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名作をパク――参考にすれば、名作になるに決まってるじゃない!  作者: 二歩田 回収


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第65話 魔道列車に乗る予定でしたが、神様が一本ずらせと言っています

名作をパク――参考にすれば、名作になるに決まってるじゃない!

第65話 魔道列車に乗る予定でしたが、神様が一本ずらせと言っています



魔道列車がある。


この世界には、魔道列車がある。


線路の上を走る巨大な車両。


魔石を動力にして、馬車より速く、徒歩より楽で、荷物も人も大量に運べる。


王都から主要都市へ向かうには、かなり便利な交通手段である。


普通なら使う。


使わない理由がない。


だから俺は、駅の前で黙っていた。


リナも黙っていた。


アレンも黙っていた。


ミリアは、駅舎を見上げている。


セイルは、時刻表を読んでいる。


ガルドは、ホームの人の流れを見ている。


キュルルは、切符売り場の規約を読んでいる。


聖剣は寝ていた。


まだ寝ていた。


かなり寝ている。


「便利そうですね」


リナが言った。


「ああ」


俺は答えた。


「乗るんですよね?」


「たぶんな」


「たぶん?」


リナが首をかしげる。


俺は木札に触れた。


「神よ」


頭の中に声が響いた。


『聞いている』


「今回は魔道列車に乗っても大丈夫ですか」


少し間があった。


かなり嫌な間だった。


『今ならよい』


「今なら」


リナが不安そうな顔をした。


アレンも少し眉を寄せた。


ミリアが言った。


「神様に交通手段の確認をしてるの、だいぶ変じゃない?」


「必要だ」


「なぜ?」


「魔道列車は速い」


「いいことじゃない」


「だが、速い道が軽い道とは限らない」


ミリアは黙った。


以前にも似たようなことがあった。


魔道列車に乗ろうとすると、なぜか木札が熱くなる。


神様が止める。


理由はだいたい同じだった。


『乗るな』


「またですか」


『荷が重い』


「荷物ですか」


『物語の荷だ』


最初は意味が分からなかった。


だが、何度か駅に来て分かった。


魔道列車には、荷物だけが乗っているわけではない。


人も乗る。


事情も乗る。


因縁も乗る。


遺産相続も乗る。


密室も乗る。


未提出の遺言状も乗る。


そして、ときどき、見抜きそうな人が乗る。


「ユート」


キュルルが切符売り場から戻ってきた。


「この列車、乗車規約は普通だよ」


「普通か」


「払い戻し規定も普通。荷物超過料金も普通。ペット扱いについては少し失礼だけど、僕は同行者扱いで押せる」


「押すな。説明しろ」


「説明する」


「ほかに?」


キュルルは鼻をひくつかせた。


白い小動物らしく、匂いには敏感だ。


ただし、嗅ぎ分ける対象が少し変である。


「紙の匂いは普通。乗車券、荷札、時刻表、払い戻し規約」


「よし」


「未提出の遺言状の匂いはしない」


「それはかなり大事だ」


「あと、古い血の匂いも今のところない」


「今のところ」


「駅だからね。いろんな人がいる」


キュルルは真面目だった。


契約を迫るマスコットから、説明マスコットになり、今では書類と匂いの担当である。


成長している。


たぶん。


俺たちが乗る予定の列車は、第一ホームから出る急行だった。


王都から西の街へ向かう。


本来なら、徒歩で数日。


列車なら半日。


かなり大きい。


「乗れたら楽ね」


ミリアが言った。


「乗れたらな」


「まだ疑ってるの?」


「神様が今ならよいと言った時は、だいたい今以外が危ない」


「嫌な信用ね」


その時、第一ホームに列車が入ってきた。


黒い車体。


赤い線。


煙突から白い蒸気。


乗客が列を作る。


その中に、小さな少年がいた。


やけに目つきが鋭い。


眼鏡をかけている。


隣には、事件に慣れていそうな大人たち。


さらに、なぜか周囲の空気が少し張り詰めている。


リナが小声で言った。


