014夢を見た
私はその日、忘れていた夢を見た。思い出したくて 思い出したくなかった 長い夢。長くて長くて終わりのなくて、けれど、すぐに終わってしまう。幸せで悲しくて嬉しくて、尊くて寂しい夢だった。
私の近くにいた黒と白い犬はいつも大きな声で吠えていた。けれど、気づけば眠っていた。
眠っている時に香るご飯の良い匂いは、気が付けば洗剤の匂いに変わっていた。
父親の大きな声も母親の小さな声も、いつしか大きないびきと音のない寝息に変わった。
可愛らしい笑顔が映った写真はいつしか、食卓の真ん中に置かれるようになった。
古い絵の具セットは、新しく買い換えられることがなく、押し入れに眠った。
小さい頃から不必要に何度も連れていかれた医者には、恐怖心が芽生えた。
古くて、小さい家で眠ることに慣れ、外で遊ぶことを忘れた。
学校から配られる手紙も、外から届く宅配物も、開かれることなく玄関に投げ入れられる。
重くて動かすのが億劫になってしまった体で窓の外を眺めると、古くて、街に慣れ親しんだ花屋さんが綺麗な花束を作って売っていた。
苦手だったはずの煙には慣れ、一層嫌いになった。
大きくなるにつれ、名前を呼ばれることも減り、そして名前で呼ばれることが増えた。
夕方が嫌いになった。朝が嫌いになった。けれど、どうしても朝を憎めなかった。
いつしか黒い雲に覆われた空と白い雲に覆われた空しか見えなくなった。
私を呼ぶ聞き慣れない優しい声は、近寄ってくるけれど、それが誰なのか、見当もつかない。
世界の美しさは、きっと、ここには無かった。




