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名作をパク――参考にすれば、名作になるに決まってるじゃない!  作者: チンポジ博士


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第55話 邪神教団が出てきましたが、邪神の名前が荷物の神でした

名作をパク――参考にすれば、名作になるに決まってるじゃない!

第55話 邪神教団が出てきましたが、邪神の名前が荷物の神でした



補償物資の第一便が出た翌日。


俺たちは王都の外れにある、古い倉庫街へ来ていた。


俺は黙った。


リナも黙った。


アレンも黙った。


ミリアは、倉庫の壁に描かれた黒い紋章を見て眉をひそめている。


セイルは静かに祈るべきか迷っていた。


ガルドは、倉庫の出入口を確認している。


場所は、王都南東の旧倉庫区。


今はほとんど使われていない。


古い荷車。


朽ちかけた木箱。


壊れた滑車。


壁に残る荷札の跡。


かつては物流の拠点だったのだろう。


今は、人通りが少ない。


つまり、怪しい集団が隠れるにはちょうどいい。


軍務局と封印局から連絡が来た。


謎の組織が、旧倉庫区で儀式を行っている疑いあり。


かなり雑な依頼である。


だが、場所が倉庫街だった。


しかも、押収された紙片に、見覚えのある言葉があった。


俺は、その紙片を見ていた。


黒いインク。


妙に大げさな文字。


古い神名。


その一部に、こう書かれていた。


持てる分だけ持て。持てぬものは置いていけ。箱に逃げる者には――


そこで紙片は破れていた。


俺は黙った。


リナも紙片を見た。


「これ、ユートさんの神様の教えに似てませんか?」


「似ているな」


「似ているというか」


「かなり同じだな」


アレンが俺を見る。


「お前の神の名前が関係しているのか」


「まだ分からない」


ミリアが言った。


「でも、この組織、邪神教団って呼ばれてるらしいわよ」


「邪神教団」


セイルが静かに言う。


「邪神を呼ぶ儀式をしている、と」


「はい」


封印局の職員が頷いた。


職員は小柄な女性で、分厚い眼鏡をかけている。


危険文書担当らしい。


「倉庫内に祭壇、召喚陣、供物台、寄付金箱、黒いローブ、信者名簿らしきものが確認されています」


「信者名簿」


俺は反応した。


「はい」


「名前は実名ですか?」


職員は少し驚いた顔をした。


「そこですか」


「そこです」


「一部は仮名です。ただし、寄付額と持参物は細かく記録されています」


「そこは細かいんですね」


「はい」


嫌な感じがする。


邪神を呼ぶ儀式は雑でも、金品の記録だけ細かい組織は危ない。


アレンが言った。


「邪神教団なら、討伐か」


「待て」


俺は言った。


「まず確認する」


「何をだ」


「邪神がいるかどうか」


ミリアが腕を組んだ。


「いるの?」


「分からない」


「神様に聞けば?」


「聞く」


俺は胸元の木札に触れた。


背負い袋にタライが降臨している紋章。


いつ見ても、神聖かどうか微妙である。


俺は小さく祈った。


「神よ。この名前に心当たりはありますか」


少しだけ沈黙があった。


木札経由だから、声は細い。


だが、届く。


『ある』


「邪神ですか」


『我だ』


俺は黙った。


リナが俺を見た。


「どうしました?」


「神が、自分だと言っている」


リナも黙った。


アレンも黙った。


ミリアも黙った。


セイルも黙った。


ガルドも黙った。


封印局の職員も黙った。


「……邪神なんですか?」


リナが、おそるおそる聞いた。


俺は木札に聞いた。


「神よ。あなたは邪神なんですか」


『違う』


「違うそうです」


ミリアが言った。


「本人確認だけで済ませていいの?」


「他に確認手段がない」


セイルが静かに言った。


「少なくとも、ユートさんに答えている神は、いつもの荷物の神ですね」


「たぶん」


『たぶんではない』


「はい」


アレンが眉をひそめる。


「では、邪神教団が、お前の神の名を勝手に使っているのか」


『迷惑だ』


「迷惑だそうです」


「神様が迷惑がってるの、初めて見たかも」


リナが言った。


俺はもう一度、木札に祈る。