「ユートさん」


「見るな」


「まだ何も言ってません」


「見るな」


「でも、あの子、何か見抜きそうです」


「だから見るな」


木札が熱くなった。


『乗るな』


「神様」


『その列車は違う』


「やっぱりですか」


『荷が重い』


「荷物ですか」


『因果の荷だ』


俺は切符売り場を見た。


「一本ずらす」


リナが目を丸くした。


「え、乗らないんですか?」


「乗らない」


「もう切符を買うところでしたよね?」


「払い戻し規定はキュルルが読んだ」


キュルルが胸を張った。


「発車前変更は一回まで無料だよ」


「よし」


アレンが困惑した顔で聞いた。


「なぜ探偵らしき者がいると避けるんだ」


「名探偵の近くでは、事件が起きる」


「事件を解決してくれるのでは?」


「解決する前に起きる」


アレンは黙った。


かなり納得していた。


ガルドが短く言った。


「巻き込まれれば関係者だ」


「そうだ」


俺は頷いた。


「事件に巻き込まれる乗客になるより、救援依頼が来てから救援者として行く方がいい」


「同じ現場へ行くのでは?」


リナが聞いた。


「立場が違う。乗客は関係者になる。救援者は作業者になれる」


「なるほど」


「関係者になると、事情聴取、証言、足止め、荷物確認、場合によっては容疑者欄に載る」


「嫌ですね」


「かなり嫌だ」


キュルルが口を開きかけた。


俺は手を出した。


「今、書類はいらない」


キュルルは口を閉じた。


「容疑者確認票があるよ」


「出すな」


「出さない」


成長している。


第一ホームの列車が出発した。


俺たちは見送った。


結果として、その列車は一本前になった。


乗らなかった列車ほど、無事を祈りたくなるものはない。


「次の便ですね」


セイルが言った。


「そうだな」


だが、第二ホームに別の列車が入ってきた。


白い車体。


青い紋章。


少し古い型。


そこへ、別の一行が乗り込もうとしていた。


少し冴えない顔の青年。


しっかり者の少女。


やけに因縁を背負っていそうな同行者。


周囲には、なぜか古い館の招待状を持っていそうな客たち。


俺は黙った。


木札が熱くなった。


『それも違う』


「神様」


『近づくな』


「さらにずらす」


ミリアが笑いをこらえた。


「一本目で終わらないのね」


「名探偵が一系統なら事件」


「二系統なら?」


「たぶん連続殺人」


「嫌すぎるわね」


キュルルが鼻をひくつかせた。


「こっちは、古い館、湿った木材、未解決の過去、あと遺産相続の匂いがする」


「遺産相続の匂いも分かるのか」


「だいたい紙が古い」


「なるほど」


「あと、関係者がやたら多い匂い」


「それは嫌だな」


第二ホームの列車も出発した。


俺たちは見送った。


これも乗らなかった。


結果として、さらに一本ずれた。


「本当に乗れるんですか?」


リナが不安そうに聞いた。


「神様が今ならよいと言った」


「でも、二本見送りました」


「今の範囲が思ったより狭い」


木札が温かくなった。


『次だ』


「次なら大丈夫ですか」


『たぶん』


「神様がたぶんと言った」


ミリアが嫌そうな顔をする。


「そこ、断言してほしいわね」


『駅は変数が多い』


「神様でもですか」


『ナマモノが多すぎる』


「ナマモノ」


リナが首をかしげた。


「ナマモノって何ですか?」


「生きている厄介事だ」


「言い方」


「助けた相手、謎の依頼人、記憶喪失の姫、拾った卵、封印された吸血鬼。全部、置いていけない荷になる」


「重そうです」


「かなり重い」


その直後、駅の売店の裏から悲鳴が聞こえた。


俺は黙った。


リナも黙った。


アレンが剣に手をかける。


ミリアが杖を握る。


セイルが祈りの姿勢を取る。


ガルドが前へ出る。


キュルルが鼻をひくつかせた。


「ミミックの唾液と、かなり焦ったエルフの匂いがする」


「なんでそんな具体的なんだ」


「獣だから」


「今回は獣の方か」


売店の裏へ回ると、宝箱があった。


駅の裏に宝箱。


もうおかしい。


