お付きのメイド
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楽しんでいただけると幸いです。
「ーーふん、笑っちまうわね」
翌朝早速ドゥエックとキャロラインの成績を父親から見せてもらい、アリーは両切り煙草の煙を吐きながら面白くなさそうに言った。今日のアリーはやはり襟とボタンのついたシンプルな灰色の上に下は大きなレースがついているもののタイトスカートのような灰色のスカートをはき、靴下に黒いヒールの靴を履いていた。
「ドゥエックはどうして微積分も三角関数もできないの?希望は陸軍よね?弾道計算もできなくて弾を撃つ気?あとキャロラインの成績はなんなの?これじゃあ看護師にもできやしない」
「2人に伝えておこう」
「これから一日12時間勉強してその後6時間実技を行うように言っておいて。3~4時間の睡眠程度で人は死にはしないわ。できねえならドゥエックには軍の掃除係にでもなってもらうからその予定で」
「待て、アリー、君が教えることは..」
「するわけないでしょう?私は自力で覚えた。戦場でね。ドゥエックもそうする?」
「ーーいや、いい。2人に言っておこう」
「キャロラインにはいつまでもお姫様気分でいるのをやめさせて。ウザいのよ。どうせもうすぐ社会自体が変わるわ」
アリーはそう言うと立ち上がり、2人の成績表を持って出ていった。ノエル卿は溜息を吐いた。アリーの言い分は的を射ている。さてどのように説得しようかとノエル卿は考えた。
アリーは書斎を出るとまるで王者のように廊下を歩いた。肩で風を切り、メイドたちは恐れおののいて脇に寄って深々と礼をした。
部屋はアリーの要望どうりに今改装が行われている。
あの部屋の祖母の形見を1つでも残せないか父母は懇願したがアリーはそれを許さなかった。
「あのクソババアが私になにをしたか覚えてないの?」
その一言で2人は沈黙した。祖母はアリーに冷たく当たり、アリーをいじめぬいた。だから家族も当時の家の女王であった祖母のやることの真似をし、アリーをいじめた。アリーはそれを許していないらしい。ノエル卿はどうしようか考えた。問題は根深い。
アリーは改装中に用意された別の部屋に入り、ソファに座り葉巻をくわえた。そしてテーブルに置いてあった書類を見ながら煙を吐いた。
こんな家の住人がどうなろうがどうでもいいが、早くはしないとならない。ガキのお守りはまっぴらだが。ふとアリーはそばに控えていたメイドを認め、尋ねた。
「あんた誰?」
「ソフィアと申します。今日からアリーお嬢様のお世話をさせていただきます」
「お嬢様を取りな」
「かしこまりました、アリー様」
顔色一つ変えずにたたずむソフィアを見てアリーはこれは使えるかもしれないと思った。あのクソみたいなメイド長がなにかしかけていなければの話だが。アリーは試すことにした。メイド長にはガキの頃に世話になった。
「ソフィア、今から言う人物を部屋に連れて来て。理由は過去に私にしたことへの誠心誠意の謝罪よ。謝罪のしるしとして多少の拷問はくわえるけど死にはしないから大丈夫だと伝えておいて。今から15分以内に連れて来て」
「かしこまりました」
ソフィアは顔色一つ変えずに出ていった。さてどうなるか。




