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名作をパク――参考にすれば、名作になるに決まってるじゃない!  作者: チンポジ博士


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第41話 ドラゴンを倒したら、解体場所がありません

名作をパク――参考にすれば、名作になるに決まってるじゃない!

第41話 ドラゴンを倒したら、解体場所がありません


「ドラゴンです!」


リナが叫んだ。


俺は黙った。


アレンは剣に手をかけた。


ミリアは杖を握った。


セイルは祈りの姿勢を取った。


ガルドは、もう前に出ていた。


場所は、王都から北東に三日ほど進んだ山間の村。


名前は、ルグ村。


段々畑と石造りの家が並ぶ、静かな村だった。


昨日までは。


今、その静かな村の上空を、巨大な影が旋回している。


赤黒い鱗。


広げた翼。


太い尾。


山羊のような角。


口元から漏れる炎。


どう見てもドラゴンだった。


かなりドラゴンだった。


「見たことあります」


リナが小声で言った。


「言うな」


「でも、これは本当にドラゴンです」


「それは見れば分かる」


「今回は、さすがに物流では済まなさそうですね」


「そうだな」


今回は、済まない。


たぶん。


村人たちは逃げ惑っていた。


家畜小屋から煙が上がっている。


畑の一部は焼けている。


村の中央広場には、倒れた荷車。


子供を抱えた母親が、石壁の陰へ走っていく。


老人が転び、若者が肩を貸している。


悲鳴。


炎。


風。


鱗が空を切る音。


これはもう、書類でも、契約でも、導線整理でも、鍋でもない。


少なくとも、今この瞬間は。


アレンが一歩前に出た。


マントが風に揺れる。


一枚だけのマント。


長い旅の末に、余計な装飾を捨て、それでも残った勇者のマント。


その背中は、いつもより大きく見えた。


「ユート」


アレンが言った。


「何だ」


「村人の退避を頼む」


「分かった」


「ミリアは翼を狙え。飛ばれると追えない」


「了解」


「セイルは村人の防護と治療。結界は広場側に」


「承知しました」


「ガルドは地上に降りた瞬間、脚を止めろ」


「ああ」


「リナは逃げ遅れの確認。煙の向こうに子供がいるかもしれん」


「はい!」


俺は、少しだけアレンを見た。


いつものように格好つけているわけではない。


いつものようにマントを気にしているわけでもない。


声に迷いがなかった。


指示に無駄がなかった。


勇者として、そこに立っていた。


ドラゴンが咆哮した。


空気が震える。


赤い炎が口元に集まる。


「来るぞ!」


アレンが叫んだ。


ドラゴンの口から、炎が放たれた。


村の広場へ向かって、真っすぐに。


アレンが前に出た。


剣を抜く。


普通の剣ではない。


王国公認勇者の剣。


だが、聖剣ではない。


聖剣は俺が背負っている。


いつものように、長くて邪魔で、だが必要な時には光る、あの聖剣だ。


俺は聖剣を抜いた。


「聖剣」


『聞いている』


「アレンに光を」


『よかろう』


聖剣が輝いた。


光が俺の手から走り、アレンの剣へ流れる。


アレンは剣を両手で構えた。


「はああああっ!」


炎と光がぶつかった。


眩しい。


熱い。


地面が焼ける。


石畳が割れる。


だが、炎は広場へ届かなかった。


アレンが受けた。


真正面から。


俺は息を止めた。


リナも、ミリアも、セイルも、ガルドも、一瞬だけ動きを止めた。


村人たちも見ていた。


炎の中に立つ勇者を。


アレンのマントの端が焦げた。


しかし、アレンは退かなかった。


「今だ、ミリア!」


「分かってる!」


ミリアの杖から、炎ではなく圧縮された風刃が飛んだ。


火属性のミリアが、あえて風を使った。


ドラゴンの炎とぶつけないためだ。


風刃はドラゴンの右の翼膜を裂いた。


ドラゴンが空中で大きく揺れる。


「ガルド!」


「任せろ!」


ドラゴンが広場の外れに落ちるように降りた。