しかも、その宝箱が暴れている。


蓋がぎしぎし動き、中から長い耳が見えていた。


誰かが齧られている。


エルフだった。


たぶん。


「助けるぞ!」


アレンが叫んだ。


「当然だ」


俺は鉄棒を構える。


リナが周囲を確認する。


「他のミミックはいません!」


ガルドが宝箱の蓋に剣の柄を挟んだ。


「開ける」


ミリアが言った。


「粘液を乾かすわ。燃やさないから安心して」


「駅を燃やすなよ」


「分かってる!」


セイルが駆け寄る。


「噛まれている箇所を確認します」


アレンとガルドが力を合わせて蓋をこじ開ける。


ミリアが箱の中の粘液を乾かす。


俺が鉄棒で蓋を支える。


リナがエルフの腕を引く。


「今です!」


エルフが抜けた。


ミミックが歯を鳴らす。


ガルドが蓋を叩き割った。


アレンが核らしき部分を斬る。


ミミックは動かなくなった。


かなり短い戦闘だった。


エルフは床に倒れた。


長い耳。


きれいな髪。


旅装。


かなり物語の匂いがする。


セイルが傷を確認する。


「命に別状はありません。噛み傷と粘液かぶれです」


「よかった」


リナが胸をなで下ろす。


キュルルが口を開いた。


一枚。


「救助記録票」


「今は一枚でいい」


「うん」


ちゃんと止まった。


セイルが治療を終えると、エルフがゆっくり目を開けた。


そして俺たちを見た。


「あ……」


俺は嫌な予感がした。


エルフが言う。


「あ、ありがとう……」


「駅員さん!」


俺は近くにいた駅員を呼んだ。


「こちらの方は駅構内でミミックに噛まれていました! 応急処置は済んでいます! 救助記録票もあります! 駅の責任者へ引き継ぎます!」


エルフが戸惑った。


「え、あの、名前を」


「名乗りません!」


「なぜ」


「この業界、ナマモノは危ない!」


木札が熱くなった。


『正しい』


「神様もですか!」


『ナマモノだ』


キュルルが鼻をひくつかせた。


「背景、長い旅、古い魔法、ミミック経験多数の匂いがする」


「多数?」


「たぶん一回目じゃない」


「深追いするな!」


リナが困惑していた。


「助けたのに、逃げるんですか?」


「助けた。治療した。駅員へ引き継いだ。これ以上は関係が発生する」


「感謝くらいは」


「感謝を受け取りすぎると、事情を聞くことになる。事情を聞くと、同行することになる。同行すると、長い旅になる」


リナは少し考えた。


「長い旅」


「とても長い旅」


「……それは、持てませんね」


「そうだ」


俺たちは第三ホームへ走った。


アレンはまだ少し納得していない顔だったが、走っている。


ガルドは何も言わず走る。


ミリアは笑いながら走る。


セイルは少し困った顔で走る。


キュルルはリナの肩から落ちないようにしがみついていた。


第三ホームには、次の魔道列車が停まっていた。


銀色の車体。


落ち着いた客層。


荷物も普通。


車掌の顔色も普通。


遺産相続の気配なし。


密室の匂いなし。


長すぎる旅の気配なし。


ミミックの唾液なし。


未提出の遺言状なし。


キュルルが鼻をひくつかせる。


「普通だね」


「本当に?」


「うん。普通の乗車券、普通の荷札、普通の弁当、普通の忘れ物届の匂い」


「忘れ物はあるのか」


「駅だからね」


木札が温かくなった。


『乗れ』


「神様」


『今なら大丈夫だ』


「本当に」


『名探偵は見送った。もう一組も見送った。エルフは駅員に渡した』


「管理が細かいですね」


『強運の加護とは、都合のよい道を選ぶことだ』


「ご都合主義では?」


『ご都合を運用している』


「強い言い方」


『乗れ。発車する』


「はい!」


俺たちは列車に乗った。


ついに乗った。


魔道列車に。


客席に座る。


荷物を棚に上げる。


救急箱の位置を確認する。


キュルルの待機位置を決める。


聖剣は横に置く。


鉄棒は足元。


リナは窓際。


アレンは通路側。


ミリアは杖を倒さないように持つ。


セイルは車内案内を読む。


ガルドは出入口の位置を見ている。


