ノエル卿
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楽しんでいただけると幸いです。
アリーお姉様が帰って来たという一報はすぐに屋敷中に広がり、お姉様が二輪車を使用人に片付けるように言い、ゆっくり歩いてポーチまでくると使用人が恭しく扉を開け、そしてそれに合わせてメイドも執事も使用人も全員が一列に並び「お帰りなさいませ」と礼をしました。
私も階段からアリーお姉様の様子を見ていましたが、お姉様はこの6年の間に背が伸び、きっと180cmは超えているのでしょう。手足は長く、髪は先ほども言ったようにショートカットにしていました。そしてあの眼光。6年前からは想像もできない肉食獣のような眼光に私はブルリと震えました。
お姉様はヘルメットをメイドに渡し、口を開きました。その声は掠れ、低くなっていました。
「シャワーを浴びる。部屋にウィスキーと葉巻を用意して」
「かしこまりました」
メイドはビクビクとお姉様の要求にイエスと答えました。お姉様はそれを上から蛇が獲物を食べるかのように睨みつけて言いました。
「私の部屋は?」
「も、申し訳ありません!こちらでございます!」
メイド長が列から出てきて今にも泣きそうなメイドを守るかのようにお姉様を部屋に案内しました。お姉様はまるで将軍のように悠然と、しかし決して周りへの注意を怠らずに階段を上がって行きました。途中しゃがんでいる私と目が合いましたが、お姉様は私をそこらへんに置きっぱなしの邪魔な物を見るような目で見て、何も言わずに階段を上がって行きました。私はそれに腹が立ち、お父様に言いつけようと考えました。ヒキガエルのくせに生意気にもほどがあります。
お姉様はメイド長が案内した部屋を見、舌打ちをしました。
「ピンク色か」
「あ、あの、気に入らなければすぐに何色にでもお取替えいたしますが...」
「今日はいい。疲れているから寝るだけよ。着替えは?」
「は、はい、クローゼットに最新の流行の物からすべて取り揃えております。靴も、化粧品も、すべて」
「ふん、あのクソ親父もちょっとは分かっているわけね。じゃあシャワーを浴びるからウィスキーと葉巻を用意して。つまみはいらない」
「かしこまりました」
そう言ってメイド長は逃げるように腰を90度に曲げて礼をし、走って去って行きました。私はお父様にお姉様が私を無視したと言いつけようとお父様の書斎にまで向かいました。
お父様の書斎へ行くとお父様は電話をしながら書類を確認し、ペコペコとお辞儀をして電話を切りました。私はここぞとばかりにお父様に言いました。
「お父様!お姉様がーー」
「なに?!アリーが帰って来たのか?!」
お父様はそう言うと立ち上がり、ジャケットを羽織り、ネクタイを直して私を無視して部屋から出て行きました。私は今度こそ呆然としました。お父様がお姉様を気にかけることなんて今まで一度もなかったはず。どういうことだろうと私は頭がこんがらがってしまいました。