「詳しく聞いても?」


『木札では細い。今は荷を止めよ』


「荷?」


『我の名で、何を運ばせているか確認せよ』


「分かりました」


神の声はそこで途切れた。


木札が少し冷たくなる。


木札経由では、深い話は無理だ。


会話や軽い加護なら届く。


だが、神力は一割くらいしか届かない。


本格的な対話や祝福には、回線の太い教会がいる。


荷物の神の教会なんてないので、別の神の教会を借りることになる。


だが、それは後だ。


今は邪神教団である。


俺は倉庫を見た。


「邪神はいない可能性が高い」


アレンが言った。


「なら安全か?」


「違う」


「違うのか」


「邪神がいなくても、邪神の名で人と金と荷物が動いている」


ミリアが杖を握り直した。


「そっちのほうが厄介そうね」


「かなり」


ガルドが言った。


「入るぞ」


倉庫の扉は半開きだった。


封印局の職員が、封印札を貼る。


ミリアが罠を調べる。


リナが隙間から中を確認する。


「中に人がいます。十人ほど。奥に祭壇。木箱が多いです」


「武装は?」


ガルドが聞く。


「短剣が二人。あとは杖や儀式具です」


「突入するか」


アレンが剣に手をかける。


「待て」


俺は言った。


「まず、荷物の位置を確認」


「またそこか」


「邪神教団だぞ。危険物、寄付品、供物、呪物、火種、全部ある可能性がある」


アレンは頷いた。


「分かった」


本当に分かるようになった。


倉庫内へ入る。


古い木箱の間を進む。


奥には、黒い布をかけた祭壇があった。


祭壇の中央には、木で作った奇妙な像。


背負い袋らしきものを持っている。


その上に、金属の皿が吊られている。


いや、皿ではない。


タライだった。


俺は黙った。


リナも黙った。


ミリアが口元を押さえた。


アレンは何かを言いかけて、やめた。


セイルは目を伏せた。


ガルドは真面目に像を見ていた。


「似ているな」


「似ているな」


俺は答えた。


似ている。


かなり似ている。


だが、邪神像として作られているせいで、表情がやたら怖い。


本来の荷物の神がこういう顔かは知らない。


少なくとも、俺の中の神はもっと疲れている。


祭壇の周りには、黒いローブの者たちがいた。


一人が叫ぶ。


「誰だ!」


アレンが前に出た。


「王国公認勇者アレンだ」


黒ローブたちがざわつく。


「勇者!」


「なぜここに!」


「儀式はまだ!」


俺は一歩前に出た。


「儀式は中止してください」


黒ローブの中央にいた男が、こちらを睨んだ。


痩せた中年。


目がぎらついている。


手には古い巻物。


いかにも教団幹部である。


「我らの崇高なる召喚を止めるというのか!」


「はい」


「我らは偉大なる邪神、カタリス=モテールを呼び出す!」


「名前が微妙に違う」


俺は言った。


男が止まった。


「何?」


「神名が微妙に違う」


「そこか?」


アレンが小声で言った。


「そこだ」


俺は男を見る。


「その神名の出典は?」


「古文書だ!」


「どこの?」


「古い倉庫に眠っていた」


「管理番号は?」


男は黙った。


「寄付金箱はありますね」


「ある」


「信者名簿もありますね」


「ある」


「古文書の出典管理は?」


男は目をそらした。


「神の名に管理番号など」


「必要です」


「邪神の名だぞ!」


「神名ほど必要です」


封印局の職員が強く頷いた。


「神名の誤記は危険です」


男は苛立った。


「黙れ! 我らは邪神を呼び、箱に逃げた世界を罰するのだ!」


その言葉に、俺は少し眉を動かした。


「箱に逃げた世界」


「そうだ。便利な箱にすべてを詰め、荷を背負わぬ堕落者どもに、邪神の罰を!」


アレンが俺を見る。


ミリアも俺を見る。


リナも俺を見る。


セイルも、静かに俺を見る。


ガルドも見た。


「俺を見るな」


「でも、教義に近いわよ」


ミリアが言う。


「近いだけだ」


「近いのが怖いんじゃない」


「それはそう」


男は叫んだ。


「邪神は、箱を持つ者へタライの雨を降らせる!」


俺は頭を抱えた。


かなり伝わっている。


かなり歪んで伝わっている。


「神よ」


俺は木札に触れた。


「聞こえていますか」


