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名作をパク――参考にすれば、名作になるに決まってるじゃない!  作者: チンポジ博士


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第2話 契約を迫る小動物が来ました

名作をパク――参考にすれば、名作になるに決まってるじゃない!


第2話 契約を迫る小動物が来ました


「僕と契約して、魔法少女になってよ」


白い小動物が、そう言った。


俺は黙った。


リナも黙った。


風が吹いた。


草原の真ん中で、白い小動物だけが妙にきらきらした目をしている。


耳は長い。


尻尾は丸い。


毛並みは白い。


見た目は愛らしい。


だが、口から出てきた言葉が不穏すぎた。


「……今、何て言った?」


俺は確認した。


白い小動物は、にこりと笑った。


「僕と契約して、魔法少女になってよ」


「二回言ったな」


「大事なことだからね」


「大事なことを二回言うやつは、だいたい信用できない」


「ひどいなあ」


リナが俺の袖を引っ張った。


「ユートさん」


「何だ」


「これ、たぶん見たことあるやつです」


「言うな」


「でも、かなり見たことあります」


「分かっている。だから慎重に処理する」


「処理って言いました?」


「言った」


俺たちは昨日、伝説の宝珠を八つ集めた。


正確には、村内に分散保管されていた重量物を回収した。


願いを叶える竜も出た。


願いも叶った。


俺は宝珠を軽くしてもらった。


そして宝珠は消えた。


願いを叶える秘宝だったのに、運用前に消えた。


返品不能だった。


その翌日である。


次の村へ向かう途中の草原で、俺たちは白い小動物に出会った。


小動物は道の真ん中に座っていた。


まるで俺たちを待っていたかのように。


そして開口一番、契約を迫ってきた。


かなり危ない。


「まず聞く」


俺は白い小動物の前にしゃがんだ。


「お前は何だ?」


「僕はキュルル」


「名前がもう危ない」


「危ない?」


「いや、こっちの話だ」


キュルルは首を傾げた。


「僕は、願いを持つ者に奇跡を与える営業獣だよ」


「営業獣」


「そう。契約によって、君たちは魔法少女になれる」


「俺、男だけど」


「近年は多様性に配慮している」


「便利な時代になったな」


「魔法少年でも、魔法中年でも、魔法荷物持ちでもいいよ」


「最後だけ職業が混ざっている」


リナがキュルルをまじまじと見た。


「魔法少女になると、何ができるんですか?」


「願いを一つ叶える代わりに、魔法の力を授けるよ。そして世界に散らばる災厄と戦ってもらう」


「昨日も願いを叶えるやつをやりましたね」


「昨日のは宝珠だ。今日は契約だ」


「願いの供給が多いですね、この世界」


「名作には願いが必要だからな」


「今、何か言いました?」


「参考だ」


俺は立ち上がった。


「それで、契約とは具体的に何だ?」


「簡単だよ。僕と契約すると、君の願いが一つ叶う。そして君は魔法少女になる」


「契約書は?」


キュルルの表情が止まった。


「え?」


「契約書だ。あるだろう」


「いや、普通はその場の勢いで」


「普通とは何だ」


「願いを叶えたい強い気持ちとか」


「気持ちだけで契約するな」


「でも、夢と希望が」


「夢と希望に署名欄はない」


リナがうなずいた。


「確かに。契約なら契約書は必要ですね」


キュルルは困ったように尻尾を揺らした。


「うーん。君たち、思ったより現実的だね」


「昨日、願いを叶える宝珠を軽量化に使ったからな」


「あれ、君たちだったんだ」


「知っているのか?」


「業界で少し話題になっているよ。どんな願いでも叶う機会を、不用品回収の効率化に使った人間がいるって」


「正確には、運搬可能化だ」


「どちらでも、だいぶ地味だよ」


俺は手を出した。


「契約書を出せ」


「本当に読むの?」


「読む」


「全部?」


「全部」


「細かい文字も?」


「当然だ」


キュルルはしばらく俺を見つめていた。


やがて、観念したように口を開いた。


その口から、紙束が出てきた。


一枚。


二枚。


十枚。


五十枚。


百枚。


どさどさどさどさ、と草の上に分厚い書類が積み上がる。


リナが一歩下がった。


