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俺たちの高校生活支援部!!  作者: ハチノグノ
正真バトル編+番外編
39/40

番外編 あえて名前をつけるなら

「芽依さん、今日は休みなんですか?」


「あぁ、どうやら風邪をひいたらしい。今朝のHRにいないから連絡してみたら、高熱で寝込んでるって」


「信じられませんね、あの芽依さんが風邪なんて」


「全くだ。あの手のバカでも病気には勝てないらしい」


珍しく俺と鹿苑だけの屋上。名家のお嬢様である鹿苑は、習い事やら家の用事やらでたまに部活を休むが、普段休むことのない柏木が放課後にいないのは少し違和感だ。


「まぁでも、この屋上で活動していたら無理もないのかもしれません。最近冷え込んできましたし」


「確かに。何か対策を考えないとな」


季節は流れ、いつの間にか二学期も後半。11月に入った。夏は暑さに悶えていたが、今度は寒さに凍えることになる。近頃は吹き抜ける風も一層冷たくなってきており、それに無防備なこの屋上はあまり健康によろしくない。柏木が体調を崩すのも納得だ。


「そろそろ新しい活動場所を見繕うべきですかね」


「そうだなぁ。今度少し松浦先生に相談してみるとしよう」


「分かりました。よろしくお願いしますね」


そうして俺たちの会話は終わり、辺りは静かになった。存在自体がうるさい柏木がいない屋上は、また違った顔を見せる。本来、屋上は人気のない場所であるため、その一面が見えてきたのだ。


別にこの静寂が気まずいわけではない。いつもと違うこの屋上の雰囲気が、少し俺に違和感を感じさせた。


「新田さん」


「なんだ?」


どこか落ち着かない俺に鹿苑は声をかけてきた。


「新田さんって私のことどう思ってるんです?」


「ガハッ!」


俺は予想だにしない質問に驚いて咽せてしまった。


「な、なんだよいきなり」


「いや深い意味はないんですけど、単純に聞きたくなって」


「深い意味がないとこんな質問しなくないか」


「いえ、本当にありませんよ。質問が悪かったですかね。では、新田さんにとって私ってなんなんですか?」


角度を変えて質問をしてくる鹿苑。


いやそれ、何も変わってなくないか。


「まあ、俺たちの関係性に名前をつけるなら、鹿苑は部活仲間だな。それと、友達だろ」


俺は思ったことをありのまま鹿苑に告げる。


「ふむふむ。なるほど…」


鹿苑は顎に手を当てて何かを考えている様子だ。


「なるほどじゃなくてさ、何か俺の答えに対する感想はないのかよ。俺が反応に困るんだけど」


「いやー、なんか私からしたら新田さんって友達ではないんですよね。部活仲間なのは大前提として」


俺たちが友達ではなかったら一体なんだというのだろう。


「じゃ、じゃあ、か、家族とか?」


俺はふと閃いた関係性を思い切って鹿苑に伝えてみた。すると、それを聞いた鹿苑が珍しく吹き出しだ。


「ははっ!あ、新田さん、さすがにそれは飛躍しすぎなのでは?」


笑いながらそう言い返す鹿苑。


「お、おい!そんな笑われたらめっちゃ恥ずかしいだろが。そういうお前は、俺たちが友達じゃないとしたらなんだって言うんだよ」


「そうですね。それは…」


鹿苑は俯き、少し思考した後、ゆっくりと口を開いた。


「私たちは運命共同体です」


「運命共同体?」


俺は鹿苑から出てきた言葉にピンとこず、疑問の声を口に出す。


「はい、運命共同体です」


運命共同体。運命をともにする人間たちのこというが…。


「その心は?」


俺は鹿苑にこの言葉を選んだ理由を尋ねる。


「私は新田さんがしたいと思うことについて来ましたし、私がやりたいことには新田さんがついて来てくれます。だから、いついかなる時も私たちの行く末は一緒だと思ったから、この言葉がピンときました」


「でもいつかは別れる」


俺は鹿苑の考えに現実的な言葉を浴びせた。


「そうですね。いつかは別の道を行くでしょう。それが早ければ、この高校を卒業した時です」


鹿苑は進路の違いを言っているのだろう。例えば俺と鹿苑が別々の大学に入学すれば、こうして毎日集まることもなくなる。鹿苑の言う通りで、俺はこのことを別れると表現した。