キュルルは座席ポケットの規約を読んでいた。


「いいですね」


リナが窓の外を見ながら言った。


「速そうです」


「そうだな」


「本当に乗れましたね」


「ああ」


魔道列車がゆっくり動き出した。


車輪が鳴る。


車体が揺れる。


王都の駅が後ろへ流れていく。


徒歩より速い。


馬車より静か。


かなり快適だ。


「なぜ今まで乗らなかったのかしらね」


ミリアが言った。


俺は木札を見た。


「乗らなかったんじゃない」


「違うの?」


「乗れなかった」


神様の声が響いた。


『乗せなかった』


「だそうです」


アレンが聞いた。


「強運の加護があっても駄目なのか」


神様の声を、俺がそのまま伝える。


「加護は道を軽くする。だが、物語そのものを軽くするものではない」


「物語そのもの」


セイルが静かに繰り返した。


「事件、因縁、使命、長い旅。そういうものか」


ガルドが言った。


「斬れない荷だな」


「そうだ」


俺は頷いた。


「斬れないし、持ちきれない」


リナが言った。


「でも、困っている人は助けるんですよね?」


「助ける」


「エルフさんも助けました」


「ああ」


「でも、持ち帰らない」


「そうだ」


「難しいですね」


「難しい」


助けることと、背負うことは違う。


その場で手を貸すことと、相手の物語に入ることは違う。


線引きは難しい。


だが、線引きしないと旅は進まない。


キュルルがぽつりと言った。


「契約と似てるね」


俺はキュルルを見た。


「何が」


「助けることと、背負うことを分けるところ」


「なるほど」


「契約も、説明を聞くことと、契約することは違う」


「そうだな」


「だから、引き継いだんだね」


「そういうことにしておく」


「たぶん合ってるよ」


キュルルは座席で丸くなった。


「関係が発生すると、荷になる」


「お前が言うと重いな」


「説明マスコットだからね」


「だいぶ板についてきたな」


列車は走る。


山が遠ざかる。


畑が流れる。


川を渡る。


俺たちは、ようやく普通の移動をしていた。


普通の移動。


かなり珍しい。


しばらくして、車掌が検札に来た。


切符を見せる。


荷物札も見せる。


キュルルの同行確認書も見せる。


車掌がキュルルを見て少し迷った。


「小動物……ですか?」


キュルルが胸を張る。


「同行説明マスコットです」


車掌は黙った。


俺も少し黙った。


「契約は迫りません」


キュルルが付け加えた。


車掌はさらに困った。


俺は同行条件確認書を見せた。


「契約勧誘禁止、食費自腹、荷袋侵入禁止、危険時待機位置ありです」


車掌は書類を見た。


「……規約上は、問題ありません」


「よし」


「ただし、車内で書類を散らかさないでください」


「はい」


キュルルが真面目に頷いた。


「一枚ずつ出します」


「出さないでください」


「はい」


車掌は去っていった。


ミリアが笑いをこらえていた。


「車掌さん、強かったわね」


「正しい対応だ」


「出さないでください、で止めたものね」


「かなり正しい」


キュルルは少ししょんぼりしていた。


「一枚ずつならいいと思ったのに」


「車内では出すな」


「はい」


魔道列車は順調に走った。


本当に順調だった。


事件も起きない。


密室もない。


乗客の中に、やたら過去を語り始める人もいない。


食堂車で毒殺も起きない。


荷物室で謎の箱も見つからない。


ミミックもいない。


普通に目的地へ近づいている。


普通はすごい。


かなりすごい。


だが、普通は長続きしない。


俺はそれを知っている。


案の定、途中の停車駅で、駅員が慌てて走ってきた。


「すみません! 急病人が!」


俺は黙った。


セイルが立ち上がる。


アレンも立つ。


ミリアが杖を持つ。


リナが周囲を見る。


ガルドが通路を確保する。


キュルルが口を開きかける。


俺は指を立てた。


「一枚だけ」


キュルルは頷いた。


一枚。


「車内応急対応記録票」


それだけ出した。


