019-2「天使様、…………みたい」イラスト付き
「この道を歩くのも久しぶりだ」
「この道ね、とっても綺麗なの!」
綺麗な花も美しい空も何でもある。
「そうだな。以前通った時よりも何倍も美しい」
「でしょ!」
黎翔と霙に挟まれて2人と手をつなぐ私は、まるで親に連れられている子どもだ。このまま万歳をしてくれれば私は宙に浮くのではないだろうか。そうすれば空を飛ぶという夢も叶いそうな気がする。
「黎翔様、霙さん万歳してください!」
「は?」
「えっとね、ぶらーんってしてほしいの!」
「あぁ、そういう事か」
霙と黎翔は私とつないでいる方の手を軽く上げる。
「きゃあっ!!」
私の足は地面から離れ空を舞う。まるで空を飛んでいる様だ。
「お空、飛んでるみたい!」
先ほどと比べてそこまで差はないが、遠い空が少し近くなったような気がした。
「空を飛びたいのか?」
霙は不思議そうに私に尋ねる。人間、生きてるうちに一度は空を飛びたいと願うはずだ。
「いつか、飛んでみたいですっ!」
空を飛べるのならば、きっと、生きたいところへ行ける。空は、きっと、何処までも繋がっているから。
目的地も分からない空を、永遠と探しながら飛び回るのも良いかもしれない。そして、疲れたら此処へ帰ってくるのだ。
「空は飛べるぞ」
バサリと、視界に大きな白が広がる。
「……え?」
まるで、目の前を沢山の鳥が飛び交っているかのようだ。意思を持って動くそれは、私の目を奪うには十分すぎた。
付け根から先まで美しい白で統一されたそれは、まるで、童話で見る「翼」の様だった。先から付け根に視線をやれば、それは間違い無く、霙の背中から出ている。
何故、人が「それ」を持っているのか。不思議で堪らない。
「ほら」
霙は私と繋いでいる方の手を離し、その翼を大きく動かす。まるで鳥が飛ぶ準備をしているかのようだった。意思を持って動いているように見えるそれが、不思議で堪らない。
そして、バサリと一際大きい音を立てたかと思えば、
そのまま宙を浮いた。
「………………え」
あまりにも信じられない光景に、息をするのも忘れてしまう。
「え、うい……、え?」
私の認識では人は浮かない。空は飛べない。
何故彼は当然の顔をして、空と一体化しているのか。
そこで改めて思い返す。あぁ、ここは異世界だった。
私にも他の皆にも力が宿るという魔法のような世界だ。ならば人が浮かんでも不思議ではないのかもしれない。
それにしても、なんて美しい光景だろうか。白髪金瞳、白い翼。まるで天使のような姿に私は息を飲んだ。
「天使様、…………みたい」
溢れた声はあまりにもか細く、霙に届いたか分からない。
「まあ、間違いではないな。我々の種族は天使族だ。みな、息をするように空を飛ぶ」
まるで違和感のないその言葉に私は納得した。
「天使族……」
「言っていなかったか?」
国について大まかな説明を受けたが、そこに住む人々についての説明を受けてはいない。霙と黎翔を交互に見比べ、天使とは、こう言う人たちの事を言うのか、と、頭の片隅で記憶する。
「そうか。ならば帰ってから説明をするとしよう」
地面に降り立った霙はまさに地に降り立った天使のようだった。
「ほら」
「?」
霙は私に手を伸ばした。
「空、飛びたいのだろう」
「!」
私の小さな手を、霙の大きな手に重ねると、そのまま優しくつつみ込まれる。そして、霙は私を抱き上げたまま地を蹴った。
「っ!」
地から足が離れる。
白髪が視界に靡き、私の黒と混ざる。
同じ速度で飛ぶ鳥に心を奪われる。
勿忘草色の空に私が近づき、すっと遠ざかる。
風が速い速度で私に吹き付け、心臓が音を立てる。
少し肌が震える度に、霙の服を強く掴む。
今まで見ていた景色は、遠い様で、ものすごく遠かった。
「空、飛んでるの…………?」
「ああ」
まるで、夢でも見ているかの様だった。
「空、近いね」
「そうだな」
肌が冷たい。
「何処まで行けるの?」
「何処までも」
頭が熱い。
「何処までだって、………………行けちゃうね」
「そうだな」
空の向こうは果てなく、青以外には、何も。
「……何も」
見えなかった。
一生に一度の今までに見た事はない素晴らしい景色だった。あの景色は一生忘れない。
※この画像はAI生成画像です




