ネオ・ニールは守れなくて
朝にも1話更新済みです。
歩乃華とチューネの背中を見送ったあと、ネオは大統領を冷めた目で睨んでいた。
「大統領。貴方は、送り人をどう利用するつもりですか」
ネオにとって、送り人は子供だった。
未来ある子供で、守るべき存在。
正直魔力欠乏体の治療だって、どんな報酬でもやる予定だった。
彼女が送り人とはいえ、色んな決断させるなんて酷。
子供は、まだ知らなくていい。
……笑っているだけで、いい。
僕は大人です。子供を守る責任がある。だから貴方が都合よく利用するなら許せない。
大統領はネオの態度を見て、少し笑う。
ネオは逆撫でされた気持ちになりつつ、睨み続けた。
「利用じゃないよ。彼女が選んだ結果が今だ」
「選んだから、戦場にも立たせるんですか」
あの子は攻撃魔法が使えない。
力もないのは言うまでもないだろう。
もちろん頭がいいのもわかってる。
彼女は送歌ノ祝福を持っているから、精霊を生み出せる。
都合のいいように魔法だって使えるかもしれない。
でも──子供だ。
それだけで、戦場に立たせない立派な理由になる。
血なまぐさい戦場なんて、見せちゃいけない。
「そんなのは……許されちゃいけない。間違っていると思いますね」
「私だって、立たせたくないよ。でもね、送り人は希望なんだよ。いるだけで、士気が上がる」
「……もしかして。あの噂を、送り人の回復能力を広めたのは……あなたですか?」
ネオの言葉に大統領は笑うだけだった。
話し合いを続けたところで、大統領はあくまでも国を守る立場だった。
それが正しいことくらいわかってる。
それでも、ネオは許せなかった。
でも自分には何も出来ない。
送り人は振り切った覚悟を持っている。
少し会話しただけで、その歪さは容易にわかった。
『魔力結晶さえあれば、助けられる。魔物を倒すことで……得られるなら』
送り人が呟いた時、その瞳は歪んでいた。
それは酷く危険な精神状態を指す。
どれ程までに大事な存在が魔力欠乏体になったのか知らない。
だけど、今のままでは手段を選ばなそうな危険性を感じた。
戦場に立つな、なんて言ったところで聞き受けるわけがない。
分かってはいる。
送り人は、歩乃華は戦場に立つ。
この国としてもそれが平和に繋がるんだ。
だからこれは仕方がないことで、ネオの考えは間違いなんだろう。
でも許せなかった。
許したくなかった。
これが正しかったら、あの時の自分を──認めてしまうことになる。
『君は、魔法殺戮兵器。いいかい、敵は全員の殺すんだ。わかったね?』
嫌な過去を思い出してしまう。
「僕の考えは変わりません。でも、口出しはしないです。では、僕は騎士団長と連携を確認してきます。さようなら」
足速にネオはこの場を去った。
国なんてクソ喰らえ。
僕は、自由のために冒険者になったんだ。
『なぜ、逃がした? 子供なんて関係ない。相手は敵だ。全員殺せ』
うるさい。
ネオは城壁に向かう。
そこに、騎士団長がいると聞いたから。
『使えない兵器に価値はない。わかっているだろう?』
黙れ。
ネオは足音を大きく鳴らしながら、城壁の中へ入る。
そして部下と話している騎士団長を見つけた。
「騎士団長。今いいですか」
相手を慮る余裕はない。
早く脳内を別のことで埋めてしまいたかった。
「あー、ネオか。わり、ちょっと待っててくれ。ギルド長も後で来るし、その時に色々教えて欲しい」
「ギ、ギルド長も来るのですね。いいですよ、待ちます」
怒られたばかりだから、気まずい。
でも仕方がない。
ネオは魔物の侵攻方向を眺める。
木々が生えているからこそ、火の魔法を使うと二次災害が酷くなる。
だから今回は使わない方がいいですね。
火の魔法を跡形もなく消せる天才なんて、片手で数えられます。
「お、ギルド長来たな! よし、ネオ教えてくれ。何が発展したんだ?」
「来たばかりなんだが……チッ、しゃーねぇな」
「まず、装備が明日手に入るかもです。あとは……」
情報を共有する。
そして"アビスアイ"の存在も口にした。
しかし、2人も知らないようだ。
でも送り人は割と確証を持っていそうだった。だから、何かがあったんだろう。
「ま、装備がどうにかなるなら願ったり叶ったりだ。今みたいな装備は、逆にない方がいいからな」
「それはお前だけだろ。あと、アビスアイはギルドも探ってみる。期待はするなよ」
「わかりました。ちなみに僕は今余裕ありますけど、何かあるでしょうか?」
「お! じゃあ……」
これでいい。
休むよりも、暇な時間を無くした方が僕にいい。
騎士団長について行きながら、きっと頑張っているだろう2人を思う。
チューネがいるから、送り人も情報を無事に見つけ出せるよ。
──チューネは僕を見つけたんですから。
探し物が得意な、大事な弟子です。
『私さんを助けてくれた貴方! さ、行くわよ! こんな薄汚い檻なんて窮屈だもの!』
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