表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名作をパク――参考にすれば、名作になるに決まってるじゃない!  作者: チンポジ博士


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/57

第29話 武闘大会でます。大会運営補助として。

名作をパク――参考にすれば、名作になるに決まってるじゃない!


第29話 武闘大会でます。大会運営補助として。



「王都武闘大会への出場をお願いします!」


冒険者組合の受付嬢は、そう言った。


俺は黙った。


リナも黙った。


勇者アレンは少しだけ目を輝かせた。


ミリアは嫌そうな顔をした。


セイルは穏やかに首を傾げた。


ガルドは、壁に貼られた大会告知を見ていた。


いつも通りだった。


冒険者組合の掲示板には、大きな紙が貼られている。


王都武闘大会開催!

剣士、魔法使い、槍使い、格闘家、冒険者、騎士、実力者求む!

優勝者には王国金杯と賞金!


いかにも大会編。


いかにも強敵が集まりそうな催し。


いかにも途中で事件が起きそうなやつである。


リナが小声で言った。


「見たことあります」


「言うな」


「武闘大会です」


「言うな」


「強敵と戦って勝ち上がるやつです」


「言うな」


「でもユートさんの場合、控室の荷物を見そうですね」


「そこだ」


受付嬢は手元の書類を見ながら続けた。


「王国公認勇者アレン様には、特別招待選手として出場依頼が来ています」


アレンは胸を張った。


「当然だな」


「ミリアさんには魔法部門への招待が」


ミリアは顔をしかめた。


「私、出ないわよ。範囲制御は上げたけど、観客席近くで火力を出すのは嫌」


「賢い」


俺は言った。


受付嬢は続ける。


「ガルドさんにも剣士部門への招待が」


ガルドは短く言った。


「出てもいい」


「セイルさんには救護班協力依頼が」


セイルは頷いた。


「それなら」


「リナさんには会場誘導補助依頼が」


リナも頷く。


「はい」


受付嬢は最後に俺を見た。


「そしてユートさんには、大会運営補助をお願いしたいと」


「運営補助」


「はい」


「荷物関係ですか」


受付嬢は目をそらした。


「はい」


「何が起きています?」


「控室の荷物導線が、少し」


「少し?」


「かなり」


やっぱりだった。


王都武闘大会は、王城近くの大闘技場で行われる。


観客席。


本戦用の円形闘技場。


予選用の小会場。


控室。


武器預かり。


救護所。


貴賓席。


屋台。


荷物置き場。


そして、大量の出場者。


受付嬢から渡された会場図を見る。


俺は三秒で頭を抱えた。


「駄目です」


受付嬢が青ざめる。


「やはり」


「選手入口と観客入口が近すぎる」


「はい」


「武器預かりと救護所の導線が交差している」


「はい」


「控室から試合場へ行く道に荷物置き場がある」


「はい」


「負傷者搬出路と屋台搬入路が同じ」


「はい」


「これで開催する気ですか」


「明後日です」


「明後日」


「はい」


俺は木札に触れた。


「神よ」


頭の中に声が響いた。


『詰まっている』


「見れば分かります」


『導線が絡まっている』


「はい」


『ほどけ』


「明後日です」


『なら急げ』


神も雑だった。


いや、急ぐしかない。


俺たちは大闘技場へ向かった。


巨大な石造りの建物。


入口には大会旗。


作業員が椅子を運び、屋台の商人が場所を取り合い、騎士団員が警備線を張っている。


その横を、出場選手らしき大男が巨大な斧を担いで歩いていた。


危ない。


かなり危ない。


闘技場の事務室には、大会運営委員長がいた。


丸い体格の中年男性。


汗を拭きながら資料を見ている。


「来てくださったか! 助かります!」


「状況は?」


「参加者が想定の三倍に増えました」


「なぜ」


「勇者アレン様の出場が噂になりまして」


アレンが少し得意げになる。


俺は見た。


アレンは目をそらした。


「さらに、鍋の人の銅像効果で補給局の評判が上がり、大会にも補給講習があると誤解されまして」


