歓迎されない中心で
本日、朝とお昼にも投稿しております!
「おはようございます、フジくん。朝早いですね」
寝起きのまま、フジに声をかけた。フジはもうとっくに起きて、身支度が終わっていた。
早く動くって言ってたのは私だったのに、と反省しつつ歩乃華はベットから降りた。
「おはよう歩乃華。歩乃華だって朝早いよ、まだ日が出たばかりだ」
確かに部屋はまだちょっと暗いかも。フジくんは一体何時に起きたんだ……。
そういえばフジくんに魔法をかけてもらっているとはいえ、同じの連続は若干辛いなぁ。
しかもお風呂入れてないし……はぁ。
「……リフレッシュ」
フジがボソリと何かを言った。
その瞬間、お風呂上がりのような爽快感を歩乃華は得る。何かわからないけどスッキリした!
思わずフジの方を向いて、嬉しすぎて笑ってしまった。
「魔法だよ。忙しくてなかなかかけてあげられなくてごめん」
「い、いえ、ありがとうございます!」
魔法って、便利だなぁ。
お行儀は悪いけれど、気になってしまうから匂いを嗅いでみる。私、臭くない!
嬉しいな、その感情のまま意気揚々と支度をする。
フジがいるのを忘れて。
「諸行無常諸行無常……カンナ、どうやって起こそうかな」
フジは紳士なので壁とにらめっこしていた。
何も考えない……のは無理だったから、カンナの起こし方を考えて。
「おーきーて、カンナちゃーん」
三秒後にフジくんによる水が落ちてくるよー、なんて、無駄だった。
「つっっっめたっ!!! ぁ、おはようごじゃります」
目覚めてそうそう察したカンナは颯爽と目をつぶった。なぜならフジによる暴風で全身を乾かさせられるのだから。
濡らしてしまったベットをフジが綺麗に、カンナは颯爽と準備を。
その間、歩乃華はすることがないので一人反省会をしていた。
昨日は時間が無くてできていなかったのだ。もちろん今もするタイミングとしては間違っている。
だけれどもそろそろしないと、頭が混乱してしまうのだ。
歩乃華は今までの言動を思い出して、一つ一つ反省と改善を重ねていく。
言葉の一つで人に嫌われることは容易だ。
所作の一つで人に嫌な思いをさせてしまう。
嫌われないために、自分を殺そう。
……それが一番、安全だから。
「準備出来たよ、観光じゃないなら早めに言ってよー」
「ふふっ、ごめんなさい。でも早く出て中心を目指しましょう?」
歩乃華は笑ってカンナ、フジと共に部屋を出る。
そして支払いを済ませてから宿を出て、急ぎめに馬車に乗り込んだ。
ガトナ領主私兵みたいな人が、昨日はいなかったのに今はいる。
村の警備を装っているのは、明らかだった。
「……花鳥風月」
フジによる幻惑魔法で馬車を見ることはできないのだから。
「今頃私達がいないことには気づいたのでしょうか」
「流石にじゃないかな? でも、ガトナ領抜けるまでは楽観視もできないよね」
何となくの事情はフジによる説明で理解したカンナ。カンナはここになんの感情も持っていなかったが、歩乃華が出たがっているから着いてきてくれたのだ。
「ただもうガトナ領は抜けるし、そろそろ城壁も見えて来ると思う」
フジの言う通り、遠くには大きな城壁が見えた。
あそこが共和国タリスの中心。
私が行かなければならなかった場所。
自ずと歩乃華は固唾を飲む。
歴代送り人の遺したものがある。そして、もしかしたら帰る方法を見つけることが出来るかもしれない。
淡い期待だけど、なんて。
「入国目的はなんですかね? 一応体裁的にあるんですよー」
めんどくさそうに仕事する若い騎士。
簡単な質問に答えるだけで終わる簡単なものだ。
ただ、フジがフルシベル家の名前を出した瞬間空気は変わったが。
「失礼ながら、そちらの方はあのー、送り人様とか言わないですよね? ね?」
……歓迎されていないのかな。違いますって答えたくなってしまう。
でも先にフジが、えぇそうです、と反応してしまった。
若い騎士は膝から崩れ落ちる。衝撃的だったようだ。
「……子供じゃん」
それだけで、価値がないみたいに言い捨てる。一瞬にしてその場の空気は、冷えた。
その言葉だけで、嫌だなって思った。
子供であることを理由に落胆。
フジくんに対してもカンナちゃんに対しても、あの人は諦めた顔をしていた。
子供である。それだけでこの反応はいささか酷いんじゃないか。
でも大事にはしたくないし、早く終わらないかな。
「このことは上司に言います。わんちゃん呼び出しがあるかもしれませんけど、まぁないと思うのでご自由に」
「あぁ」
フジの言葉もだいぶ冷たくなっている。
嫌なことも伝わってしまうからか。
ずっと目指していた中心なのに、気分は最悪だった。
それでも待ちに待った中心はすごい、としか言いようがなかった。
大通りの左右には様々なお店があって、オシャレな服屋にいい匂いのする出店。脇道を見ると落ち着いた雰囲気の本屋もあった。
自分が明らかな田舎者にしか見えない、それほどには場違いに感じてしまう。
行き交う馬車とふわふわ獣耳の獣人。音楽を奏でる吟遊詩人。真面目に働きそうな騎士もいるし、強そうな冒険者もいた。
歩乃華は目を輝かせて、興味津々に世界を見渡した。
そんな歩乃華を見てカンナも楽しげに笑い、フジは優しく眺めていた。
「最初は教会に行こう。歩乃華の持っている祝福の詳細も、魔法の属性もそこで知れるんだ!」
笑顔でいっぱいのカンナについて行く。初代送り人を神として奉っている教会らしい。
魔法の属性……私は何が使えるんだろう。
魔法の種類は大きくわけて三つあるらしい。
自然魔法、神霊魔法、邪霊魔法だ。それぞれに4つの属性が含まれている。全部で12属性あるみたい。
これがフジから教えてもらった魔法の属性のこと。
……そして、フジは全属性を操ることができる。
ただ魔力量が少ないせいであまり生かせてないとも、辛そうに笑ってた。
私は一体何属性なのか。
緊張しつつも教会に足を踏み入れた。
本日は21時にも投稿予定です。
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