「なら、運命共同体じゃないな」


「いいえ。道は別れても、きっと私たちの行き着く先は一緒ですよ」


「そうはならないだろ?」


「いえ、なります」


「なぜだ」


俺と鹿苑の問答が熱を帯びてくる。こういった言葉遊びがお互い好きなのだろう。


「だって、私が、私たちが躓いた時には、新田さんは手を差し伸べてくれるでしょ?それできっと目的地まで連れて行ってくれる。今までだってあなたはそうしてきたから。各々の目的地まで、皆んなが助け合いながら歩いていく。だから私たちは運命共同体です」


いつの間にかいつもの鹿苑の微笑みは消えていて、童顔に似合わない真剣な面持ちで鹿苑は言った。私たちというのは柏木のことを含めてか。


「俺を過大評価しすぎだな」


「私、今楽しいんですよ?この学校生活が。そうしてくれたのは新田さん。そして芽依さんもです。だから現状、過大評価なんかじゃありません」


「ふっ、そうかよ」


「ふふっ、照れちゃって」


鹿苑の表情がいつもの微笑みへと戻る。


「べ、別に照れてねーし」


「赤くなってますよ?顔?」


「うっせー。照れてねー。これは体内の温度が急に上がってだな、それが顔に表れてるだけだ」


「それは照れてると言うんですよ?」


鹿苑は俺の顔を色んな角度から覗き込む、意地悪く笑う。


「新田さんのこういうところ、ちょっと可愛いんですよね。芽依さんもこうやって遊べばいいのに」


「俺を勝手にお前らのオモチャにしようとするな」


こいつらに揶揄われるのなんてごめんだ。新田さんのプライドが、この二人にだけは下に見られることを許さないのだ。


「あ、てかさ」


「なんです?」


鹿苑に揶揄われて思考が分散していたが、少し冷静になった俺は言おうとしていたことを思い出した。


「さっきの運命共同体ってやつ、鹿苑の話聞いて俺も分かったよ」


「?」


俺の言葉の真意が伝わってないのか、間抜けた顔をする鹿苑。そんな鹿苑に俺は加えて言葉を紡いだ。


「だって鹿苑、俺が躓いたときには絶対助けてくれるもんな」


「なっ!」


俺の言葉を聞いた鹿苑は、柄にもなく頬を赤く染めていた。


「か、過大評価ですよ…」


頬を赤くした目の前の女子は先ほどまで合わせていた目線を外し、小さな声で呟く。


「ははっ、何照れてんだよ」


「て、照れてないです!」


「ばーか。赤くなってんぞ、顔」


「こ、これは!急に体の温度が上がって、顔に表れただけですから…」


「それを照れてるって言うらしいぞ」


「新田さんの馬鹿…」


「なにそれ、柏木の真似か?」


「う、うるさーい!!」


鹿苑はそれほど力のこもってない両の拳で俺の肩をポカスカ叩いてくる。


ちっとも痛くはないが、ある程度叩いて満足したのか、鹿苑は俺から適正な距離へと離れて行った。


「とりあえず、俺たちは運命共同体ということで」


「はい」


「そういえば結局、なんでこんなことを聞いたんだ?」


「私もなんでか分からないんですけど…多分名前が欲しかったんですよ。私たちの関係性に」


関係性に名前なんてと一瞬思ったが、それを言葉にするのは大切なことなのかもしれない。どんな関係性にしろ、お互いの仲を深めるためには。


「意外と鹿苑は心配性なんだな」


「どういう意味です?」


「別に関係性に名前なんてなくたって俺たちは俺たちなのに」


「ならあって駄目なことはないでしょ?」


「まぁ確かに」


柏木がいない放課後は少し特別だった。良い悪いではなく、ただいつもとは違っただけだ。


「私の方が新田さんに会うのが早かったら、一体どうなってたと思います?」


鹿苑がふとそんなことを呟く。きっと比較対象は柏木だ。


「今と変わらねーよ」


俺は迷わず答えた。そして鹿苑も屈託のない笑みで返した。


「ふふっ。私もそう思います!」


俺たちはお互いに助け合いながら自分たちの道をこれからも歩いていく。運命を共にして。


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