「誤解?」


「荷物管理に興味を持った冒険者も来ています」


「武闘大会ですよね」


「はい」


「なぜ荷物管理に興味を持った人が」


「最近、王都の冒険者は変わってきています」


それはいいことなのかもしれない。


だが、今は人数が増えている。


問題だ。


まず現場を見る。


選手控室。


ひどい。


剣。


槍。


盾。


防具。


着替え。


弁当。


水袋。


予備靴。


護符。


魔導書。


鞄。


全部が床に置かれている。


通路にも置かれている。


壁にも立てかけられている。


巨大な槍が横向きに置かれていて、完全に通路を塞いでいる。


アレンが言った。


「これは危ないな」


「出場者が言う側に回ったな」


「分かるようになってしまった」


ガルドが槍を見て言う。


「試合前に転ぶ」


ミリアが魔導書を拾い上げる。


「火属性札と弁当を一緒に置いてる。駄目ね」


セイルが救護所への扉を見る。


「負傷者を運ぶ時に、この荷物では通れません」


リナが控室の隅を指さす。


「貴重品箱が誰でも触れる場所にあります」


全部駄目。


かなり駄目。


大会委員長は汗だくだった。


「どうすれば」


「まず、控室を分けます」


俺は言った。


「分ける?」


「競技別、武器別、試合順別です。巨大武器持ちは別室。魔法使いは火気管理室。弁当と魔道具は分離。救護導線を最優先で空ける」


「はい」


「武器預かり札を作る。番号管理。名前だけで管理しない」


「死のノート対策ですか?」


「それもありますが、同姓同名対策です」


「はい」


「選手は、試合前に必要な装備だけ持つ。不要な荷物は預ける」


「はい」


「巨大武器は、通路で横にしない」


「はい」


「屋台搬入路と負傷者搬出路を分ける」


「はい」


「観客の土産物導線と選手動線も分ける」


「はい」


ミリアが言った。


「また線引きね」


「今回は必要な線引きだ」


「確かに」


作業開始。


リナは受付札を作る。


セイルは救護所の位置を確認。


ガルドは巨大武器置き場を作る。


ミリアは魔法使い控室の火気管理を担当。


アレンは選手たちに説明する役。


俺は全体導線を引き直す。


大会委員長は走り回る。


まず、床に色の違う布を敷いた。


赤は選手動線。


青は救護動線。


黄は屋台搬入。


白は観客案内。


混ぜない。


交差する場所には係員を置く。


リナが言った。


「色で分けると分かりやすいですね」


「言葉より速い」


「でも、色が分からない人は?」


「記号もつける」


赤には剣の印。


青には十字。


黄には箱。


白には人の印。


よし。


次に武器預かり。


巨大武器置き場には、三・八メートルの槍があった。


俺は見覚えがあった。


「雷鳴大槍グランヴォルト」


アレンが叫んだ。


「なぜここに!」


受付職員が言う。


「王立武具庫から、展示兼試用品として貸し出されました」


「誰が使うんですか」


「槍術部門の優勝候補が」


その優勝候補が現れた。


筋肉質。


背が高い。


槍使い。


かなり強そう。


「それを試合で使うのですか」


俺は聞いた。


槍使いは胸を張った。


「伝説級装備だ。観客も喜ぶ」


「屋内使用非推奨、雨天注意、絶縁布必須、運搬二名以上、雷を呼ぶことがあります」


槍使いは黙った。


「読みましたか」


「……少し」


「使うなら、専用試合枠、避雷対策、観客席距離、絶縁布、搬出導線が必要です」


大会委員長が青ざめた。


「そんな準備は」


「なら展示のみ」


槍使いは不満そうだったが、アレンが言った。


「持てぬ伝説は置いていけ」


槍使いは勇者に言われて黙った。


グランヴォルトは展示のみになった。


聖剣が背中で光った。


『我は展示されぬのか』


「お前は出場者の装備ではない」


『我も伝説級だ』


「通路の邪魔になる」


『ぐぬ』


次に魔法使い控室。


ミリアが怒っていた。


「火薬、油布、弁当、魔導書、全部同じ机に置いてたわ」


「なぜ弁当が」


「試合前に食べるらしい」


「火薬の横で?」


「だから怒ってるのよ」


ミリアは机を三つに分けた。


食事。


魔道具。


危険物。


