛る圧力に逆らってそれらを躱した先には二度と治らない傷を刻む妖刀が待っている。


 まともな生物であれば生存どころか体の破片ですら残ることを諦める死の環境。


「…………この……くそ……がっ」


「……さすがに死ねよ。生物として」


 しかし、相手はまともな生物とは到底言えるものではなかった。

 無傷ではない。先ほどまでの余裕はとうに消え失せ、全身ボロボロで辛うじて致命傷となりうる本当に危険な攻撃だけは捌き切っただけ。

 しかし、トアは立っていた。

 五体満足で、その眼には隠しようのない怒りと闘志が宿っている。


「……殺してやるっ。絶対に、殺してやる……!」


「……」


 そして、こちらに余力はすでになかった。

 借り受けた力の全てを注いで、その結果がこれ。

 体は鉛のように重いし、全身疲れすぎてトアの熱烈なプロポーズに気の利いた返しもできやしない。


「…………契約開放──20%」


 だから、せめてそれ以上の殺意でもって応えることにした。

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