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名作をパク――参考にすれば、名作になるに決まってるじゃない!  作者: チンポジ博士


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第48話 聖女が増えすぎて、祈祷室の予約が取れません

名作をパク――参考にすれば、名作になるに決まってるじゃない!

第48話 聖女が増えすぎて、祈祷室の予約が取れません



「聖女について、相談があります」


王都神殿調整局の司祭は、そう言った。


俺は黙った。


リナも黙った。


勇者アレンは少しだけ姿勢を正した。


ミリアは露骨に嫌な予感がする顔をした。


セイルは静かに祈った。


ガルドは神殿の廊下の幅を見ていた。


いつも通りだった。


王都大神殿。


白い柱。


高い天井。


柔らかな光。


祈る人々。


香の匂い。


鐘の音。


いかにも聖女が出てきそうな場所である。


リナが小声で言った。


「見たことあります」


「言うな」


「聖女です」


「言うな」


「祈りで癒したり、結界を張ったり、奇跡を起こす人です」


「言うな」


「でもユートさんの場合、祈祷室の予約を見そうですね」


「そこだ」


司祭は深くため息をついた。


「先日の勇者召喚の混乱以降、各地で聖女適性者の登録が相次いでいます」


「各地で?」


「はい。神殿の鑑定水晶で、治癒、浄化、結界、祝福、祈祷補助などの適性が判明しまして」


「良いことでは?」


セイルが言った。


司祭はうなずく。


「良いことです。良いことなのですが」


「ですが?」


司祭は分厚い予約台帳を出した。


祈祷室予約状況


全枠埋まっている。


びっしり。


朝。


昼。


夕。


夜。


深夜。


早朝。


全部、聖女候補の祈祷訓練、治癒訓練、浄化訓練、結界実習、神託確認、奇跡検証で埋まっている。


「聖女が増えすぎて、祈祷室の予約が取れません」


そのままだった。


ミリアが言った。


「聖女って、増えるものなの?」


司祭は疲れた顔で答えた。


「適性が見つかった方が増えた、というのが正確です」


「なるほど」


セイルが静かに言う。


「治癒や祈祷の担い手が増えるのは、ありがたいことです」


「はい」


司祭はさらに疲れた顔でうなずいた。


「ですが、祈祷室は増えていません」


現実だった。


かなり現実だった。


アレンが言った。


「聖女なら、どこでも祈れるのではないか」


司祭は首を横に振った。


「個人の祈りなら可能です。しかし、治癒、浄化、結界、神託確認は、場所の清浄度、魔力の流れ、監督者、記録係が必要です」


「つまり、部屋がいる」


「はい」


ガルドが廊下を見ながら言った。


「人も通れないほど並んでいるな」


確かに。


祈祷室の前には列ができていた。


白い衣の若い女性。


年配の女性。


少年。


男性もいる。


聖女という呼び名だが、適性者は女性だけではないらしい。


ただ、広報上「聖女候補」と呼ばれてしまい、少し揉めているとのことだった。


また呼称問題だ。


勇者召喚の次は聖女呼称。


称号は荷である。


俺は木札に触れた。


「神よ」


頭の中に声が響いた。


『祈りも場所を取る』


「はい」


『聖なる力も、部屋を奪い合う』


「現実ですね」


『奇跡は予約台帳を飛び越えぬ』


「飛び越えたら困ります」


『祈祷室は有限である』


「教義ですか」


『まず台帳を見よ』


「実務ですね」


俺は木札から手を離した。


「まず、聖女候補を一括りにしないほうがいいです」


司祭が顔を上げる。


「一括りにしない」


「はい。治癒、浄化、結界、祝福、神託、祈祷補助では、必要な部屋も監督者も違うはずです」


セイルが頷いた。


「治癒訓練と神託確認は同じ部屋で行うべきではありません」


「そうです」


俺は紙を出した。


聖女適性者分類


一、治癒適性。


二、浄化適性。


三、結界適性。


四、祝福適性。


五、神託感応。


六、祈祷補助。


七、歌唱・精神安定系。


八、炊事・生活支援系。


主婦風召喚者の炊事と結界を思い出した。


聖なる力は、戦場の奇跡だけではない。


生活支援にも出る。


司祭は紙を見て言った。


「炊事・生活支援系も聖女分類に?」


「炊き出し、病人食、避難所運営、清潔管理は、神殿にとって重要では?」


司祭は黙った。


セイルが静かに言った。


「非常に重要です」


「では入れましょう」


司祭は深く頷いた。


「入れます」


次に、部屋分類。


現在は、全部「祈祷室」として扱われている。


だから詰まる。


祈祷室。


治癒室。


浄化室。