地面が揺れた。


家の屋根瓦が落ちる。


ガルドが走る。


剣を抜き、ドラゴンの前脚へ斬り込む。


鱗は硬い。


火花が散る。


だが、ガルドは止まらない。


一撃。


二撃。


三撃。


同じ場所へ叩き込む。


鱗が割れた。


血が噴き出す。


ドラゴンが怒りの咆哮を上げた。


尾が振るわれる。


ガルドが避ける。


その後ろで、セイルの結界が展開された。


逃げ遅れた村人の前に、透明な壁が立つ。


尾は結界にぶつかり、弾かれた。


セイルが歯を食いしばる。


「長くは持ちません!」


「十分だ!」


アレンが走った。


ドラゴンは体勢を崩している。


翼は傷つき、前脚は割られている。


だが、まだ強い。


巨大な顎がアレンへ向く。


「アレン!」


リナが叫んだ。


石壁の陰から子供を抱えて出てきたところだった。


その子供の足は震えている。


リナは子供を抱えたまま、セイルの結界へ走る。


アレンは一瞬、そちらを見た。


そしてドラゴンの視線がリナへ向かう前に、わざと剣を地面に叩きつけた。


聖剣の光を帯びた剣が、石畳を割る。


強い光。


音。


ドラゴンの注意がアレンへ戻る。


「こっちだ」


アレンが言った。


声は低かった。


挑発ではない。


覚悟だった。


「俺が相手だ」


ドラゴンが牙をむいた。


炎がまた口元に集まる。


今度は至近距離。


受ければ、アレンでも危ない。


俺は聖剣を握り直した。


「もう一度いけるか」


『いける』


「アレンが持たないかもしれない」


『ならば、持たせろ』


「どうやって」


『お前は荷物持ちだろう』


聖剣の声は、いつもより静かだった。


『重い光を、必要な場所へ運べ』


「分かった」


俺は聖剣を構えた。


自分で斬るのではない。


俺にはその技量はない。


戦闘力はFだ。


それはもう、ステータスにも出た。


だが、光を送ることはできる。


必要な場所へ、必要な分だけ。


持てる分だけ。


アレンの剣へ。


ミリアの杖へ。


ガルドの刃へ。


セイルの結界へ。


リナの足元へ。


聖剣の光が広がる。


ドラゴンが炎を吐いた。


アレンは剣を振り上げる。


今度は受けるのではない。


斬る。


炎を。


光をまとった剣が、火線を割った。


火が左右に裂ける。


広場の石壁を焦がしながら、村人たちのいる場所だけを避けて流れる。


アレンは炎の中を走った。


本当に走った。


躊躇なく。


マントが燃えかける。


髪が熱で揺れる。


頬に火傷が走る。


それでも止まらない。


「ミリア!」


「もう撃ってる!」


ミリアの風刃が、左翼を裂いた。


「ガルド!」


「ああ!」


ガルドが前脚の傷口へ剣を叩き込んだ。


ドラゴンの体が沈む。


「セイル!」


「道を開きます!」


セイルの結界が、アレンの前だけ薄くなった。


火の残滓が流れる。


その隙間を、アレンが抜ける。


「リナ!」


「目印、つけました!」


リナが投げた小さな刃が、ドラゴンの首元に刺さっていた。


鱗の隙間。


傷ではない。


だが、そこが弱点だと示す印。


アレンは見た。


一瞬で。


そして跳んだ。


ドラゴンの首が迫る。


牙。


炎。


血。


熱。


大きすぎる敵。


人間が挑むには、あまりに大きい。


だが、アレンは跳んだ。


勇者として。


「おおおおおおっ!」


剣が光った。


俺の聖剣から流れた光。


ミリアの風。


ガルドが開いた体勢。


セイルが守った道。


リナが示した目印。


全部を受けて、アレンの剣がドラゴンの首元へ入った。


鱗の隙間。


深く。


真っすぐに。


ドラゴンが咆哮した。


空気が破裂するような音がした。


大きな翼が暴れ、尾が地面を叩き、石が飛ぶ。


アレンは剣を離さない。


「倒れろ!」


アレンが叫んだ。


「ここで、倒れろ!」


剣がさらに深く入る。


ドラゴンの体が大きく傾いた。


地面が揺れる。


そして、山のような巨体が、村の外れへ倒れ込んだ。


轟音。


土煙。


静寂。


しばらく、誰も動かなかった。