『聞こえている』


「この話は?」


『後で話す』


「今は?」


『荷を止めよ』


はい。


まずは実務である。


俺は祭壇の周囲を見た。


供物台。


箱。


箱。


箱。


かなり多い。


木箱、革袋、壺、封印箱、寄付金箱。


そして、信者らしき人たちが不安そうに立っている。


全員が幹部ではない。


騙されている者もいる。


不安につけこまれた者もいる。


アイテムボックス事故で損をした者もいるかもしれない。


俺は男に聞いた。


「召喚のために、何を集めましたか」


男は胸を張った。


「金貨、銀貨、古い荷札、壊れたアイテムボックス、腐らぬ供物、旅人の靴紐、商人の帳簿、そして箱に逃げた者の悔恨だ!」


「最後は保管できませんね」


「象徴だ!」


「他は現物ですね」


「そうだ!」


「台帳は?」


男は止まった。


「台帳?」


「集めた金品の台帳」


「邪神への供物だ。台帳など不要」


俺は深く息を吐いた。


「駄目です」


「何がだ!」


「神名を使って金品を集め、台帳がない」


「邪神への奉納だぞ!」


「邪神はいません」


倉庫内が静まった。


男の顔が歪む。


「何を言う」


「少なくとも、あなたが呼ぼうとしている邪神はいない」


「いる!」


「名前を確認しました」


「誰に!」


「本人に」


男は黙った。


黒ローブたちも黙った。


リナが小声で言った。


「すごい言い方ですね」


「事実だ」


男は叫んだ。


「邪神本人と話したと言うのか!」


「邪神ではありません。荷物の神です」


「荷物の神?」


「持てる分だけ持て、持てぬものは置いていけ、箱に逃げる者には五歩目でタライを与える神です」


黒ローブたちがざわついた。


「正式名、長いな」


「邪神じゃないのか?」


「でもタライは降るらしいぞ」


「タライは邪神では?」


俺は言った。


「そこは後で確認します」


ミリアが笑いをこらえている。


アレンは真剣に困っている。


セイルは神妙な顔だ。


ガルドは変わらない。


教団幹部の男は、巻物を掲げた。


「黙れ! 我らの邪神は、今宵この祭壇に降臨する!」


「しません」


「なぜ分かる!」


「本人が迷惑だと言っています」


「本人!」


「あと、召喚陣が間違っています」


ミリアが祭壇の床を見て言った。


「これ、召喚陣じゃないわよ」


男が固まる。


「何?」


ミリアが杖で床を示す。


「外周は封印陣。内側は倉庫の湿気避けの古い魔法陣。真ん中は、たぶん荷崩れ防止印。三つが混ざってる」


「そんなはずはない!」


「しかも、ここ。線が切れてる」


「そこは木箱で隠れていただけだ!」


「駄目じゃない」


リナが祭壇横の箱を見た。


「この箱、邪魔で陣を潰しています」


俺は頷いた。


「召喚陣上に物を置くな」


封印局の職員も記録する。


「儀式陣上の物品放置」


男は震えている。


「邪神は、細かいことを気にしない!」


俺は言った。


「荷物の神は、細かいことを気にします」


神の声が響いた。


『気にする』


「気にするそうです」


「神託を会議の確認みたいに使うな!」


男は怒鳴った。


だが、怒鳴っても駄目なものは駄目である。


アレンが一歩前に出た。


「お前たちが、邪神の名で人を集め、金品を集め、危険な儀式をしようとしたことは事実だ」


黒ローブたちが後ずさる。


アレンの声は、勇者の声だった。


かなり強い。


「だが、騙されて参加した者もいるだろう。武器を捨て、手を上げろ」


何人かがすぐに手を上げた。


かなり素直だった。


だが、幹部の男は違った。


「邪神は来る! 邪神は箱に逃げた者へ裁きを!」


男は懐から小さな革袋を取り出した。


俺の体が先に反応した。


「それは?」


「邪神へ捧げる、堕落の箱だ!」


革袋型のアイテムボックス。


古い。


ひび割れている。


封印が不安定。


ミリアが叫んだ。


「待って、それ壊れてる!」


男は笑った。


「この中には、信者たちの罪深き荷を詰めてある!」


「中身は?」


俺は聞いた。


男は止まった。


「中身は?」


「邪神への供物だ!」


「台帳は?」


「不要だ!」


「種類は?」


「知らぬ!」


「危険物は?」


「邪神が受け取る!」


「駄目です」


俺は言った。


