ガルバーク帝国3 復讐の旅の始まり
ガルバーク帝国 港
アバルトの話を聞いたあの日から数日が経ち
ラウルは闘技場で同盟を組んだボルマーに船を借りれるかどうか頼んでいた
ボルマーはすんなり貸してくれて 昼過ぎには荷物を全て積み 出航の用意が整っていた
「んでなんでボルマーも乗ってるんだ?」
「俺が貸した船だ 当然俺の物だろ?」
そう言ってボルマーも荷物を全て積んで寛いでいた
意味がわからない顔をするラウルに 見送りに来たアバルトが近づいてくる
「こ…… こっからどうするんだ?」
「力を付ける…… とりあえず準備をするつもりだ」
「そっ…… そうか……」
「ん?」
どこか罪悪感を感じているアバルトは 我慢できなかったのか開き直った顔でラウルを見た
「ラウル…… すまなっかった……」
アバルトの口から吐き出されたのは 嘘による謝罪と嘘で隠していた真実だった
「………えっ どっ どういう?」
「これがお前の父と母の生き様だった」
「一方的過ぎるだろ!!」
14年前の出来事を聞かされたラウルはさらに取り乱す
近くにいるボルマーも海の方を見ながら聞いていた
「すまない…… 俺もただ両親が奴隷だと伝えてくれって頼まれただけなんだ その人とはそれっきり会っていないんだ」
「誰なんだよ…… そいつは……」
「それはな……」
アバルトが名を出そうとしたとき 遠くから聞きなれた声が聞こえた
「ゼッペルさん」
ラウルをこのガルバークまで乗せてくれたWCTの車掌ゼッペルだった
「何してるんだいこんなところで」
「これから次の目的地に行こうとしているところです」
「え? 小船で? 私達が行く先ではないのかい?」
「はい…… その予定だったんですがね」
淋しげな顔で見るゼッペルにラウルは気まずさを感じていた
強制するわけもいかないゼッペルはふとアバルトの方を見る
「あなたは…… お知り合いですか?」
「え…… えぇ まぁ」
「失礼ですが名を伺っても?」
「あぁ アバルトだ バルサモ・アバルト」
「私はゼッペルと言います」
握手を交わす二人
「してラウル君 君はこれから何をするんだい? 強くなるとか言っていたが」
「…………」
ラウルは言葉を詰まらせた
当然だ これからやることは七大国に背く行為なのだから
もちろんのことゼッペルにも迷惑がかかる
しかし ラウルはこれから取る行動をこの数日いっぱい考えて覚悟を決めていたのだった
自然に背に差す剣を触りながら
「俺はこれから…… 復讐の旅に出ます」
「…………え?」
お世話になったゼッペルに対し 悪いと思うラウルは苦しくも話す
「俺の両親はファミリア・フォードットの奴等に殺されました」
「?!!」
「ですのでこれから…… 仇を討つために力を蓄える」
「…………」
「すみません……」
ラウルの言葉にゼッペルは困った顔をしていた と同時にどこか思いつめた表情も見せる
「ゼッペルさん?」
ゼッペルは懐から小さな鉱物を加工したような粒を取り出し ラウルに渡した
「これって……」
「魔蛍琥珀って言うんだ 俺の守護神アレスから精錬させたものだ もしものときはこれで呼んでくれ」
「呼ぶって……」
「それじゃぁラウル君……」
ラウルの肩に手を置き
「無理だけはしないでくれ」
それだけの言葉を残し ゼッペルは列車のある方へと歩いて行ってしまった
「なんで…… 助けを求めていいんだ?」
「ラウル あまり人に今の自分の目的を口に出すな……」
「ごめん…… でも…… あの人にはなんでか言っても良いって思ったんだ それに……」
ラウルはゼッペルから貰った魔蛍琥珀をじっと見つめる
ーーヴァースさんに貰ったペンダントと同じ物だ
ラウルは手に持つ魔蛍琥珀を握り締め 船へと歩く
「じゃぁアバルト…… 一旦ここでお別れだな」
「あぁ…… 気を付けるんだぞ」
「あんたはこれからどうするんだ?」
「微力でも仲間を集め続けるさ これでも少しはいるんだぜ!」
「そっか……」
ラウルが小船に乗ると ボルマーが立ち上がって帆を張ろうとしていた
「ラウル!! ………いや」
「…………?!」
アバルトは今までの態度に反して礼儀正しくお辞儀した
「無事を祈っています!! 王子!!」
ラウルの父ハルラはアバルトの恩人であり 一国の王だ
過去の出来事が無ければ 当然目の前で復讐の道を辿ろうしているラウルも王位を継いでいたかもしれない
そんなことを考えていたアバルトの顔は悔やみに悔やみきれなかった
あの日の惨劇を思い出していたのだった
「あぁ! 行ってくる!」
陸を離れるラウルの手を振る姿をハルラと重ねるアバルト
その表情は決心の意を表しており 自身の使命を全うする為にその場を後にした
風に乗って進み続ける小船に任せて一息つくボルマーは空を見ながらその場に座り 持ってきた酒瓶の蓋を開けて豪快に飲む
「ハァ……」
「どうしたラウル?」
「…………全然先が見えねぇ」
「まだ島を出たばかりだろ? 当然だ!」
「いや違くて…… 一瞬冷静になると恐怖を覚えると言うか」
「あぁ…… まぁあるわな 実感がねぇっていうか」
マストに凭れるラウルは遠い海を見ていた
「似てるな…… 俺と」
「ボルマーに?」
「あぁ…… 俺も一度復讐の為にこの国を離れたときがあったんだ
あんな小さく見えるガルバークでも取り戻したかったんだよな~~」
「…………何気に先輩だったのかボルマー」
「うるせぃ! それより何処に向かうんだ船長」
「船長?! おっ…… 俺は……! 別にそんな……!!」
ーーまだまだガキだな
照れるラウルに苦笑するボルマー ガルバーク帝国のある島は跡形も見えなくなり
「アンオーメンに行こうと思う」
ラウルの新たな旅が始まった
ガルバーク帝国 港に停泊しているWCTの駅周辺
「車掌! 乗客全員乗りましたぜぃ!!」
「ふん~ 整備も万全!!」
「わかった!」
汽笛が鳴り WCTーーワールド・クレイジー・トレインーーは車輪を徐々に動かし
駆動力を感じさせる列車は次の目的地へと走り出そうとしていた
「あれから何も起こらなくて良かったな ゼル」
「あぁ…… なぁゴルク」
「…………?」
車掌室でここ最近の記録を記しているゼッペルは重りを付けた一言を 近くに立っているゴルクレットに言い放つ
「決行するぞ 準備だ」
「何を……?」
「ファミリアフォードットを潰す!!」