風だけが吹いていた。


煙が流れる。


焼けた匂い。


血の匂い。


土の匂い。


そして、ドラゴンは動かなかった。


アレンは、ドラゴンの首元から剣を抜いた。


肩で息をしている。


マントは焦げている。


頬には火傷。


腕にも傷。


だが、立っている。


剣を手に。


村人の誰かが、小さく言った。


「勇者だ」


その声が、広場に広がった。


「勇者様だ!」


「ドラゴンを倒した!」


「村が助かった!」


歓声が上がった。


泣き声も混じっていた。


母親が子供を抱きしめる。


老人が膝をついて祈る。


若者が拳を上げる。


村長らしき男が、涙を流しながらアレンへ走っていく。


「ありがとうございます、勇者様!」


アレンは少し照れたように笑った。


だが、いつもの得意げな顔ではなかった。


本当に疲れている顔だった。


本当に戦った顔だった。


ミリアが肩で息をしながら言った。


「やるじゃない、アレン」


セイルが静かに頭を下げた。


「見事でした」


ガルドが剣を納めた。


「最後の一撃、よかった」


リナが子供を母親へ返しながら、笑顔で言った。


「すごかったです!」


アレンは、少し困ったように笑った。


「みんなのおかげだ」


その言葉も、よかった。


昔のアレンなら、言えなかったかもしれない。


俺は聖剣を鞘に戻した。


聖剣が小さく光る。


『よい一撃だった』


「ああ」


『勇者だったな』


「ああ」


俺はアレンを見た。


村人に囲まれている。


焦げたマント。


傷ついた腕。


血と煤に汚れた顔。


それでも、背筋は伸びている。


俺は、何も言わなかった。


茶化す言葉が浮かばなかった。


本当に。


その瞬間のアレンは、間違いなく勇者だった。


村は救われた。


ドラゴンは倒れた。


子供は助かった。


家畜小屋の火も、ミリアと村人たちが消し始めている。


セイルは負傷者を治療している。


ガルドはまだ周囲を警戒している。


リナは逃げ遅れがいないか確認している。


俺も動くべきだった。


いつもなら、すぐに荷物を見る。


水を見る。


怪我人を見る。


導線を見る。


火を見る。


必要なことを確認する。


だが、その時だけは、少しだけ立ち止まった。


アレンが村人たちに囲まれている姿を見ていた。


勇者という言葉に、やっと本人が追いついたように見えた。


それでよかった。


本当に、よかった。


夕方。


村の空は赤く染まっていた。


火は消えた。


怪我人の手当ても終わった。


村人たちは、まだ興奮していた。


子供たちはアレンを遠巻きに見ている。


老人たちは何度も頭を下げる。


村長は、今夜は宴を開くと言い出した。


アレンは困ったように笑っている。


ミリアは「今日は主役なんだから受けなさい」と言った。


セイルも「村人の安心になります」と言った。


ガルドは「飯は食える時に食うべきだ」と言った。


リナは楽しそうに笑った。


俺も、そうだなと思った。


今日は、アレンの日でいい。


今日は、勇者の勝利でいい。


そう思った。


だから、俺は何も言わなかった。


ただ、少し離れたところに歩いた。


村の外れ。


倒れたドラゴンのそばへ。


山のような死骸が、夕日に照らされていた。


赤黒い鱗。


裂けた翼。


太い尾。


地面に広がる血。


折れた柵。


潰れた畑。


塞がれた道。


焼けた草。


大きすぎる爪。


巨大な牙。


胴体の奥で、まだ熱を持っているだろう魔石。


俺は、それを黙って見つめた。


アレンは勇者だった。


誰が見ても、そうだった。


俺もそう思った。


だから、その日は何も言わなかった。


ただ、歓声の向こうで、俺は倒れたドラゴンを見ていた。


道を塞ぎ、血を流し、夕日に照らされる、山のような死骸を。


物語は、きれいに一区切りを迎えた。


そう。


ここで終わっても、何の問題もない。


俺たちの英雄譚は、これからだ。


「……いや、これどうするんだ」


第二部・完

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