「壊れかけのアイテムボックスに、中身不明の荷物を詰めるな」


男は革袋を高く掲げた。


「開け、堕落の箱よ!」


ミリアが杖を向ける。


アレンが走る。


ガルドも動く。


セイルが結界を張る。


リナが信者たちを下がらせる。


俺は、とっさに荷車の陰に飛び込んだ。


革袋が裂けた。


中から、物が噴き出した。


金貨。


銀貨。


古い靴。


腐った果物。


壊れた瓶。


短剣。


香油。


古い骨。


濡れた布。


小箱。


薬草。


そして大量の紙。


倉庫中に散らばる。


かなり危ない。


短剣が床に刺さった。


瓶が割れた。


香油が流れた。


腐った果物の匂いが広がった。


信者たちが悲鳴を上げる。


「伏せろ!」


アレンが叫ぶ。


セイルの結界が、飛び散る小物を止める。


ミリアが火気を消す。


香油に火がついたら危ない。


ガルドが幹部の男を取り押さえる。


リナが信者を出口へ誘導する。


俺は、散らばった荷物を見た。


混ざっている。


ひどく混ざっている。


金品。


食料。


危険物。


刃物。


薬。


骨。


紙。


全部一緒。


これが、神の嫌う箱の中身だ。


「神よ」


俺は木札を握った。


『見ている』


声が低かった。


かなり低かった。


「これは」


『箱は堕落させる』


神の声は、怒っていた。


『荷を見えなくする。重さを消す。数を忘れさせる。返す先を曖昧にする。危険を混ぜる』


「はい」


『そして、人は怠る』


「はい」


『我はこれを憎む』


「分かります」


『だが、今は怒るな』


「え?」


『分類せよ』


「はい」


神は本当に荷物の神だった。


怒りより先に分類。


正しい。


俺は叫んだ。


「全員、触る前に止まってください!」


封印局の職員が反応する。


「危険物区分します!」


ミリアが香油と火気を分ける。


セイルが怪我人を見る。


リナが紙束を踏まれない場所へ集める。


ガルドが幹部を縛る。


アレンが剣を抜いたまま、信者たちを抑える。


「落ち着け! 今は邪神より足元を見ろ!」


かなり良い指示だった。


俺は床に広がったものを分類する。


一、金品。


二、刃物。


三、薬品。


四、腐敗物。


五、書類。


六、骨・身元確認対象。


七、儀式具。


八、私物らしきもの。


九、返却先不明。


十、危険物疑い。


封印局の職員が震えた声で言った。


「すばらしい分類です」


「褒めている場合ではありません」


「すみません」


倉庫内は混乱していたが、少しずつ落ち着いた。


壊れたアイテムボックスから噴き出した荷物は、床一面を埋めている。


だが、区分すれば扱える。


区分しなければ、ただの混沌だ。


幹部の男は、ガルドに押さえられながら叫んでいる。


「邪神の試練だ! これは邪神の怒り!」


俺は言った。


「違います」


「違うだと!」


「壊れたアイテムボックスに中身不明の荷物を詰めた結果です」


「そんな現実的な!」


「現実です」


男は愕然とした顔をした。


現実を突きつけられる邪神教団幹部。


かなり哀れだ。


いや、哀れでは済まない。


信者たちから金品を集めていた。


危険物を雑に扱っていた。


神名を勝手に使っていた。


これは処理が必要だ。


封印局と軍務局、そして衛兵隊が入ってきた。


黒ローブの信者たちは分けられた。


幹部。


協力者。


騙されていた信者。


被害者。


見物に来ただけの者。


なぜか倉庫の元管理人。


一緒にすると危ない。


俺は紙に書いた。


邪神教団対応表


一、神名の確認。


二、実在神との照合。


三、召喚儀式の有効性確認。


四、壊れたアイテムボックスの封印。


五、噴出物の分類。


六、寄付金・供物の台帳作成。


七、信者名簿の保護。


八、幹部の命令系統確認。


九、被害者と協力者の切り分け。


十、金品の返却先確認。


十一、危険物の処理。


十二、神名無断使用の訂正文作成。


十三、荷物の神の風評被害対策。


アレンが十三を見た。


「風評被害対策」


「必要だ」


「邪神ではないからか」


「そうだ」


「だが、タライは落とす」


「落とす」


「難しいな」


「かなり」


リナが言った。


