アンオーメン3 熔魔炎神ディンフリーツ
認めてもらえたかと思えたラウルに 逃げられない現実が迫る
「……………死んだ」
〝 俺の大剣…… 神器を両断したのは褒めてやる…… まぁその剣のおかげもあるがそれを扱えるお前の実力だ 胸張って成仏するんだな 〟
「嫌だ……!」
〝 ?! 〟
そう呟くラウルは後ろを向き 前へと進み始めた
〝 どこにも行けない ここはお前のいた場所とはかけ離れたところにあるからな 〟
「それでも行く まだ中途半端なんだ 俺の旅は………」
〝 現実を受け止めたくないのはわからなくもない だがもう一度言う お前は死んだ 〟
それでも足を止めないラウル
そんな姿を見たディンフリーツは不本意にも尋ねてしまった
〝 お前の目的は何だ? 何故我の力を欲する? 〟
「復讐の為だ」
〝 誰のだ? 〟
「っ………… 両親の…… 」
〝 嘘だな 〟
「何だと!!」
振り返るラウルにディンフリーツは失笑しながら答えた
〝 器が見えるってことはお前が何を考えているのかも読み取れるってことだ
お前は復讐なんて微塵も感じていない 両親が殺されたことは本当として逆に殺意を抱いていないのも不思議だがな 〟
ディンフリーツの言葉に何も返せないラウル
〝 顔も知らない 会ったことなどない他人同然の奴らの為に何故自分はこんな事をしなければならない
自分が志した自分の旅に水を差された 知らなければこんなに苦労することもなかった 〟
「うるさい……!! うるさい!!」
〝 不確かに覚えていることは母親に手を握って貰えただけ 無責任な繋がりだな…… お前はホントにそれで良かったのか? 〟
「黙れぇぇ!!!」
ラウルはその場に座り込んでしまった 自分が思うまいとしてきた心の声を全て目の前の奴に口出されてしまったのだから
「………わからない」
〝 ………… 〟
「わからないさ……… 実の親の愛情なんて 物心ついたときには赤の他人が俺の家族だったんだからな」
〝 開き直ったか…… 吹っ切れたことで今すぐ成仏してくれれば有り難いんだがな 〟
「だけど…… 俺も幼少の頃からその曖昧な現実に目を背けるだけじゃなかったんだ
おばさんも師匠も何も教えてくれなかったから 俺はずっと考えてきたんだ」
〝 …………じゃぁどうする? 〟
「誰だってわからないことにぶち当たるんだ 今その答えが出たんだからこれから探し出してやるよ 自分が正しい選択を出来るように!!」
〝 ………… 〟
ーーお前と同じ事を言ってるな 〝アレス〟
〝 汝……… 復讐を志す者よ 〟
「!?」
〝 我は熔魔炎神ディンフリーツ
難事に翻弄され 己を見失うことを糧にする者 名はラウル・ウォード
その空の器の向こうに示す無垢による苦行に立ち向かい 世界を放旅しうる果てに待つ
汝の滅びを加護する我は守護神となりて………… 〟
ーー空の器……
〝 その身に宿ることを許さん 〟
「え………」
詠唱を終えたディンフリーツの身体から光子が離れ ラウルの身に吸収されていく
「これって…… 魔蛍?」
〝 これとは別に〝炎豪の誓い〟という儀令がある 〟
「誓い?」
〝 他種族との拳合わせたとき形の無い契りを結べよ これが炎豪の誓いだ
お前を認める訳ではないがその意地を汲んで 抗う姿を見届けてやろう 〟
「ディンフリーツ……… 俺の…… 〝守護神〟」
〝 身体を与えてやる 慣れない初めは自分で克服しろ 〟
「………ありがとう」
出てくる筈の無い溶岩から 赤い脈の通った手が近くの岩を掴み その正体が現れた
「ハァ…… ハァ…… 剣は… 無事だな… 何でだ?」
溶岩で出来た身体を見渡しながらも マグマに浸かって溶けてない双剣に驚くラウルは落下した火口まで登る
慣れない身体をこの機を利用し 五体満足で這い上がった
「よし…… ボルマーと合流しよう」
意気揚々と山を下り いや まだ慣れない身体で下山しようとしたラウルは急斜面に逆らうことが出来ず 真っ逆さまに転げ落ちて行った
ーーうわぁ…… 懐かしい
時は少し遡り
小舟近くにいるボルマーは男達の前に倒れていた
「クソが……」
「ありゃぁ…… さっきの威勢と反比例した姿になっちゃって…」
刀の反りの部分で肩を叩く男の前に 為す術ないボルマー
他の男達が小舟から積荷を運ぶのを悔やむだけしかなかった
ーー………こいつらの格好 それにあの刀 間違いねぇ
「大丈夫? 悪党さん」
「てめぇら…… 〝日の国〟の侍が…… 遥々こんな場所に何の用だ?」
ボルマーの質問に目の前の男は何食わぬ顔で答える
「俺達の国を創りに来たんだよ」
「………何?」
驚くボルマーとは反対に満面の笑みを見せる男に声がかかる
「ゼンザイの兄貴!! 船を出す準備できあした!!」
「よぉし出航だ 次の島に向かうぞ」
「マ…… 待ちやがれ……!!」
ゼンザイが足を止める
身体の至る所にある切り傷から血を流しながらもボルマーは立ち上がった
「クソガキが一端しに買ってきた食料を……… そう易々渡せねぇな」
「そうかい…… そりゃ残念 怖いねぇ…… 死んでくれる?」
右足を前に出して折り 左足を後ろに伸ばす
地面すれすれで構えるゼンサイは左手をフリーにして右手に持つ刀に力を入れた
「さようなら」
立っているのでやっとのボルマーはただ受け止めることしかできない
逆袈裟の太刀筋が彼の心身に届く瞬間
得体の知れない塊が身代わりとなって斬られた
「………!?」
「何だ?」
その人型の塊はそのまま地面に滑り込むが すぐに立ち上がった
「……………お前 ラウルか?」
「喧嘩かボルマー? 手を貸すぜ」




