報復
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楽しんでいただけると幸いです。
祖母の形見の品を遺産相続の書類以外すべて持ち出し、庭で焼き始めたメイド長を見て、ノエル家の人間は驚いた。ノエル卿が「なにをしている?!」と彼女に聞くとメイド長は血走った眼で叫んだ。
「アリー様のご命令でマリアンナ様の形見の品をすべて処分しているのです!止めないでください!もう2発も撃たれているんですよ?!命令に背いたら殺される!」
メイド長は半狂乱になって肖像画や写真や宝石類や手紙やお気に入りの本、そしてアリー以外の人間が写っているアルバムもすべて火の中に投げ入れた。
ノエル卿は彼女の血のにじむ服を見て言っていることは本当だと頭を抱え、セシリアは顔に手をやり、ドゥエックは両手を握りしめ、キャロラインは「やめてよ」と泣いた。
誰しもがこの光景を止めることはできなかった。メイドたちは噂し、メイド長のほかに庭師も料理長も撃たれたと知り、次は自分ではありませんようにと祈った。後ろ暗いことをしたことがある人間ほど怯えた。
アリーの命令で祖母の形見をすべて焼却処分されて怒ったのはキャロラインだった。キャロラインは祖母のお気に入りでとても可愛がられていた。
文句を言うためにアリーのいる部屋に行くとキャロラインは息が止まった。アリーは着替え中で身体中に弾痕や傷が散らばっていた。ふとキャロラインに気づいたアリーは馬鹿にするように笑った。
「あら、碌な教育もされていないバカ娘はノックもできないのね」
「ーーーッ」
「とっとと出て行きな。豚娘」
この国で最も汚い言葉で侮辱されたキャロラインは顔を赤くし走って行った。アリーはソフィアに「ドアを閉めておいで」と言い、新しい服に着替えた。
黒いドレスでシックだが身体の線が出てなかなかいい。アリーは7年間の軍隊生活で趣味がすべて変わっていた。リボンもレースもバカな女が付けるものだと考えていた。
本当はスーツが着たい。パンツルックの方が歩きやすい。靴も革靴がいい。ヒールは面倒だ。
しかしまあ3か月の我慢だと自分に言い聞かせていた。ドゥエックの配属先を決めればいいだけだ。それでいい。
晩餐の席でノエル卿はアリーに尋ねた。
「アリー、祖母の件だが」
「ああ、見せしめにはなったでしょう?あのクソババアにも制裁は加えないとね。数か月もすれば皆あのクソババアの顔も名前も忘れて行くわ。思い出す要素を排除したからね」
「その、あの時は止めれずにすまな...」
「お前も愉しんでいただろ?今更謝罪などいらない。それで?ドゥエックとキャロラインの勉強は?12時間やれって言ったわよね?」
「あ、ああ、今家庭教師を探している」
「それじゃあ間に合わない。どれだけバカでも文字くらいは読めるでしょ?暗記させて。まずはそこからよ。週約80時間、あるいは100時間やればどんなバカでもそれなりに上達はするだろ。ーードゥエックの希望が軍のトイレ掃除でない限りはね」
アリーはそう言ってワインを飲んだ。料理長と庭師とメイド長は今手当を受けている。
彼らは正直辞めたがっていたがアリーが彼らの住所や家族構成、もしかすると家系図までを知っている可能性があるために彼らは引き続きこの屋敷で働くことにした。
家族になにかあればたまったものではない。