「訂正文、どう書くんですか?」


俺は考えた。


そして書いた。


当該教団が邪神として称していた存在は、邪神ではなく、古い荷運びと徒歩旅の神である可能性が高い。


なお、同神は当該教団の活動、寄付金募集、危険物保管、無許可召喚儀式に関与していない。


同神はアイテムボックスを嫌っているが、当該教団を承認したものではない。


ミリアが読んで言った。


「最後の一文、いる?」


「いる」


「アイテムボックス嫌いは認めるのね」


「そこを嘘にすると後で壊れる」


セイルが頷いた。


「正直であることは大切です」


封印局の職員も頷いた。


「神名照合記録として妥当です」


アレンは腕を組んだ。


「邪神教団ではなく、神名無断使用団体か」


「そうだ」


「呼びにくいな」


「だが正確だ」


ガルドが言った。


「危険なのは邪神ではなく、人間か」


「今回はそうだ」


俺は言った。


「存在しない邪神は呼べない。だが、存在しない命令でも人は動く」


リナが散らばった金貨を見た。


「お金も動いてますね」


「荷も動いている」


「怖いですね」


「かなり」


夜までかかって、倉庫内の分類は終わった。


完全ではない。


だが、危険物は分けた。


金品は封印した。


腐敗物は処理した。


刃物は回収した。


信者名簿は保護した。


壊れたアイテムボックスは封印局が持っていった。


幹部たちは衛兵隊へ。


騙されていた信者たちは事情聴取。


寄付金の返却先確認は、明日以降。


かなり長い作業になった。


邪神は出なかった。


だが、荷物は出た。


大量に出た。


俺の腰は、少し怪しかった。


少しである。


たぶん。


アレンがこちらを見た。


「ユート」


「何だ」


「腰、怪しくないか」


「少しだ」


「少しは怪しいということだろう」


セイルがすぐに反応した。


「教会へ行きましょう」


「まだ大丈夫です」


「大丈夫と歩けるは違います」


リナも言った。


「ユートさん、前もそう言ってました」


ミリアが肩をすくめる。


「荷物の神の件も、ちゃんと聞かなきゃいけないでしょ」


ガルドが短く言った。


「行け」


「はい」


全員から言われた。


かなり逃げられない。


ただし、荷物の神の教会なんてない。


だから、王都の豊穣神教会を借りることになった。


回線が太いからだ。


いや、祈りの場として整っているからだ。


言い方の問題である。


その夜、俺たちは倉庫街を出た。


背後では、封印局の職員が押収品目録を作っている。


邪神教団の看板は外された。


祭壇は封印された。


タライ付きの邪神像は、証拠品として運ばれることになった。


俺は少しだけ像を見た。


似ている。


かなり似ている。


だが、神はあれをどう見るだろう。


木札に触れる。


声はかすかに届いた。


『明日、聞こう』


「はい」


『太いところでな』


「豊穣神教会で?」


『太い』


「はい」


やはり回線らしい。


こうして俺たちは知った。


邪神教団は、邪神だけでできているわけではなかった。


神名がいる。


古文書がいる。


祭壇がいる。


召喚陣がいる。


寄付金箱がいる。


信者名簿がいる。


供物がいる。


壊れたアイテムボックスがいる。


そして、誰が何を集め、どこへ返すのかという台帳がいる。


邪神はいなかった。


呼び出せる邪神もいなかった。


だが、名前は使われていた。


存在しない命令でも、人は動く。


存在しない邪神でも、金は集まる。


実在する神の名前でも、勝手に使えば荷が歪む。


荷物の神は、邪神ではなかった。


ただし、アイテムボックスは大嫌いだった。


そこは訂正できなかった。


邪神教団は摘発された。


幹部は捕まった。


信者は切り分けられた。


金品は封印された。


壊れたアイテムボックスは押収された。


神名無断使用の訂正文は作られた。


俺の腰は少し怪しかった。


そして、明日、教会で神に聞くことになった。


物語は、きれいに一区切りを迎えた。


そう。


ここで終わっても、何の問題もない。


俺たちの神名確認は、これからだ。


「呼べない邪神より、名義の確認をしろよ」


第二部・完

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