さらに、火属性魔法使い用に水桶。


氷属性魔法使い用に防滑布。


雷属性魔法使い用に金属装備注意札。


かなりまともだ。


魔法使いの一人が不満そうに言う。


「試合前にそんな細かいこと」


ミリアは笑顔で言った。


「髪、燃やされたい?」


「分けます」


よし。


次に救護所。


セイルが静かに怒っていた。


珍しい。


「担架が通れません」


「なぜ」


「救護所の前に、優勝賞品の展示台があります」


そこには金杯が置かれていた。


大きい。


かなり大きい。


台座付き。


また重いものだ。


俺は大会委員長を見た。


「なぜ救護所前に」


「見栄えがよくて」


「見栄え枝に振るな」


アレンが少し反応した。


「俺を見るな」


「見てない」


金杯は入口近くの展示スペースへ移動。


救護所前は完全に空ける。


担架導線を青で示す。


救護所には、水、包帯、薬、記録台帳。


セイルが言う。


「負傷者の名前は?」


「番号管理。試合番号で」


「分かりました」


死のノート以降、名前管理が慎重になっている。


よい。


次に観客導線。


リナが困っていた。


「屋台列が、選手入口まで伸びています」


「何の屋台?」


「焼き肉串です」


かなり人気らしい。


匂いが強い。


選手たちも釣られている。


さらに、観客の列と選手の移動が交差している。


駄目。


屋台を移動させる。


屋台商人は不満そうだった。


「ここが売れるんだよ」


「選手導線を塞いでいます」


「少しくらい」


「負傷者が通れません」


商人は黙った。


セイルが静かに立っている。


効果がある。


屋台は黄導線へ移動。


ついでに煙が控室へ入らない位置へ。


焼き肉の匂いは危険だ。


空腹の選手が集中力を失う。


そして、弁当を持ち込む。


弁当がまた魔道具の横へ行く。


防がねばならない。


昼過ぎには、かなり改善された。


控室は分かれた。


武器預かり札ができた。


救護導線は空いた。


屋台と観客導線も分離。


選手入口も整理された。


大会委員長は涙ぐんでいた。


「本当に助かります」


「まだです」


「まだ?」


「当日運用の手順確認」


「はい」


「受付から試合場まで、実際に歩く」


「はい」


「負傷者搬送も模擬で」


「はい」


「巨大武器の搬入出も」


「はい」


「雨天時は?」


委員長が止まった。


「雨天時」


「屋外通路があります」


「……あります」


「滑ります」


「はい」


「防滑布を用意」


「はい」


訓練。


歩く。


荷物を預ける。


札を受け取る。


控室へ行く。


呼び出される。


試合場へ行く。


負傷した場合、救護所へ運ばれる。


武器は誰が戻すか。


貴重品は誰が持つか。


全部確認する。


アレンは選手として試走。


ガルドも試走。


ミリアは魔法使い控室から試合場まで歩く。


セイルは担架経路。


リナは観客誘導。


俺は全部見る。


問題はまだ出る。


選手呼び出しの声が聞こえにくい。


鐘を使う。


鐘だけだと騒音で消える。


色札も使う。


赤札は次試合。


青札は準備。


黒札は中止。


黒札は不吉すぎるので白黒縞へ変更。


担架が角でつかえる。


机をずらす。


貴賓席への階段が狭い。


貴族の付き人の荷物が多い。


付き人荷物置き場を作る。


貴族が不満を言う。


「なぜ私の荷を別に」


俺は言った。


「緊急時に階段が詰まります」


貴族は少し不満そうだったが、王様の銅像の件を知っていたらしい。


「補給局の像の者か」


「はい」


「なら仕方ない」


銅像が効いた。


複雑だ。


大会当日。


朝から人が多い。


選手。


観客。


屋台。


兵士。


審判。


貴族。


子供。


全部が動く。


だが、導線はかなり機能していた。


観客は白導線。


屋台は黄。


選手は赤。


救護は青。


係員が記号札を持つ。


チュートリアル妖精も、なぜか案内役として飛んでいた。


「分からない時は係員に聞こう!」


成長している。


よし。


第一試合。


ガルドが出る。


相手は大剣使い。


