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黒いモノクロな世界と白いカラフルな世界〜世界の色を探して〜  作者: ちぇしゃ


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010-2「きれい」イラスト付き


 2人に手を引かれながら、開かれた大きな大きな扉を潜り抜ける。1歩外に踏み出した時、私は広い大地と大きな空に圧倒された。




 

「これが……」




 

 大きな広い空を眺めていると、まるで自分が本当に小さく思えてくる。久しぶりの空はとても明るく、とても輝かしかった。



 

 真っ青に輝く空に、思わず目から雫が零れた。



 

「どうかしたのか?」

「どこか痛い?」


 思わず下に俯くと、青い空ではなく、今度は緑色の大地が広がった。こんなに青々と茂る緑は珍しいものではないだろうか。水をあげたのか、雫がこぼれ落ちる緑は生気に満ち溢れている。


 なんて美しいのだろう。








「きれい」











 雫が零れ落ちようと、雲一つないそれは変わる事なく真っ青だった。

 世界はこんなにも美しくて、こんなにも色に溢れているのか。


 今まで見てきた世界とは程遠い鮮やかな色彩に生命が彩られている。



「こんなの、知らない」


 

 知りたくて知りたくて、どうしても憧れて、そして知りたくなかった。



 空を飛ぶ鳥はきっと、ずっと前からこの美しさを知っていたのだろう。













 

「もう大丈夫です」


 私が涙を流してしまっていた事から2人に心配をかけてしまった。正直、私自身も驚いた。人は感動で涙を流せるものなのか。

 

 この世界はとても美しく、そして明るいものだと知った。

きっと、私は初めて色の美しさを知った。


 この美しさを知れば私はもうきっと逃げられない。逃げたくても、きっと逃げるための足がすくんでしまうことだろう。

 それほどまでにこの世界の美しさは暴力的で、破壊的で。

 大地の匂いすらも、その美しさは私に伝えてくる。吹き抜ける風も、音を鳴らす大地も、揺れる木々も、踏みしめられてなお力強く芽吹く葉も、きっと全ては自身の美しさを知っている。だからこそこれほどまでに輝いている。



 思考を隅におかなければきっと永遠と思い出してしまう。

 だが次々と入ってくる情報は私の脳に完結をさせない。


 ただただ無言で歩く。


 コツコツという靴の音も今はとても心地よく感じる。上を向けばまた雫が頬を濡らす。

 


 いつまでもここにいたい。そう錯覚をしてしまうほどに。 


 私の心はひどく晴れやかだ。きっとこれが最後の空でも私はもう後悔しないだろう。


 黄色の落ち葉が私の足元に1つ落ちた。





 



 







 


 



 




 世界の美しさを楽しみ、それにもう少し慣れてきた頃。私は2人に疑問を投げかけた。

  

「所で、どこで会うのですか」

「城だ」


 確か城とは、お姫様や王子様が住んでいるだったと記憶している。そんなところに行けるなんて。


「どうやって行くんですか?」


 ここは異世界だから馬車というものもあるのかもしれない。


「あっち」


 白鴎が指差す方に目を向けると、大きな大きな建物が二つあった。同じような造りの建物だ。まず一つは私たちが先程までいた建物だ。私はこんなにも大きな建物で暮らしていたのかと、分かっていた事だけれど、改めて驚く。そして、その建物の隣には私の家よりもさらに大きな建物が立ち構えていた。


「大きな建物ですね」

「うん。城だからあれくらい大きくないとね」


 これほどまでに近くにそびえ立っているなど想像すらしていなかった。


「ちっかいね」


 乗り物に乗っていかないと辿り着かないような遠い所にあるから、こんなに朝早く出かけたのかと思っていたけれど、違う様だ。隣にあるのならば徒歩で行っても時間はかからない。こんなに近いのならば、出るのは昼位でも良かったのではないかと思うが、こういうのは早めに済ませておいた方が良い。


 2人に手を引かれながら城の入り口まで向かっていく。近いけれど、辿り着くまでに少しの時間はかかる。いくら建物が目の前にあろうと、やはり遠く感じる。これならば歩いていくよりは馬車のような乗り物で行った方が早いのではないかと思う。けれど、私は歩くのはすごく楽しかった。外の景色なんて、こんなにゆっくりと見る機会はないし、天気も良いから気持ちがいい。


