無駄な会話(改)
加筆しました。
楽しんでいただけると幸いです。
アリーは浴槽を見、備え付けの石鹸やブラシを見てまあいいだろうとタオルとバスローブを持ちシャワーを浴びた。気に入らなければオーシャンビューの別荘にでも行けばいいと思っていたが、わりと快適な休暇が楽しめそうではあった。条件付きだが。
石鹸を髪や身体にこすりつけ、ブラシで洗い、そしてシャワーで流し、タオルで身体と髪を拭ってバスローブを着て浴室から出ると、言ったとうりにウィスキーと葉巻とマッチと灰皿が用意されていた。
ーー父親が向かいに座っていたが。
アリーは無視してソファに座り、ウィスキーをちびりと飲み、葉巻を口にくわえて火を点けた。そして向かいの父親に尋ねた。
「何の用?」
「アリー、良く戻った。嬉しいよ」
「そうでしょうね、少年兵の生存率は3%以下ですものね」
アリーは葉巻の煙を吐き言った。父親が笑顔だが汗を流している。どう言いつくろうか考えているな、と軍で心理学も学んだアリーは脚を組み先にこちらから言うかと父親の目を見て言った。
「部屋の改装を頼むわ。私あのババア嫌いなの。ピンク色も嫌いよ。キャロラインの好きな色だからね。家具もすべて取り替えて。壁の色は白。ガラスのラックにチェスト類は濃い茶色。椅子は深紅。絨毯はオリエンタルなもの。化粧台も濃い茶色。あとは手鏡は銀の手鏡。テーブルは木製で赤い薔薇が描いてあるもの。蝋燭立ては金。ベッドは深紅の上掛けにクッションも同じ色。シーツは白でいいわ。服と靴と化粧品は今から試してみるけど気に入らなければ言うから商人を呼んでちょうだい。ーー以上よ」
「ああ、ああ、もちろんだとも。アリー」
「ほかには話は無いわよね?」
「で、きれば今日の晩餐に一緒に出て欲しい。家族に紹介したい」
「ふん、いいわ。ーーああそう、私、今日は子牛のステーキが食べたいわ。ワインは赤。それでよろしく」
「わかったよ。任せておきなさい。ーーああそう今日の菓子だがちょうど茶会がーー」
「行くわけないでしょう?部屋に持ってきて」
アリーはそう言うと話はここまでだと父親に手を振った。ノエル卿はあきらめてアリーの部屋から出、書斎に戻り、執事にアリーが要求したすべてを用意させるように言った。
ノエル卿にはアリーのこのような我侭をすべて受け入れるしかなかった。ここで今までのようにアリーを扱い、絶縁されてはそれこそノエル家は生きていけない。
この間の電話はユスティノス王国王室からアリーが陸軍少佐になったことを祝うことともう1つ、アリーが久しぶりに実家で休暇を取るという連絡だった。
おかげで王室とパイプができ、近々アリーとノエル家の者たちが王室に呼ばれることに決まった。
ノエル卿は小さく笑った。
どうせアリーは最長でも3か月しかいない。その間贅沢をさせておいて王室とパイプを作る。ドゥエックが軍ではなく王室の親衛隊になれればノエル家は更に権力を持つことができる。簡単なことだと笑った。
「今日の晩餐はアリーも参加するからな」
茶会中にやってきたノエル卿がキャロラインやドゥエック、セシリアに言うと3人はあからさまに嫌な顔をした。
「そうしてあんな奴と一緒に食事をしないとならないのです、父上」
「ーー昨日、王室からアリーの昇進についての祝いの電話が陛下直々に来た。意味は分かるな?ドゥエック。アリーは王室と関係を持っているに違いない。スティーブン陛下は軍事力の強化に賛成なさっているからな。それに今、アリーは少佐だ。ここで少しくらい家族らしくしておかないと今後の社交界でもお前の軍での昇進にも関わる。なに、せいぜい3か月だ。それまでの我慢だよ」
「ーーーフン」
ドゥエックは嫌そうに茶を飲んだ。キャロラインは尋ねた。
「ではお姉様もドレスを着ますの?あのヒキガエルが」
「まあそれも仕方がないことだ。一応この家の娘ではあるからな。舞踏会に連れて行くこともあるだろう。それにあれが少佐になったということはアッカーソン公爵やオールストン公爵、バーナーズ大公爵と知り合いの可能性も高い。紹介させるには少しは餌を与えんとな」
そういうわけだから下手なことはするなよ、とノエル卿は3人に釘を刺して去って行った。残された3人は不機嫌そうに茶を飲み、菓子を食べた。その間中ずっとアリーの悪口をいいながら。
茶会が終り、キャロラインが部屋に戻ろうと歩いていると祖母の部屋の家具がすべて出されて改修工事が行われるところだった。キャロラインが驚いて使用人に尋ねると彼らは言った。
「アリー様のご要望です。キャロラインお嬢様。ーーおい、白いペンキは持ってきたか?すべて塗り替えなきゃならん。家具はいつ届く?」
「明後日には届く予定です。絨毯も」
「そんな、ちょっとやめてよ!おばあさまが一番好きだったお部屋なのよ?!」
「キャロラインお嬢様、ここは今はアリー様のお部屋です」
使用人は申し訳なさそうに言い、キャロラインは呆然とした。
そして沸々と怒りが湧いてきた。こんなことをしていいと思ってるのあのヒキガエルは!
キャロラインは怒りに任せて駆け出し、自身の部屋に入り、ベッドにうつ伏せで寝た。
なによ少佐だからっていい気になって!ヒキガエルのくせに!
キャロラインは泣きながらそう思った。




