ガルバーク帝国2 思い出の産物
王都内に連れてこられたラウルは
貴族しか入れないような高級飲食店へと足を踏み入れる
「これはこれはガンルイス御一行様 お待ちしておりました 席へご案内します」
真ん中のテーブルへと誘導され 店のスタッフが椅子を引いて待っていた
「すげぇ……」
「さぁ 座って」
ケルトの差しだす手の先へと進み 椅子に腰を下ろす
「あの………」
ラウルが質問しようとすると 後ろから一皿を手に持つ別のスタッフがラウルの背後からテーブルに音を立てずに次々と置かれた
「さ…… まずは乾杯といこうか」
ワインが注がれたグラスを持ちながら言うケルト それに合わせるように片手で持ち上げるモルガナ
空気を読まなければとラウルもアルコールが入っていない飲み物を手に持った
「乾杯」
「か…… 乾杯」
ふとモルガナを見ると 何も言わずに相槌とグラスを少し上に上げる彼女に緊張を覚える
「美味しいかい? ラウル君」
「は…… はい」
ステージで奏でる伴奏者から流れ出すメロディーが店内に雰囲気を与える空間の中
いつの間にか緊張も解けていて 目の前に次々と出される料理に食欲が湧いているラウル
「あのケルトさん」
「なんだ?」
「その……… すみません こんなに高い物を御馳走になってしまって」
「君は自分がどれほどのことをしたのか実感が無いようだね」
「え?」
そのときモルガナも口を開く
「特に私達はずっと苦しんできた 10年前のあの日からずっと……
そして今になって真実を知ることが出来た でも……」
「………ルーナイト」
「そう……… 彼とは幼い頃に一緒に遊んだ でもあの一件以来一度も会うことは無かった」
「そうだ…… まさに地獄のような夜だったからな…… どこかで死んでいるとも思ってしまっていた」
ラウルは二人の会話を聞きながら 取り憑かれたときに見たルーナイトの記憶を思い出していた
「ルーナイトはあの後…… 誰かに助けられていたんです」
「「 ?! 」」
「その人は…… お前の両親を殺した相手をそれでも許すか? 仲良しこよしが幸せか? とルーナイトに聞いていました」
「「 …… 」」
「言ってる事が正しいかどうかは…… 俺に答えは出せません
だけど彼はルーナイトにとって救いのような存在だったと思います 奇跡から生まれた 幸せだったと思います」
「………そうか 国中が支配された中で 助けてくれる人がいたのか」
その後も国の事情を二人から聞いた
モーガンという国王がいたこと モルガナが王族だったこと ルランと呼ばれる存在
ドレイルの起こした謀反 モーガンの過ちと思想 ボルマーがグレていたときの事とか
そしてモルガナとケルトの10年間の苦しみ
救われたことを心から実感しているのか 途中からは涙を流しながら話していた
食事を終えると三人は入り口前に出ていた
「あの…… 本当に御馳走様でした」
「さっきから金の心配でもしてるのか? 心配いらん! ドレイルの野郎からせしめて来たからな!」
「うわー ケルトおじさん悪質」
「じょ…… 冗談だ! これはドレイルからってのもあるんだ」
まるで親子のようなケルトとモルガナにラウルは不意に尋ねる
「二人はこれからどうするんですか?」
「私は一人で暮らすことにしたわ 王位を背負わない今 とりあえず自由にするって決めたから
おじさんは息子と娘との10年振りの新生活が始まってるからね」
「と言いつつも家は隣同士 今までと変わらんよ」
仲睦まじい光景を見ているラウルは 何かを思ったのか
「では俺はこれで失礼します 食事とても美味しかったです」
一礼してその場を後にしようとするラウルをケルトは呼び止めた
「ラウル君! 君は恩人だ いつでも我々を頼ってくれよ」
「………はい」
ーー出来る訳がない せっかく幸せを掴んだ人達なんだから
ラウルはそれ以降後ろを振り向く事は無かった
なぜなら 今からやろうとしていることはお礼を言ってくれたあの人達に背く行為なのだから




