第二話の一:冬陽の時らの二分おんぷ
伏線は第一話で大慨全て張りました!
第二話は日常回です。本当に何か大きな事件が起こるわけでもない日常回です。
ほのぼの、特に大きな笑いがあるわけでもなく……ここでどれだけやることができるか、というのは大きな挑戦になります。
ちなみに全体では七話構成になります、よろしくおねがいします!
「何故! どうして! 何で十二月三十一日が終わらないのだ!? 嫌だ、嫌だ助けてくれぇえええ!!」
監督である柚田がこんな調子なんだから、タイムループの原因について、雲行きの怪しさが晴れることはないだろう。
ほんとに、何故だろうな。
十二月三十一日は終わらない。次の日も、また次の日も終わらなかった。
テレビは相変わらず同じ番組を放映し続けているし、同じ記事の新聞が投函される。
猫は相変わらず同じ時間に同じ花瓶を倒して割って、そして逃げ去っていった。
どうやら連続して時間が続いているのはこの家の中だけらしい。例えば外にあるものを我が家の中に持ち込めば、一日経ってもそれはリセットされない。
もちろんこの事実はこの家にいる全員が気づいている。
憂鬱に気が狂いそうになる日常かもしれない。何とかしてこのループを脱却したい。
ならばまずは、何故このループが起こっているのかを題材に物を考えてみるべきだろう、行動できない以上考えなければ始まらない。さあ考えるんだ。
「文仲! 今日こそ貴様との決着を付ける! 真剣に真剣で勝負だ! ご飯を食べたら来い、先に待っているからな!」
考えろよ。
数日を共に過ごしてみて分かった。
この家の奴らは俺も含め、目先のネガティブな現象に落ち込み続けるほどヤワでも繊細でもない。ただ思慮深くもない。
相変わらず鳴雪さんは勝負マニアだ(俺に対して限定)。一階に余った和室を道場代わりにして毎日朝から夜まで強くなるための特訓を積んでいる。
『私が死んだ原因など決まっている。弱いから死んだのだ。強くなれば、強くなればきっと!』
というのが本人の弁である。
本当に、彼女が試験に合格するための方法は、彼女の予測通り『強くなること』なのだろうか。真実は謎というところ。
「貴様、いい加減に何か自分の死因に思い当たるところはないのか?」
朝ごはんをモグモグしている柚田に尋ねられた。
「無い」
「くっ、貴様らの合格には、僕の卒業がかかっているのだぞ……!?」
二人で朝食をとっている。男二人とは何とも虚しいものであるが、俺達と比較して女性陣の朝がやたら早いのだから仕方がない。
鳴雪さんは夜が明けきらない頃から素振りを繰り返しているし、小鳥は朝食を作ってくれる上に朝の散歩に出かける。
というか柚田は何で一人だけ朝からステーキ喰ってんだ。どこから持ってきた。
「美味しい美味しい」じゃねえよ死ね。
柚田も俺の視線が肉に向いていることに気づいたのか、嫌らしく片笑みを浮かべて答えてみせる。
羨ましがって欲しいらしいので、あえて完璧にスルーした。
「それよりもどうなんだ柚田。タイムループ問題に関する見解はなにか出たのか?」
「……それか」
柚田は少し悲しそうである。
「結局、直接の原因は分からぬままだ。だが恐らく、これが生還試験関連によって起こった問題なのは、間違いないだろう?」
柚田は俺の顔とステーキを交互に見ている。
「つまり、どういうことだよ」
「貴様らの、当面の目標は変わらないということだ。貴様らが試験に合格さえすれば、恐らくタイムループも終了する。ステーキ美味しいぞ」
美味しいぞって言われても。
「何だ。そんなに見るな、羨ましいなら羨ましいと言えばいいだろう? フフ」
まあ……正直、朝からということを除けば羨ましいと思うことはないでもない。
やっぱりお金持ちってのは凄いもんだな。でもスーパー行ったときに『この店で一番高い品物を』とか得意げに言うのはやめろ。
「……」
柚田は顔が良い。綺麗な輪郭は肉付きが多すぎず少なすぎず、顔のパーツはそんな輪郭に引き立てられて、常に最高の身だしなみである。
彼は『キザ+自慢しい』という文字を顔面に描いたような、つまり常に自信の浮かんだしたり顔も相まって、多分モテるんだろう。
こんなのでも二百歳を超えてるっていうんだから、天上の世界は恐ろしいものだ。今回の卒業試験を受ける学校にも百五十年近くは通っているらしい。
「ただいま! 主に飛城に向けてただいま!」
朝の日課らしい外出を終えたのか、玄関から暇島小鳥の声がした。
途端に柚田がひくっと、食べ物が喉にでもつっかえたのかのような顔をした。少しだけ顔を赤らめた。
「どうした柚田」
「…………いや、何でもない」
最近の柚田は、見ていてニヤニヤさせられることがある。
小鳥のことを認識すると、すぐにしどろもどろになって格好つけた態度に走るのだ。
一目惚れという奴か、あるいは彼女が初恋の人にでも似ているのか。
「何故、彼女は貴様などに惹かれているのか、とんと理解がつかない」
「奇遇だな。俺もだよ」
「き、貴様は黙っていろ……!!」
何だか可愛らしいといえば、ある種の可愛さを持った奴である。