「多くないですか?」


「契約だからね」


「さっき、勢いでやらせようとしていませんでした?」


キュルルは目をそらした。


「細かいことは、契約後に説明する予定だったんだ」


「それは細かいことではない」


俺は紙束を手に取った。


表紙にはこう書かれている。


魔法少女契約基本約款

災厄討伐業務委託契約書

願望実現サービス利用規約


厚い。


題名だけで疲れる。


「リナ。野営の準備をしろ」


「ここで読むんですか?」


「ここで読む」


「先に進まないんですか?」


「契約前確認は旅より優先だ」


キュルルが焦った。


「いやいや、草原の真ん中で読むものじゃないよ」


「じゃあ、どこで読むんだ?」


「もっとこう、夜の屋上とか、夕焼けの河川敷とか、心が揺れている瞬間とか」


「契約に不向きな場所ばかりだな」


「雰囲気は大事だよ」


「契約に必要なのは雰囲気ではなく、条文だ」


俺は草の上に腰を下ろした。


荷物から筆記具と栞を取り出す。


リナが小さな鍋を出し、火を起こした。


キュルルが目を丸くする。


「本当に読む気だ」


「読むと言った」


「ちなみに要約すると、願いが叶って、魔法少女になって、災厄と戦う契約だよ」


「要約は売る側の都合で削られる」


「君、冒険者というより法務部だね」


「荷物持ちだ。荷物には紙も含まれる」


俺は契約書を読み始めた。


第一条、契約の目的。


第二条、用語の定義。


第三条、願望実現サービスの範囲。


第四条、魔法少女資格。


第五条、災厄討伐義務。


第六条、衣装および装備品の貸与条件。


第七条、変身中の物損責任。


第八条、精神的損耗の免責。


第九条、途中解約。


第十条、違約金。


「待て」


俺は顔を上げた。


「第十条に、違約金とあるが」


キュルルはにこにこしている。


「契約だからね」


「途中でやめた場合、違約金として金貨三千枚、または魂の輝き相当額を支払うものとする」


「うん」


「魂の輝き相当額とは?」


「個人差があるね」


「怖すぎる」


リナが鍋をかき混ぜながら言った。


「金貨三千枚って、家が建ちますよ」


「家どころか、小さい宿が建つ」


「でも、願いが叶うんだよ?」


キュルルが言う。


「金貨三千枚くらい、安いものじゃないかな」


「安くない」


「夢の値段だよ」


「夢に利息をつけるな」


俺は読み進めた。


第十一条、戦闘中の負傷。


第十二条、医療費。


第十三条、変身衣装の修繕。


第十四条、魔法杖の紛失。


第十五条、マスコット同行費用。


「待て」


また顔を上げる。


「マスコット同行費用とは?」


キュルルが胸を張る。


「僕の交通費と食費だよ」


「こっち持ちか?」


「契約者負担だね」


「お前、営業側だろう」


「契約後はサポートマスコットだから」


「立場の変更が早い」


リナがキュルルを見る。


「キュルルさん、何を食べるんですか?」


「主に星砂糖と月露だよ」


「高そう」


「高いよ」


「こっち持ちか」


「契約者負担だね」


俺は契約書をめくった。


第二十条、災厄討伐活動における補償。


第二十一条、活動不能時の扱い。


第二十二条、秘密保持義務。


第二十三条、肖像利用。


「肖像利用?」


キュルルが目をそらした。


「魔法少女活動は、広報にも使うから」


「勝手に使うのか?」


「契約上は許諾を得る形だよ」


「この条文だと、契約時点で包括許諾になっている」


「よく読んでるね」


「読むと言った」


「読まない子のほうが多いんだけどなあ」


「そういう営業スタイルをやめろ」


リナが感心したように言った。


「ユートさん、契約書を読むの得意なんですね」


「得意ではない。読むしかないだけだ」


「私は途中で眠くなりそうです」


「眠くなるように書いてある」


「そうなんですか?」


「たぶんな」


キュルルが抗議した。


「そんな悪意はないよ。伝統的な文体なんだ」


「伝統的に読みにくいのは罪だ」


俺はさらに読み進めた。


第三十条、願望実現の制限。


ここが本丸だ。


「キュルル」


「何かな?」


「どんな願いでも叶うと言ったな」


「言ったよ」


「第三十条に、願望実現には審査があり、世界秩序、因果律、神界規則、営業獣協会規定、公序良俗、契約管理部門の判断により、全部または一部が不承認となる場合がある、と書いてある」