 時折鳥が鳴いているような声もする。命に満ち溢れているこの世界は、空気がとても軽く感じる。たとえこの世界ならば、空が曇っていたとしても、きっと輝かしいのだろう。


 あちこちに興味を示す私に、2人は何も言わずそっと手を繋いでいてくれていた。


 あぁ、そういう事だったんだ。と、何かがストンと胸に落ちた。


 だから2人はこんなに朝早くから歩いていこうとしたのか。すべて私の為だったんだ。

 鳥も花も総てが命に溢れている。一生懸命生きているそれらは、輝かしく、それだけで尊いものだ。表情が無いはずのそれらが満面の笑みを浮かべているような気がする。周りの者に愛されていると、このように輝くものなのか。


「とても綺麗」


 まるで私の瞳が入れ替わったかのようだ。

 再び視界が潤むが、瞬きをしてこぼれ落ちる事がないように耐える。両手を繋がれている今、腕で拭う事は出来ない。


 ゆっくりと歩いている間にも、少しずつ城が近くなってくる。私のこのペースだと一体どれだけの時間がかかるのだろうかと心配していたが、思ったよりも早く着きそうだ。それでも普段運動しない私が長時間歩いた為、足が疲れてしまった。2人にはそれも想定内だったようで、私が疲れかけていたらさっと抱き上げてくれた。そして疲れが取れるとまた再び歩かせてくれる。それを繰り返すうちにとうとう城の前まで来てしまった。


「大きすぎる」


 思わずそんな感想が漏れてしまうほどだった。真っ白なお城はそれだけで威圧感を与える。神聖な色のはずではあるけれど、大きすぎて恐怖心すら覚える。ベール越しに見る大きな大きな門は、まるで私たちの侵入を拒んでるのようだ。


「ご無沙汰しております」


 大きな門の横に立ってる人が、霙と白鴎を見て、そう挨拶した。


「あぁ」

「うん、久しぶり」


 親しげに挨拶している事から知り合いだったのだろう。


「お初にお目にかかります、聖女様」

「えっ、あ。こ、こんにちは」


急に挨拶をされて驚いて変な挨拶になってしまった。


「お話は伺っております。……それよりも、歩いてこられたのですか?馬車を用意する準備は出来ておりましたのに」

「いつも近いからいらんと言っているだろう」

「しかし、今日は聖女様おられるのですよ」

「だからこそだ」

「意味が分かりません……」


予想よりも親しげに話している気がする。主従関係かなと思っていたけれど、どうやらそれよりももっと親しい関係のようだ,そうでなければこんな軽口を叩いたりしないだろう。けれども、そんな軽いやり取りのおかげで、私の緊張していた心が少しだけ和らいだように感じた。


「それよりも入って良いか」

「はい、門を開けますのでお待ちください」


 目の前の彼1人では到底開ける事が出来なさそうな門をどうやって開けるのだろうかと観察していた。大きな大きな門は、門番をしている彼が左手ひょいと上にあげた事で、大きな音を立てて開いた。


「?!」


思わず驚き、霙と白鴎の手をさらに強く握る。



「ま、まほう?!」


どうやら門番は魔法使いだったようだ。驚き声あげると2人の笑い声が聞こえた。


「夢を壊してすまんが、魔法じゃない」

「え?」

「合図を見て中にいた人が開けたんだよ」


 そう言われ、よく見ると、門の縁に人の手が見える。どうやら彼らが開けているようだった。


「なぁんだ」


 勝手に勘違いしたにも関わらず、理不尽に文句を言ってしまう。



  大きい門の中は、私が暮らしていた建物とあまり大差はなかった。白くて広い。ただ、城には少しだけ金色が使われている。それだけで少し豪華に見えるのだから、色って不思議だ。すれ違う人はほとんどおらず、私達は門の中に入ってから霙と白鴎が進むままに歩き続けた。私は道がよく分かっていないが、霙と白鴎は分かっている様子だった。恐らく以前も来た事があるのだろう。私の手を引きながらも迷う様子がなく、前だけを見て歩き続けていた。歩いている時に歩調を緩めてくれるのだから、2人の優しさがにじみ出ている。時折現れる不思議な彫刻や絵画を見ながら、廊下を曲がったり上ったりする。


 まるで迷路だ。


 時折すれ違う人もいない事はないが、気さくというよりは物静かだ。私達が廊下を通る時には何故か端によけて頭を下げている。まるでお姫様にでもなったかの様だ。


 いつもより上品で優雅なドレスは、時折、私が走り出そうとするのを邪魔する。

 



挿絵(By みてみん)

※この画像はAI生成画像です


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