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異世界ハーレムはただしイケメンに限る  作者: 日暮キルハ
8章 それはきっと尊い理想

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天界へ

 吐いた言葉に、先輩天使の顔が途端に険しくなった。


『貴様、今までの話を聞いていなかったのか!? 人間が自分の意思で天界に行く手段など存在しない! 全て失うつもりか!!』


「ちゃんと聞いたつもりだよ。だから、決めた」


『──ッ!! あれはもう戻らない! 行ったところで、貴様ごときにできることなど何もない。そもそも──貴様はあれの何を知っている! 何も知らないだろう! あれが助けを望んでいるのかすら知らない!』


「……そうかもな。でも、それは行かない理由にはならない。だって、エールは俺を助けたんだ。もしかしたら、俺には分からない色んな思惑があったのかもしれないけど、それでもあいつは俺を助けてくれた。俺が命を懸ける理由にはこれで十分だよ。本当に嫌ならむこうで断ってくれたらいい。」


 俺の言葉に、先輩天使は言いたいことがありすぎて言葉がでないのかわなわなと口元を震わせ、しかし何も言うことなく唇を噛みしめた。

 そして、おそらくはそれらすべてを内包したであろう言葉を叫ぶ。


『──勝手にしろ! どのみち貴様に天界に行く手段などない!』


「……だよなあ」


 それは俺にも分かっていたことだった。問題は、どうやってこの先輩天使を説得するかということ。何か突破口はないかと、頭を悩ませる。


 そのとき、沈黙を破るように、シズクがぽつりと呟いた。


「……人間が自分から望んでいけないなら、望まないで行く場合はどういう時なんだろう」


「…………っ」


 その言葉に、脳裏にある考えが閃光のように走る。

 俺が最初に天界に行ったとき、エールは俺に何と言ったか。


 ――『運命と違った死に方をした人間は、第二の人生を異世界で過ごす』


「……もしかして、死ねば天界に行ける?」


 思わず口をついた問いは、先輩天使にすぐさま否定された。


『この愚か者!! そんな簡単な話ではない! あれは運命と違った死に方をした人間を、担当の天使が一時的につながりを持たせることで天界に来させているのだ! だからこそ、意図的に天界に行くために死んだところで、拾われはしない!』


「……マジか」


 どうやらそううまくはいかないらしい。

 だが、その沈黙を破るように、シズクが微笑みながら告げた。


「それなら大丈夫だよ。だって君とエールの契約はまだ切れていないから」


『──ッ!? シズク!!』


「……え?」


 一瞬、自分の耳を疑った。

 しかし、その後の先輩天使の慌てようがシズクさんの言葉が妄言でも何でもないことを示した。


『なぜそんなことを……っ! この愚か者が今いなくなれば不味いということが分からないわけでもないだろう!? この世界を守るのがお前の望みだろう!!』


 先輩天使が酷く困惑しているようだった。

 そして、その困惑はそのまま契約者への質問として向かう。


 どうりで先輩天使がやけに真摯に色々教えてくれるわけだ。

 必要な説明をして、そのうえで諦めさせたかったわけだ。

 他ならないシズクさんのために。


 けれど、当のシズクさんは少し困ったように微笑み、すぐにはっきりと答えた。


「だって、もし私が同じような状況だったら、放ってなんておけないから」


『……っ』


 困ったように微笑むシズクさんに先輩天使は驚いたように目を見開いて、しかし何も言葉を返せない。

 代わりに、俺から心からの感謝を。


「……本当に……ありがとうございます」


 深く頭を下げる。これで最低限天界に行くための手段は手に入れた。


 その時──


「アキ君」


 その声に、思わず体は身構える。


 そりゃそうだ。

 散々好き放題しておいて、訳の分からないことに巻き込んで、挙句今度は天界に行ってくるなんて言ったらそりゃ怒られる。

 というか怒られるとか以前に不義理が過ぎる。


 甘んじて受け入れるしかあるまい。

 しかし、レイは深く溜め息を吐いて、少し呆れたように言った。


「約束して。ちゃんと帰ってくるって」


「……え?」


 拍子抜けする俺を無視して、レイは振り向き、周囲を見回した。


「みんな、それでいいよね?」


 レイと同じような呆れ顔で、レブルの仲間たちは頷いた。

 向き直るとやはりため息交じりに小さく微笑んでレイは続ける。


「私は、正直そんなにエールさんのこと知らない。でも、あの子がいたから私は今こうやってアキ君の心配なんてできるんだ。分からないし何も知らないけど、でも、私たちにとってもあの子は恩人なんだよ」


 真剣な目で俺を見つめ、静かに続ける。


「……だから、ちゃんと話を聞いてあげて。それで、一緒に帰ってきて」


 しばらくその言葉を消化できずにいた。

 そして、エールのことを思い出す。あの天使が自分に何を思っているのかは分からない。だが、今の言葉を聞いて、少しだけ分かったことがある。


「……なんだよエール、もし俺に嫌われたとしても、案外お前、いろんな奴に愛されてるっぽいぞ」

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