成長している。


急病人は、隣の車両の老人だった。


倒れたが、意識はある。


セイルが確認する。


「脱水と疲労です。命に別状はありません」


「水を」


アレンが言う。


「少しずつです」


セイルが止める。


ミリアが車内の温度を調整する。


リナが荷物をどける。


ガルドが人を下げる。


俺は通路の導線を作る。


キュルルは記録票を持って待機する。


数分で落ち着いた。


事件ではない。


事故でもない。


ただの急病人だった。


それでも、対応は必要だった。


老人は頭を下げた。


「ありがとう」


今度は逃げなかった。


リナが少し笑う。


「今回は大丈夫なんですか?」


「大丈夫だ」


「ナマモノでは?」


「これは救急対応だ。物語の荷ではない」


キュルルが鼻をひくつかせた。


「古い因縁の匂いはしないよ。乾いた弁当と薬の匂いだけ」


「ならよし」


老人は不思議そうに俺たちを見ていた。


深く説明はしなかった。


列車は再び走り出した。


目的地が近づく。


俺は座席に戻り、記録帳を開いた。


魔道列車乗車記録。


一、神様の許可が出るまで乗らない。


二、名探偵らしき一行がいる列車は避ける。


三、別系統の名探偵らしき一行も避ける。


四、ミミックに齧られたエルフは助ける。


五、ただし駅員へ引き継ぐ。


六、キュルルは匂いで未提出の遺言状を検知できる可能性がある。


七、車内で勝手に書類を出さない。


八、急病人対応は行う。


九、乗客として巻き込まれるのと、救援者として対応するのは違う。


リナが五番を見て言った。


「駅員へ引き継ぐ、って大事ですね」


「大事だ」


アレンはまだ少し納得していない。


「助けた相手を置いていくのは、勇者として少し気になる」


「置いていったわけじゃない。駅員に引き継いだ」


「それはそうだが」


「勇者が何でも背負うと、勇者が潰れる」


アレンは黙った。


セイルが静かに言った。


「助けた後に、適切な人へ引き継ぐことも大切です」


ガルドも頷いた。


「一人で抱えるな」


ミリアが笑った。


「それ、アレンに効くわね」


アレンは少し困った顔をした。


「分かった。覚えておく」


キュルルが言った。


「引き継ぎ記録票、いる?」


「今は出すな」


「はい」


本当に成長している。


目的地の駅に着いた。


何事もなく。


いや、少しはあった。


でも、列車は無事に着いた。


俺たちは荷物を下ろす。


忘れ物確認。


聖剣確認。


鉄棒確認。


救急箱確認。


キュルル確認。


切符確認。


全部よし。


駅を出たところで、木札が温かくなった。


『よい乗車だった』


「神様」


『速い道も、選べば軽い』


「今回は乗ってよかったんですね」


『今回はな』


「次は?」


『確認せよ』


「ですよね」


『あちらの因果は重い。だが、避けられる時もある』


「強運の加護で?」


『強運とは、都合のよい偶然を拾う力だ』


「かなりメタいですね」


『だが、持てぬ因果は持つな』


「今回の教義ですか」


『採用』


「重いですね」


『魔道列車だからな』


俺は駅を振り返った。


魔道列車は速かった。


便利だった。


快適だった。


使えるなら、かなりありがたい。


だが、速い道には人が多い。


人が多ければ事情も多い。


事情が多ければ、物語も多い。


その中には、持ちきれないものもある。


助けることと、背負うことは違う。


避けることと、見捨てることも違う。


乗ることと、巻き込まれることも違う。


だから、乗る前に見る。


匂いを嗅ぐ。


神様に聞く。


一本ずらす。


時には助けて、引き継いで、走る。


魔道列車は速い。


だが、速い道が軽い道とは限らない。


物語は、きれいに一区切りを迎えた。


そう。


ここで終わっても、何の問題もない。


俺たちの魔道列車利用審査は、これからだ。


「魔道列車は速い。だが、速い道が軽い道とは限らないんだよ」


第二部・完

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