「うん」


「どんな願いでも、ではないな」


「だいたいどんな願いでも」


「だいたいを省くな」


「でも、だいたい叶うよ」


「例えば?」


「お菓子がほしいとか」


「小さい」


「きれいになりたいとか」


「範囲が曖昧」


「好きな人に振り向いてほしいとか」


「他人の意思への介入は?」


キュルルは少し黙った。


「審査だね」


「やっぱり」


俺は契約書を閉じた。


すでに日は傾き始めていた。


リナが作ったスープは三杯目に入っている。


キュルルは途中から退屈そうに草をつついていた。


「結論を言う」


「うん」


「契約しない」


キュルルは目を見開いた。


「どうして!?」


「約款が悪い」


「そこ!?」


「願いの範囲は曖昧。義務は重い。費用負担はこちら。途中解約は高額。肖像利用は包括。精神的損耗は免責。マスコットの食費まで契約者負担。契約しない理由しかない」


「でも、魔法少女になれるんだよ?」


「ならなくていい」


「変身できるんだよ?」


「衣装ケースが増える」


「魔法が使えるんだよ?」


「杖の紛失リスクがある」


「夢がない!」


「契約には夢より責任がある」


キュルルは震えた。


白い毛が逆立つ。


「そんな……。今まで、ここまで読まれたことなかったのに」


「読まれないことを前提にするな」


「だって、普通は願いの話をすると目が輝くんだよ。契約書なんて誰も見ないんだ」


「だから問題が起きる」


リナがスープの器をキュルルに差し出した。


「飲みます?」


「ありがとう……」


キュルルはしょんぼりしながらスープを飲んだ。


かわいそうではある。


だが契約は別だ。


俺は神の木札に手を当てた。


「神よ」


頭の中に声が響く。


『聞いていた』


「どう思いますか」


『荷が重い』


「ですよね」


『契約とは、目に見えぬ荷である』


「ありがたいお言葉です」


『持てる分だけ持て』


「はい」


『持てぬ契約は置いていけ』


「はい」


『あと、その獣を背負うな。食費が高い』


「そこも見てましたか」


キュルルが耳をぴくりと動かした。


「今、神様と話してる?」


「話してる」


「何て?」


「お前の食費が高いって」


「神様ひどい」


「月露とか食うからだ」


「体質だよ」


「なら体質に合わせて契約書に明記しろ」


「してあるよ」


「してあるから断った」


リナがふと思いついたように言った。


「でも、キュルルさんも営業ノルマとかあるんですか?」


キュルルの目が泳いだ。


「少しだけ」


「少し?」


「今月中に三件」


「あと何件ですか?」


「三件」


「ゼロじゃないですか」


「今日が月末なんだ」


「詰んでますね」


キュルルは草の上にぺたんと座り込んだ。


「このままだと、営業獣協会に戻れない」


「戻れない?」


「未達成営業獣は、再研修に送られるんだ」


「それは普通では?」


「三日間、契約ロールプレイをやらされる」


「普通に研修だな」


「先輩役が怖いんだよ」


「それは会社の問題だ」


「会社じゃないよ。協会だよ」


「なお悪い」


リナが俺を見る。


「どうします?」


「どうするとは?」


「このままだとキュルルさん、困るみたいです」


「だが契約はしない」


「それはそうですね」


俺は少し考えた。


目の前には、契約を迫る白い営業獣。


見た目はかわいい。


契約は重い。


願いは審査制。


食費は高い。


放っておくと再研修。


助ける義理はない。


だが、俺には荷物の神の加護がある。


そして加護は、だいたい面倒事を連れてくる。


「キュルル」


「何?」


「契約を取る以外に、今月のノルマを達成する方法はないのか?」


キュルルは耳を垂らした。


「契約見込み客の紹介でも一件扱いになる」


「見込み客?」


「願いが強くて、契約説明を聞く意思がある人」


俺は周囲を見た。


草原。


道。


遠くに小さな村。


その村の入口に、看板が見える。


今月の願掛け祭り開催中


俺は無言で看板を指さした。


キュルルも見た。