結界演習室。


神託確認室。


休憩室。


記録室。


待機室。


全部違う。


「神託確認室と治癒室を同じ予約枠にしているのが原因です」


俺は言った。


司祭は台帳を見て青ざめた。


「確かに」


「神託確認は静けさが必要」


「はい」


「治癒訓練は患者役や薬品が必要」


「はい」


「浄化は水と排水が必要」


「はい」


「結界演習は広さが必要」


「はい」


「祝福は短時間で回せる可能性がある」


「はい」


「祈祷補助は大部屋でもできるかもしれない」


「はい」


全部を祈祷室に入れるから詰まる。


分類すれば流れる。


また導線だ。


リナが言った。


「予約も導線なんですね」


「そうだ」


「部屋の導線と時間の導線」


「かなりその通り」


まず、祈祷室前の列を解体する。


受付を作る。


番号札。


用途確認。


時間枠。


部屋案内。


待機室。


「今すぐ祈祷室前に並ばせるのをやめましょう」


司祭が慌てて動く。


神殿職員が札を持つ。


治癒訓練はこちら。


浄化訓練はこちら。


結界演習はこちら。


神託確認は予約番号順。


列が少しずつ分かれる。


廊下が空く。


ガルドが頷いた。


「通れる」


それだけでかなり良い。


次に、聖女候補たちへの説明会。


大神殿の小講堂。


候補者が集まる。


年齢も性別もばらばら。


全員が少し緊張している。


司祭が言った。


「本日より、適性ごとの訓練枠を分けます。すべての方が同じ祈祷室を使うわけではありません」


ざわめき。


若い候補者が手を上げた。


「では、私は聖女ではないのですか? 治癒ではなく炊き出し適性と言われました」


セイルが前に出た。


「炊き出しは、人を救います」


候補者は驚いた顔をした。


「でも、奇跡では」


「空腹の人に温かい粥を届けることは、神殿の大切な務めです。治癒術だけが聖なる働きではありません」


静まった。


かなり良い。


セイルは本当にこういう時強い。


別の候補者が言った。


「私は結界適性です。祈祷室を使えないのは格下だからですか?」


「違います」


俺は言った。


「結界は広い場所が必要だからです。狭い祈祷室では壁に当たります」


ミリアが補足する。


「結界は広がるわ。部屋が狭いと、術者も壁も痛む」


「壁も」


「壁も」


結界候補者は納得した。


アレンが言った。


「勇者の必殺技も、実戦用と演武用を分けた」


候補者たちがアレンを見る。


「力には場所がある。祈りも同じだ」


勇者らしい。


かなり勇者らしい。


次に、呼称問題。


全員を「聖女候補」と呼ぶと、男性適性者や生活支援適性者が困る。


また、称号が先に立つと本人の負担になる。


「正式認定前は、聖務適性者でどうですか」


俺は提案した。


司祭が考える。


「聖務適性者」


「はい。治癒聖務、浄化聖務、結界聖務、生活支援聖務などに分ける」


セイルが頷く。


「よいと思います。聖なる務めは一つではありません」


司祭は書き込んだ。


「採用します」


また言葉が整った。


称号が荷なら、荷札を正しくする。


次に予約方式。


現状は紙台帳一冊。


駄目。


かなり駄目。


司祭が一人で管理している。


過労になる。


「部屋別台帳に分けます」


「はい」


「一日単位ではなく、用途別」


「はい」


「連続利用時間の上限」


「はい」


「準備時間と清掃時間を予約枠に含める」


司祭が固まった。


「清掃時間」


「浄化室も治癒室も、使用後の清掃が必要です」


「はい」


「そこを入れないから次の人が遅れる」


「はい」


「神託確認後は記録時間も必要」


「はい」


「候補者の休憩時間も」


セイルが言った。


「重要です。祈祷疲労はあります」


司祭は深く頷いた。


予約枠=準備+実施+記録+清掃+休憩。


これを台帳に書く。


また労務だ。


祈りにも労務がある。


神聖なものほど、疲労を隠しやすい。


危ない。


次に、祈祷室の拡張ではなく分散。


神殿には小部屋がいくつもある。


使っていない倉庫。


古い会議室。


物置化した礼拝準備室。


そこを整理する。


また荷物だ。


祈祷室不足の原因の一つは、部屋が物置になっていることだった。


俺は物置を見た。


古い燭台。


余った布。


壊れた椅子。


古い祭具。


期限切れの香。


未整理の寄付品。


「物置ですね」


司祭が目をそらした。


「はい」


「整理しましょう」


「はい」


聖女問題のはずが、結局物置整理になった。


いつも通りだ。


分類。


使う祭具。


修理する祭具。


廃棄。


寄付品。


記録待ち。


封印局確認。


なぜ封印局確認?


