第一話の二:あめころノート
キャラが出揃うのとシチュエーションが作れるまでは大きな笑いは作れそうにないです。ストーリー展開は極限まで減らしているため起伏の少ない感覚ですが、言い回しとかだけで大丈夫なのかな。うー、自分を信じてやってみるしか!
足の打撲とスリキズと上着一着と「ごめんなさい」で済んだから警察は要らない。
飲酒運転らしかったドライバーには、俺自ら厳重注意をかけ、そして行かせてしまった。
コチラとしても、死後の世界を訪れて早々に警察沙汰に巻き込まれるのはゴメンであったのだ。相手も反省していたようだし、つまりこれ以上は面倒なのである。
どうせ、死んでも大丈夫だったんだ。ここは天上の世界、死後の国なのだから、死んでも際限なく生き返れる。
痛い思いをするくらいなら、いっそのこと葬ってもらったほうが楽だったかもしれない。
「……あ、ありが、と」
「何度目だよ。もういいって」
今現在の俺は足の痛みを抱えながら、目的地に向けての歩みを進めている。
隣には先ほど助けた女の子が居た。
周囲の景色は住宅街らしい住宅街。辺りを埋め尽くすアスファルトとブロック塀は、白と黒の色味しか含んでいない。見上げれば曇り空も似たような色をしているもんで、俺としては水墨画の世界にでも迷い込んだ気分であった。
それにしても驚いた。
俺と彼女は同じく生還試験の受験生だそうで、目指している場所も全く同じ。この近くにある一軒家だそうだ。
つまりは彼女が、今回の生還試験にて、俺の新たな家族になる人物である。名前は、暇島小鳥と言うらしい。
今でこそ顔をうつむかせて、しおらしくなってしまっている彼女だが、事故直後の様子は非常に俺をドギマギとさせてくれた。
倒れこんだ俺に向けて、『大丈夫かな、だ、だだ大丈夫かな!?』と、しどろもどろになって押し倒してきて、俺の体を隅々見渡し、頬に手のひらを押し当ててきた。ぐにぐにと頬を押し崩された。寒さに冷え切っていた指先の感触は、何だか可愛らしかった。
そもそも先程は、道の真ん中でエサをむさぼっていた猫を助けようとして、あんな目に遭ったようだ。
「……キミの名前は、何なんだろ」
居心地悪そうな暇島が、腰元で両指を組み、もじもじといじりながら尋ねてくる。身長差から彼女の上目遣いは必然的であった。
彼女は手持ちのノートをポシェットにしまいこみ、代わりにはベルト付きのキャスケット帽を取り出して、深くかぶってくる。
俺としても正直落ち着かない。俺より一回り見た目が幼いとはいえ、同年代の女の子と会話するのは、恐怖に近い緊張が介在する。
「飛城文仲」
あくまで外面はクールに名乗った。さっきからその調子だ。
滑らかに艶やかしく笑んでみる俺だが、内心としてはそのままの表情で氷漬けにされてる様くらいがちょうど良いくらいの間抜けな像がある。
だって、彼女、可愛い。
活発で爽やかで、何よりも確かな気品が感じられた。色素の薄いショートカットは織物にしてやりたいくらい細やかで柔らかそうだし、幼い見た目なりの高級感というものをキッチリ余す所無く含んでいるようでもあった。人としてより、宝石のように大事に扱いたくさせられる。こんな子が……俺の新しい家族か。そう思うと、ある種の末恐ろしさを感じるくらいだ。
「へえ。飛城、かあ。苗字が四文字だね」
無理に感想ひねり出さなくてもいいぞ。
ああ、イカンイカン。俺はおいそれと女の子に見惚れてはいけないのだ。
でも何で女の子に見蕩れちゃいけないんだっけ。あれ、何でだったかな。何で――って
「……」
顔を赤らめて見つめてくるのをやめてくれないだろうか。