リナも見た。


風が吹いた。


キュルルの目が輝いた。


「願掛け祭り……!」


「見込み客だらけでは?」


「神よ」


俺は木札に触れた。


『近くに願いを持つ者が集まっている』


「相変わらず地味に有用」


『ただし契約は勧めるな』


「分かっています」


『説明会にしろ』


「神様、コンプライアンスに詳しいですね」


『契約は荷である。荷の重さを知らせずに背負わせるな』


「まともだ」


俺たちはキュルルを連れて、願掛け祭りの村へ向かった。


村では、色とりどりの短冊が木に結ばれていた。


人々が願いを書き、豊穣神の祠に祈っている。


金持ちになりたい。


病気が治ってほしい。


恋が実ってほしい。


畑が豊作になりますように。


飼い猫が帰ってきますように。


願いは山ほどあった。


キュルルは震えた。


「すごい。見込み客がいっぱいだ」


「落ち着け」


俺はキュルルの首根っこをつかんだ。


「契約を迫るな」


「でも」


「まず説明会だ」


「説明会?」


「魔法少女契約とは何か。願いの範囲。費用負担。活動義務。解約条件。全部説明する」


「そんなことしたら、誰も契約しないよ」


「それでいい」


「よくないよ!」


「よくない契約は成立しないほうがいい」


リナが村の広場に立て札を立てた。


魔法少女契約説明会

願いを叶える前に約款を読みましょう

参加無料・契約不要


村人たちは興味津々で集まってきた。


「願いが叶うって本当か?」


「魔法少女って何だ?」


「年齢制限はあるのか?」


「男でもいいのか?」


「衣装代は?」


「途中でやめられるのか?」


質問が飛び交う。


キュルルは最初こそ戸惑っていた。


だが、やがて資料を配り始めた。


「ええと、願望実現には審査があります。魔法少女活動には災厄討伐義務が伴います。衣装破損は原則自己負担です。マスコット同行費用については別紙三を確認してください」


村人たちはざわついた。


「思ったより大変だな」


「願いだけ叶えてもらえるわけじゃないのか」


「衣装破損自己負担は嫌だな」


「災厄って何だ?」


「月露って高いぞ」


「契約前に聞けてよかった」


キュルルの耳がしおれていく。


「やっぱり誰も契約しない……」


だが、その時、一人の老人が手を上げた。


「わし、契約はせんが、話は聞けてよかった」


「え?」


「孫がうっかり契約しそうな性格でな。先に知れて助かった」


別の女性も言った。


「うちの娘にも説明しておくわ」


若い男も言った。


「契約書の読み方って大事なんだな」


祭りの主催者が近づいてきた。


「君たち、この説明会を明日もやってくれないか? 願掛け祭りにちょうどいい。願いには責任が伴う、という教育企画になる」


キュルルはぽかんとした。


「教育企画」


俺はうなずいた。


「見込み客紹介ではないが、啓発活動として評価されるかもしれない」


「協会が認めるかな」


「報告書を書け」


「報告書?」


「契約獲得ではなく、契約トラブル防止活動として提出する。参加者数、配布資料数、質問件数、契約回避件数。全部記録する」


キュルルは震える声で言った。


「君、本当に冒険者?」


「荷物持ちだ。紙も持つ」


その夜、俺たちは村の広場の隅で報告書を書いた。


キュルルが口述し、俺が文章を整え、リナが参加者数を数えた。


願掛け祭り参加者、百二十七名。

契約説明会参加者、八十三名。

契約希望者、ゼロ名。

契約回避者、たぶん多数。

トラブル防止効果、高。


キュルルは不安そうだった。


「こんなので通るかな」


「通るかどうかは分からん」


「通らなかったら?」


「再研修だ」


「やだ」


「だが、少なくとも契約被害は出なかった」


「被害って言わないでよ」


「重い契約を軽く見せるのは、被害の入口だ」


キュルルは黙った。


しばらくして、小さく言った。


「僕、今まで契約を取ることしか考えていなかったかも」


「営業獣だからな」


「でも、契約した後で困る子もいたのかな」


「いただろうな」


「そっか」


キュルルは夜空を見上げた。