「古い祭具の一部に、由来不明のものが」


まただ。


分からないものは保留箱。


錬金術工房と同じ。


整理すると、小部屋が二つ空いた。


一つは祈祷補助訓練室。


もう一つは記録室。


祈祷室の負担が少し減る。


次に、炊き出し・生活支援系の訓練場所。


厨房。


ここが重要。


神殿厨房は忙しい。


しかし、聖務適性者が増えれば避難所炊き出しが強くなる。


料理祭、スローライフ、豊作、ポーション、全部がつながる。


厨房長が出てきた。


大柄な女性。


腕が太い。


目が鋭い。


「聖女候補だか何だか知らんが、厨房に入るなら手を洗え」


強い。


かなり強い。


俺は頷いた。


「正しいです」


厨房長は言った。


「祈りより先に手洗いだ」


セイルが深く頷いた。


「その通りです」


生活支援聖務の標語が決まった。


祈る前に手を洗え。


候補者たちは少し戸惑ったが、厨房長がいるので従った。


アレンが小声で言った。


「強いな」


「厨房長は強い」


ミリアが言う。


「火と水と食材を支配してるものね」


その通りだ。


午後、聖務適性者運用規程がまとまった。


聖務適性者 訓練・施設運用規程 草案


一、正式認定前は聖務適性者と呼ぶ。


二、治癒、浄化、結界、祝福、神託、祈祷補助、生活支援に分類する。


三、祈祷室に全訓練を集中させない。


四、予約枠には準備、実施、記録、清掃、休憩を含める。


五、廊下に並ばせず、受付と待機室を使う。


六、神託確認は静かな部屋で行う。


七、結界演習は広い場所で行う。


八、浄化訓練は水と排水を確認する。


九、生活支援聖務は厨房長の指示に従う。


十、祈る前に手を洗え。


十一、奇跡は予約台帳を飛び越えない。


司祭が十一を見て、少し困った顔をした。


「これ、入れますか」


「入れましょう」


セイルが微笑んだ。


「よい戒めです」


司祭は観念して書いた。


夕方、新しい予約表が貼られた。


祈祷室はまだ混んでいる。


だが、全部がそこへ押し寄せる状態ではなくなった。


治癒室。


結界演習場。


浄化室。


厨房訓練。


記録室。


待機室。


流れができた。


候補者たちも、自分が何をするのか少し見えてきた顔をしていた。


若い候補者がセイルに言った。


「炊き出しでも、聖務なんですね」


セイルは静かに頷いた。


「はい。温かい食事は、人を立たせます」


「頑張ります」


よい。


かなりよい。


アレンは祈祷室の前を見て言った。


「聖女が増えたら、奇跡も増えると思った」


「増えるかもしれない」


俺は言った。


「ただ、部屋と時間と記録も増える」


「そうだな」


「人が増えるとは、そういうことだ」


「勇者も聖女も、増えれば配置がいる」


「その通り」


宿へ戻ると、広報部の女性が待っていた。


今日は白い布を頭にかけていた。


「聖女風です」


「やめてください」


「題名はこちらで!」


紙が出た。


聖女が増えすぎて、祈祷室の予約が取れません


俺は黙った。


リナが笑った。


「そのままですね」


「そのままだな」


ミリアが言う。


「でも、聖女が増えて物置整理になるとは思わなかったわ」


セイルが言う。


「祈りにも場所と休憩が必要です」


ガルドが言う。


「廊下を塞ぐな」


アレンが言う。


「奇跡は予約台帳を飛び越えない」


かなり覚えている。


俺は木札に触れた。


「神よ。今回はどうでしたか」


『よい予約だった』


「聖女回で予約ですか」


『聖なる務めも、時間を使う』


「はい」


『時間を使えば、部屋を使う。部屋を使えば、掃除がいる』


「かなり実務ですね」


『祈りを続けるには、椅子と水と台帳がいる』


「教義ですか」


『奇跡は予約台帳を飛び越えない』


「採用ですね」


『採用』


その夜、荷物台帳に記録した。


聖務適性者運用記録


一、聖女候補を一括りにしない。


二、正式認定前は聖務適性者。


三、治癒、浄化、結界、祝福、神託、祈祷補助、生活支援を分ける。


四、祈祷室に全部入れない。


五、予約枠には清掃と休憩も含める。


六、廊下に並ばせない。


七、物置を整理すると部屋が増える。


八、生活支援も聖務。


九、祈る前に手を洗え。


十、奇跡は予約台帳を飛び越えない。


リナが九を見て言った。


「厨房長さん、強かったですね」


「かなり」


ミリアが言う。


「生活支援も聖務って、いい整理ね」


「セイルのおかげだ」


セイルは静かに首を振った。


「事実を言っただけです」


ガルドが言う。


「結界演習は外でやれ」


「壁が壊れるからな」


アレンが言う。


「勇者も聖女も、呼び名で背負わせすぎないことだな」


「そうだ」


聖剣が光った。


『我にも予約は必要か』


「通路を使うなら」


『聖剣通行予約』


「ありかもしれない」


『冗談だ』


「長いからな」


聖剣は黙った。


こうして俺たちは知った。


聖女が増えるのは、奇跡が増えるだけではなかった。


祈祷室の予約が増える。


監督者が必要になる。


記録が増える。


清掃が必要になる。


廊下が詰まる。


呼び名で揉める。


厨房長が手洗いを命じる。


治癒も、浄化も、結界も、神託も、炊き出しも、同じ部屋ではできない。


聖なる務めにも、場所と時間と台帳がいる。


聖務適性者の分類が作られた。


祈祷室の予約表は分かれた。


物置は二部屋ぶん空いた。


生活支援聖務が認められた。


厨房長は強かった。


物語は、きれいに一区切りを迎えた。


そう。


ここで終わっても、何の問題もない。


俺たちの祈祷室管理は、これからだ。


「祈る前に予約しろよ」


第二部・完

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