表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/55

光に満ちた国で

朝にも1話更新済みです。

 少し寒いくらいの潮風が、頬を撫でる。

 船と並走するように泳ぐ魚は、色鮮やかで美しい。

 世界はやっぱり綺麗だなぁ。



「き、気持ち悪……ぅおえ。ぁ」


「はーい無理しないで横になりましょうねー」



 フジくんは、船酔いが酷いタイプみたいだなぁ。

 苦笑しながら歩乃華は手すりにもたれる。


 もう随分遠くなってしまったけど、まだ『タリス』が見えるから。

 歩乃華はまた別れを思い出して、寂しくなる。


 封印が終わったあと、私達は別れを惜しむまもなく船に乗り込んだ。

 リーミネさんや大司教達には会ってない。


 戦後処理で忙しそうだったし、次の国に出発する船がもう出るらしかったから。


 あんまりお金は使いたくないから、安いこの船じゃないといけなかったのだ。


 だから、仕方がないなんて言い訳。


 本当は、さようならが言いたくなかった。


「まぁ、まだ永遠の別れではないですし」


 本当に帰る時、その時はちゃんと会いに行こう。



「歩乃華ぁ!! フジがまじで吐きそうだから回復魔法!!!」


「……大声、やめ……ぉえ」


 苦笑がこぼれる。

 今行きます、そう言って回復魔法をかけに行った。


 そうこうしてる間に、船は次の国へと入っていく。




「わあ! めっちゃ綺麗だね!」


「すごい。ここが……神聖国『アルカリア』」



 国全体が、真っ白だった。

 雰囲気的には、ギリシャとかスペインに似ているかな。

 日差しも強くて眩しいかも。


 でも1番思うは……綺麗な国。


「教会の、本丸だからな。1番幸せな国とも言われているよ」


 顔色は悪いけど、さっきよりもイキイキとしているフジが教えてくれる。


 確かに、道行く人々が幸せそうに笑ってる。


 ……平和そう、だね。


 なのに、誰もが同じ笑い方をしている気がした。



「ど、どどどど、どいてくださぁいーー!!」



 大きな声に驚いて、反射的にその場をどく。

 振り返った先には沢山の荷物を持った、小さな女の子が走っていた。

 う、上の荷物がグラグラしてて危ない!


 横切って走っていく姿を、心配で眺めてしまう。



「おっと」

「きゃぁああ!!」


「大変っ!」


 歩いていた男の人と少女がぶつかる。

 バランスが崩れて、荷物が落ちていく……。


「よいしょ!」「っとと」「ふぅ」


 前にギリギリ、カンナとフジが荷物を拾った。

 歩乃華は安心で胸を撫で下ろす。


 ……あれ? もう一人男性が荷物を拾ってる。すごく身長が高くて、心なしかフジくんに似ているような。



「わぁあ! ありがとうございます! あ、ぶつかってごめんなさい……。えっと、すみません急いでて……ごめんなさいぃ!!」



 少女はあわあわしながら、何度も謝る。

 そして急いで走り去ってしまった。


 それほどまでに急ぐって、何があったんだろう。



「すごく慌てていたね。怪我はなくて良かったよ」



 男性はそう笑って、歩乃華の方へ向き合った。


 すごく綺麗な紫色の髪。グレーの瞳からは知的な雰囲気を感じた。

 あれ、やっぱりこの人、すごくフジくんに似てる。



「はじめまして、送り人様。本当は驚かせたかったのに、上手くいかなかったな」



「ボ、ボタン兄さん?」


 フジが戸惑うように声をあげる。

 たしかに雰囲気は似ていたけど、お兄様だったんだ……!


 目を見開き驚く歩乃華達をみて、ボタンは茶目っ気たっぷりに微笑んだ。



「僕はボタン・フルシベル。フジのお兄ちゃんだよ」



「は、初めまして。私は小暮歩乃華です。えっとボタンさんはなぜここに?」


 付き人が増えるって事なのかな?

 歩乃華が首を傾げつつ問いかけると、ボタンは指を立てて口元にやった。


「内緒だよ」


 ミステリアスな雰囲気に歩乃華はドキッとする。

 そんな歩乃華に気づいたのか、フジは面白くなさそうに顔を顰めた。


「なんてね。僕は単なる観光だよ」


「うーん、ボタン兄それだけなの?」


 カンナが訝しげに問いかける。


「これも理由の一つってことだよ」


 そう言いながらフジの頭に肘を置き、体重を思いっきりかけるボタン。


「ちょっ、ボタン兄さん!」


 仲が良さそうで微笑ましい。歩乃華とカンナは顔を見合わせて笑った。



「三人はこの後どうするの? もう守り人の元へ行くの?」


「一旦は宿屋に行く予定ですね。ボタンさんはどうするんですか?」


「観光かな。今日は旧王宮に行く予定だよ」


 そう言ってボタンさんが指を指した方向を見ると、青い屋根のお城が建っていた。

 西洋的ですごく美しい。私も、行ってみたいな。


「歩乃華、そろそろ宿屋に行った方がいい。日が暮れると混むし」


 眉を寄せているフジに、肩をつかまれる。

 歩乃華は慌てて謝り、ボタンさんに別れの言葉を言った。


 ……視界の端で、腹を抱えて笑うカンナがいる。



「あはは、じゃあね、歩乃華ちゃん。……男の嫉妬は醜いよ、フジ?」


「……嫉妬?」


 ボタンが最期何をフジに言ったのか、歩乃華には聞き取れなかった。

 しかし、フジが悩んでいるのを見る限り、大事なことを言ったんだと思う。


「そういえば、カンナちゃんやフジくんは最初敬語だったのに、ボタンさんは違うんですね」


 ボタンを見送りつつ、ふとした疑問を口に出す。



「ボタン兄は付き人ではないもん。もちろんフルシベル家だから、歩乃華に従うけどね」


「なるほど、そうなんですね」


 フルシベル家の人は全員付き人だと思っていたけれど、そうじゃないんだね。


 ……なら、2人が付き人になってくれたのは、すごく幸運だったんだな。



「大変よ! 遠征軍がそろそろ帰ってくるみたい!!」


 港にいたおば様が叫ぶ。

 すると、周りにいた人々が慌てた様子でどこかへ向かっていった。


 店じまいすらせずに、全員が走っていく。


「まずいかも! 歩乃華、フジ! 宿屋まで走るよ!!」


 カンナは運が悪い、とでもいいたげだった。

 そして歩乃華の手を握って、走り出す。


 な、なんで?


「はぁ、はぁ。遠征軍が帰ってくるのに何故走るんですか……?」


 走りながら問いかける。

 返してくれたのはフジだった。



「遠征軍が来たら、外に出ている人は全員称えに行く必要があるんだ! 今からだったら夜まで外にいなきゃいけなくなる!」



「称え……え? 夜までとかそんなの長すぎませんか? あと、法律でもないならそんな……」


 やりすぎたと言いたげな歩乃華にカンナが叫ぶ。


「この国じゃ法律なの!!」



 何それ!


 歩乃華は言葉を失う。


「外にいるのに行かなかったら一発アウト! 牢屋行きになっちゃうよ!」


 ……え?


 カンナの言葉は想像の範疇を超えていた。


 そんなのって、狂ってるよ……!!


 体に鞭を振りながら走って、三人はやっと見つけた宿屋に転がり込んだ。

この話より第2章が始まります。

それに伴って毎日1話、21時30分更新とさせていただきます。


面白かったり、続きが気になった方は評価やブックマークの方をよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