白い毛が月明かりに光っている。


その姿だけ見れば、本当に神秘的なマスコットだった。


口を開かなければ。


「ねえ、ユート」


「何だ」


「僕、明日から説明をちゃんとするよ」


「そうしろ」


「契約書も先に渡す」


「当然だ」


「月露の食費も大きく書く」


「それはかなり大事だ」


「途中解約の違約金も」


「そこを小さく書くな」


キュルルはこくりとうなずいた。


「ありがとう。君たちは契約してくれなかったけど、僕に大事なことを教えてくれた」


「契約しない客から学ぶこともある」


「深いね」


「いや、普通だ」


翌朝。


キュルルのもとに、営業獣協会から返答が届いた。


空から一枚の紙が降ってきた。


俺たちはそれを拾った。


契約トラブル防止啓発活動として評価する。

今月ノルマ三件のうち、一件相当として扱う。

ただし契約獲得ではないため、残り二件については来月へ繰越。

再研修は免除。


キュルルは跳び上がった。


「再研修免除!」


「よかったですね」


リナが笑った。


俺は紙を見た。


「残り二件、来月へ繰越だが」


キュルルは聞こえないふりをした。


「再研修免除!」


「都合の悪いところを読むな」


「今日は読まない!」


「お前、契約書を読ませる側だろ」


キュルルは俺たちの周りをくるくる走った。


「ありがとう、ユート! ありがとう、リナ!」


「もう契約を迫るなよ」


「迫らない。説明する」


「よし」


「でも、もし魔法少女になりたくなったら、いつでも言ってね」


「ならない」


「魔法荷物持ちでもいいよ」


「ならない」


「衣装は背負い袋モチーフにできるよ」


「ちょっと見たいですね」


リナが言った。


「見るな」


「タライの髪飾りとか」


「やめろ」


「決め台詞は、持てる分だけ持て!」


「やめろ」


キュルルが目を輝かせた。


「いいね、それ! 商品化できるかも!」


「するな」


俺は荷物を背負った。


木札に触れる。


「神よ。今回もありがとうございました」


頭の中に声が響いた。


『契約の荷を下ろせたな』


「はい」


『願いは軽く見える。だが契約は重い』


「覚えておきます」


『契約とは、目に見えぬ荷である』


「今回の教義ですか」


『採用』


「重いですね」


『契約だからな』


「はい」


『あと、魔法荷物持ちは少し気になる』


「神様?」


『タライの髪飾りは悪くない』


「そっちに乗らないでください」


リナが楽しそうに俺を見る。


「ユートさん、変身しないんですか?」


「しない」


「似合うかもしれませんよ」


「何が?」


「背負い袋モチーフの魔法衣装」


「俺は冒険者だ」


「魔法冒険者」


「違う」


「魔法荷物持ち」


「違う」


「魔法物流男子」


「職種を増やすな」


キュルルが道の脇で手を振った。


「また会おうね!」


「ああ。ただし契約はしない」


「説明会なら呼んでね!」


「それなら考える」


俺たちは村を出た。


こうして俺たちは知った。


願いは、叶える前が一番軽く見える。


けれど、その願いに契約がついた瞬間、それは背負うべき荷になる。


契約は、紙だけでできているわけではなかった。


願いがある。


義務がある。


費用がある。


違約金がある。


解約条件がある。


読みにくい約款がある。


そして、契約後に背負う生活がある。


読まずに背負えば、いつか腰を壊す。


だから俺たちは、夢の前に約款を読む。


希望の前に費用を見る。


奇跡の前に解約条件を確認する。


それが、持てる分だけ持つということだった。


白い営業獣は去った。


魔法少女契約は成立しなかった。


村では説明会が好評だった。


キュルルは再研修を免れた。


ただし、ノルマは来月へ繰り越された。


物語は、きれいに一区切りを迎えた。


そう。


ここで終わっても、何の問題もない。


俺たちの契約確認は、これからだ。


「だから読めよ」


第二部・完

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