ガルバーク帝国1 ラウル・ウォード
中心街を歩くと何処でも目につく闘技場が聳え立つ
それは王都に建てられている王宮に負けず劣らずの気高く美しい雰囲気を漂わせている
数か月前に世界を震撼させる事件が起きつつも ガルバーク帝国国王ルドレイン王の指揮の下 国民達は迅速に復興に取り組んでいた
そんな中でも復興に必要な資材や食材を調達する者 それほど必要でもない物も仕入れる輩も出没し
商売をする者達が増えつつあり 国中に活気が戻ろうとしていた
そんな中 刀を売る店に足を踏み入れる金髪の少年 名はラウル・ウォード
腕に自信があり闘技でその力を試そうとこの国へ来た彼だったが
数日前に突然現れたアバルトの言葉に混乱する
〝 奴隷だったお前の両親は殺された 〟
数年前に一度告げたアバルトの言葉を信用出来なかったラウルは再び聞かされて考えていた
しかし 記憶とまではいかずとも 微かに覚えている実母の温もりを肌に覚え
その度に込み上げて来る嘆きによって彼は他人事に出来ないと思っていた
なにより〝奴隷〟
良く思っていないラウルはそこにずっと引っかかっている
「お客さん…… お客さん!!」
「え…… はい」
考え事をしているラウルに武器屋の店主は声をかける
「剣二本…… 欲しんだよね?」
「はい…… 手頃な値段で」
一旦その事を忘れ 壊れてしまった双剣の代わりを選んでいた
「二本一組の剣があればいいんですけど……」
「双剣かい? 子供なのにまた扱いにくい物を持とうとしてるねぇ」
「子供じゃないです!!」
「それなら良いのがあるよー!! これなんかどうだい?」
奥の棚から持ってきた長方形の木箱を見せる
「開けてみな!」
中には対称に収まっていた刀が二本 丁寧に置かれていた
「これは?」
「それはな! 日の国から流れてきた呪幕刀・毒地蔵と呼ばれる刀だ」
「クシティガルバ?」
「俺も日の国の言葉を少しは理解している………
もちろんクシティガルバの意味は知っている
〝大地の母胎〟 大地が全ての命を育む力を蔵するって意味だ
ただおかしいのは外国を知らない奴がなんでクシティガルバという言葉を知っていたのかだ」
「そんなに珍しいの?」
「流れて来る日の国刀は全てあちらの特有の名前が付けられているからな……
そのプライドが高い鎖国様がこんな名前付けるなんて不思議なもんだ」
頭を抱える店主にラウルはさらなる疑問に触れる
「なんで毒って言葉があるんですかね?」
「さぁな……… クシティガルバを地蔵と例えるのは聞いた事あるが毒を付け足すとは縁起でも無ぇな」
「…………」
「どうする坊主? 安く売ってやるが…… 物騒なモン手に入れてると呪われるってよく言うけどねぇ……」
「………買うよ」
「?! 本気か?」
目を見開いてラウルを見る店主
驚く店主にラウルは真っ直ぐな目で刀二本を持っていた
「曰く付きだっていうなら それでいい
俺のこれからの旅に綺麗な刀は可哀想でさ………」
「どういうことだ?」
「その旅の途中にこいつも 嫌になったら容赦無く俺を呪うだろうし 上等だ!!」
「…………代金はいらねぇよ」
「えっ?」
そう言って空の木箱を持って店の奥へ行こうとする店主をラウルは呼び止める
「最近はなぁ…… 昔と違って窃盗やテロ 主に犯罪を目的として武器を求める輩ばかりだったからなぁ」
ーー俺もその類なんだけどな
「今日は気分がいい 店で自慢出来るような二刀流の剣士になれよ! ガッハッハ!!」
「双剣使いと言って下さい!!」
締まらない感じに店を出る羽目になったラウルだったが 改めて腰に差す新刀〝毒地蔵〟を片方だけ持って空に翳す
「腕に自信がある鍛冶屋が作ったかは知らないけど 呪いの剣って響きがいいなぁ……」
微かな笑みを漏らし刀を腰に戻した すると港に向かおうとするラウルに声がかかる
「ラウルさん?」
振り向くとそこには見知らぬ女性が立っていた
「えぇっと…… 誰だっけ?」
その言葉に苦笑する女性の後ろから 今度は知った顔が見える
「ケルト?」
「まともに話すのは初めてだから無理もないな……」
ケラケラ笑うケルトの隣で恥ずかしがる女性は気を取り直して ラウルに自己紹介した
「私はモルガナと言います」
「あぁ思い出した 確かボルマーの姪っ子」
「ボルマー?」
その名前に困るモルガナの隣でケルトが必死に笑いを堪える
「サベルのことだよ」
「え? おじさん?! …………相変わらずセンス無いわ」
モルガナの一言にその場の三人は笑い合った
そして落ち着いたモルガナは ラウルの前に座り その綺麗な目をラウルに見せる
「ありがとうラウルさん 国を守ってくれて」
「え…… いやぁ…… どうも」
女性のお礼を前にして照れ隠すラウル
「これから食事でもどうかな?」
「食事ですか?」
港に向かう筈のラウルだったが
「まだ時間があるので大丈夫です」
言葉に甘えて素直に二人に同行した