ガルドは静かに剣を構える。


試合は短かった。


大剣使いが大振りしたところを、ガルドが足場を見て避け、肩へ軽く打ち込む。


勝ち。


「突入しない勇気、効いてるな」


俺は言った。


ガルドは戻ってきて短く言った。


「導線もよかった」


「何の?」


「試合場まで邪魔がなかった」


そこを見る選手になっている。


次にアレン。


観客が沸く。


勇者登場。


マントは一枚。


かなりよい。


相手は槍使い。


ただしグランヴォルトではなく、普通の槍。


アレンは剣を構える。


試合は見事だった。


アレンは派手に動きすぎず、足場を見て、相手のリーチを捌き、最後に剣の背で槍を押さえた。


勝ち。


観客は歓声を上げた。


アレンは決めポーズを取りかけた。


俺は赤い警告札を上げた。


アレンは止まった。


よし。


決めポーズ安全距離が足りない。


理解している。


だが、問題は第三試合後に起きた。


控室で、選手が一人倒れた。


脱水。


ステータス表示で水分不足が出ていたが、緊張で飲んでいなかったらしい。


救護導線は空いていた。


担架がすぐ通る。


セイルが処置。


水を少しずつ飲ませる。


大事には至らなかった。


「救護導線、空けておいてよかったですね」


リナが言った。


「ああ」


もし金杯が前にあったら、詰まっていた。


金杯より道だ。


午後。


魔法部門の模擬戦で、火属性魔法使いが範囲を誤りかけた。


ミリアが控室前から叫ぶ。


「天井高さ!」


魔法使いは慌てて火球の角度を下げた。


観客席に飛ばず、結界内で収まった。


かなり危なかった。


ミリアはため息をつく。


「やっぱり出なくてよかった」


「出ない判断、正しい」


「でしょ」


夕方、本戦準決勝。


アレン対ガルド。


かなり盛り上がる組み合わせ。


勇者と剣士。


観客は大歓声。


俺は少し緊張した。


仲間同士の試合は難しい。


怪我をしないか。


熱くなりすぎないか。


荷物はちゃんと預けたか。


そこか。


いや、そこも大事だ。


二人は向かい合う。


アレンは言った。


「本気で行く」


ガルドは頷いた。


「来い」


試合開始。


剣がぶつかる。


速い。


かなり速い。


アレンは勇者らしく正面から攻める。


ガルドは受け流す。


以前なら、ガルドは強く踏み込んだかもしれない。


だが、今は足場と撤退線を見る。


アレンも、見栄えより間合いを優先している。


良い試合だった。


最後は、アレンが一歩踏み込み、ガルドの剣を弾いた。


アレン勝利。


観客が沸く。


ガルドは悔しそうだったが、頷いた。


「強いな」


「お前もな」


勇者っぽい。


かなり勇者っぽい。


だが、アレンが勝利後の大きなポーズを取りかける。


俺は警告札を上げる。


アレンは一瞬こちらを見て、控えめに剣を掲げた。


安全距離内。


観客は十分に沸いた。


見栄えは、距離を守っても成立する。


よい。


決勝。


アレン対王都騎士団の若手隊長。


熱戦だった。


剣と剣。


盾と回避。


勇者と騎士。


観客は立ち上がる。


最後はアレンが相手の盾を弾き、剣を首元で止めた。


優勝。


王都武闘大会、勇者アレン優勝。


観客は大歓声。


アレンは今度こそ決めポーズを取った。


ただし、事前に決めた安全位置で。


マント一枚。


周囲に物なし。


距離よし。


かなり良い。


俺は少しだけ拍手した。


リナは嬉しそうに拍手している。


ミリアも笑っている。


セイルは穏やかに拍手。


ガルドも静かに拍手。


大会は無事に終わった。


いや、正確には負傷者は出た。


打撲、切り傷、脱水、軽い捻挫。


だが、大事故はなかった。


武器紛失もなし。


控室火災なし。


屋台煙害なし。


貴族階段詰まりなし。


救護導線は最後まで空いていた。


かなり成功だ。


表彰式。


アレンは金杯を受け取った。


大きい。


重そう。


俺は見た。


アレンも見た。


金杯には台座がある。


持ち歩きにくい。


アレンはしばらく黙ってから、委員長に言った。


「この金杯は、王都冒険者組合に預けたい」


委員長が驚く。


「よろしいのですか?」


