舞踏会
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楽しんでいただけると幸いです。
王への謁見から2週間後、舞踏会の招待状がノエル家に届いた。ノエル卿はそれを読み、ふむ、と葉巻をくわえた。
今回はアリーにもぜひ参加してほしいという申し出と、王国中の貴族を集めた大規模な舞踏会になるらしい。ノエル卿は差出人を確認し、晩餐の席で言うかと考えた。この相手ならばアリーも出るだろう。
「アッカーソン公爵家主催の舞踏会が近々開催されるそうだ。アリー、君にも出て欲しいとの直々のお願いだ」
「アッカーソン?ああ、いいわよ」
アリーはすぐに承諾し白身魚のソテーを静かに食べていた。キャロラインやドゥエックは喜んだ。特にドゥエックは軍から制服が送られてきたためにそれを着ると誇らしそうに言った。
2人は結局勉強もなにも行わず、舞踏会や友達とのカードゲームや買い物などの遊びばかりをしていた。アリーが何も言わなかったせいもある。2人は王の言葉をすっかり忘れていた。
舞踏会の日、キャロラインは念入りに風呂に入り、髪を結い、とっておきの1点物のピンクのドレスを着て馬車に乗った。
馬車に乗る時にちょうどアリーが出てきたが、彼女は身体の線が出る濃い紫のタイトドレスにダイヤのネックレスと白い長手袋を身につけていた。
キャロラインは内心あれでは誰にも相手にされないと笑い、扉を閉めてもらった。
会場はこれまでにないほど華やかだった。
侯爵家ではあるが、それ以上の階級ーーたとえば公爵や大公爵にはなかなかお会いできない。キャロラインはどうにかして彼らの娘たちと仲良くなろうと近寄ろうとした。
そしてそれは軍服を着たドゥエックも同じだった。今回は軍の上層部の者もいる。ここで名を売っておこうとドゥエックは考えていた。
その時に「おお」という声がして振り向くと、アリーが煙草を吸いながら気だるそうに入ってきた。人々は口々に言った。
「戦女神よ」
「まあ素敵。アリー様よね?あの最年少で少佐になったという」
「スティーブン王陛下のお気に入りの」
「実際にみたけれど、とても勇ましくて素敵だわ」
アリーは給仕人が持っていたガラス製の灰皿に煙草をもみ消すと、シャンパンを1つ取りグ、と飲み干してからのグラスを銀の盆に置いた。
そしてゆっくり歩いていくとキャロラインやドゥエックの近くにいた公爵家の人間も大公爵の人間も皆アリーの方へ行ってしまった。2人は呆然とした。
「少佐、本日はまた麗しく」
「あなたの娘のプレシャスもね。オールストン公爵、お久しぶり。この間は武器提供をありがとう。おかげで敵を殲滅できたわ」
「それはよかった。陛下には...」
「もちろん伝えてあるわ。オールストン製の銃と剣は最高だとね。ーー今後忙しくなると思うからよろしく。陛下が個人的に使いたがっていたから」
「それは素晴らしい。特注品を造らなければ」
「お久しぶり、バーナーズ大公爵。この間は物資提供をありがとう。おかげで補給戦で命拾いしたわ」
「いえいえ、国の為、これくらいは当然です」
「今度お兄様のスティーブン王陛下があなたにお会いしたいそうよ。2人で内密の話があるそう」
「ほう、では向かわなくてはな。そういえばアリー、君はそろそろ結婚は?」
「まだ退役するには早いわ」
アリーは公爵や大公爵とあろうことか敬語も使わずに友達のように話していた。そこにキャロラインとドゥエックが割入った。
「アリーお姉様、わたくしたちのことも皆様にご紹介なさって。約束していたのにひどいわ」
キャロラインが猫なで声でアリーの腕に腕を絡みつけて言うと、アリーは虫を見るような目で見、皆に紹介した。
「オールストン公爵、バーナーズ大公爵、こちら、私の妹のキャロライン・ノエルよ。こっちはドゥエック・ノエル。ドゥエックは19歳だけど陛下の希望で近々軍に入って新兵訓練をする予定よ。キャロラインは、そうね、私は何も知らないわ。仲良くした記憶がないからね。だから詳しいことはそこにいる父のアーノルド・ノエルに聞いて」
アリーはそう言うと腕を引きはがすように離し、「では私は失礼」とバーの方へ行った。話を振られたノエル卿はここぞとばかりにドゥエックやキャロラインを紹介した。
その時にオールストン公爵もバーナーズ大公爵も特有の笑みを浮かべていることにノエル家の人間は誰も気づかなかった。
特有とは、『お前たちは我々の為にどのように役に立つ?』という品定めの笑みである。