「訓練場に置いてくれ。銘文は、突入する前に撤退路を見よ、で頼む」


俺は少し驚いた。


アレンは本当に成長していた。


ミリアが小声で言う。


「勇者、銅像回から影響受けてるわね」


「かなり」


金杯は組合訓練場に置かれることになった。


かなりよい。


大会後、委員長は深々と頭を下げた。


「皆様のおかげで、大会を無事に終えられました」


「導線は来年も使えます」


俺は言った。


「はい。記録も残しました」


「更新してください」


「もちろんです」


「次回は、初めから屋台と救護を分ける」


「はい」


「巨大武器展示は事前申請」


「はい」


「魔法使い控室に火薬を置かない」


「はい」


「決めポーズ安全距離」


「はい」


アレンが少し咳をした。


「それは必要だ」


本当に必要だ。


夜、宿に戻ると、広報部の女性が待っていた。


もう驚かない。


「聞きました! 武闘大会、大成功だったそうですね!」


「選手が頑張りました」


「運営も頑張りました!」


「それはそうです」


「題名はこれで!」


紙が出た。


武闘大会、控室の荷物導線が終わっています


「終わっていました、のほうが正確です」


俺は言った。


「改善後なので」


「では、修正版を」


広報部の女性が書き直す。


武闘大会、控室の荷物導線が終わっていたので直しました


ミリアが笑う。


「そのまますぎる」


「最近ずっとそうです」


アレンが言った。


「俺の優勝は?」


「もちろん書きます」


広報部の女性が言った。


「ただ、読者は決めポーズ安全距離も気にすると思います」


アレンは少し黙った。


「そこも重要だ」


本当に変わった。


俺は木札に触れた。


「神よ。今回はどうでしたか」


『よい導線だった』


「武闘大会なのに、導線回でした」


『武を競う場ほど、裏の導線が命を守る』


「はい」


『強者が集まるほど、荷物も武器も増える』


「はい」


『武器が強いほど、置き場所を決めよ』


「教義ですか」


『採用』


「多いですね、教義」


『大会は事故が多いのでな』


神も大会運営には厳しいらしい。


その夜、俺は大会運営記録を台帳にまとめた。


王都武闘大会運営記録


一、選手・観客・救護・屋台の導線を分ける。


二、控室に荷物を置かせすぎない。


三、巨大武器は事前申請。


四、魔法使い控室は火気分離。


五、救護導線は絶対に塞がない。


六、金杯より担架の道。


七、決めポーズには安全距離。


八、弁当と火薬を同じ机に置かない。


九、観客の焼き肉串は選手入口から離す。


十、武闘大会は運営も戦っている。


リナが覗き込む。


「十、いいですね」


「実感だ」


ミリアが言う。


「本当に、選手より先に運営が倒れそうだったわね」


セイルが頷く。


「救護所が機能したのは大きかったです」


ガルドが言う。


「試合場まで邪魔がないのは重要だ」


アレンが金杯の預かり証を見ながら言った。


「優勝したが、持ち帰らなかった」


「良い判断だ」


「少し寂しい」


「訓練場で意味を持つ」


「そうだな」


聖剣が光った。


『我も大会に出たかった』


「長い」


『またか』


「観客席に当たる」


『ぐぬ』


こうして俺たちは知った。


武闘大会は、試合だけでできているわけではなかった。


控室。


荷物置き場。


武器預かり。


救護導線。


屋台搬入。


観客誘導。


貴族の付き人の荷物。


決めポーズの安全距離。


それらが整って初めて、選手は安心して戦える。


強者が集まる場ほど、武器も荷物も増える。


だから、戦う前に置き場所を決めなければならない。


アレンは優勝した。


ガルドは準決勝まで進んだ。


ミリアは火災を防いだ。


セイルは救護所を守った。


リナは観客を迷わせなかった。


俺は控室の荷物をどかした。


金杯は訓練場に置かれることになった。


物語は、きれいに一区切りを迎えた。


そう。


ここで終わっても、何の問題もない。


俺たちの大会運営は、これからだ。


「救護導線を塞ぐなよ」


第二部・完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