お前にはちょうどいい結果
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楽しんでいただけると幸いです。
家に着くとノエル卿は書斎に入り、本を投げつけ、椅子に座り葉巻を吸った。とんだ恥をかかされた。育ててやった恩を忘れおってと書類箱を見た。
すると投資家たちがこぞってノエル家の所有する会社の株を売り払っていることを知り、ノエル卿はガタリと前のめりになり、灯りをつけて書類を見た。株価が下がっている。それもひどく。
これでは資金も調達できないし、信用も低下する。どうにかしようと思ったが、ここまで急に下がってしまうと事業を縮小し、なんとか経営破綻を防ぐしか道はない。
ノエル卿は青くなった。
アリーの名前を間違えたからに違いない。オールストン公爵とバーナーズ大公爵は仲が良い。そしてバーナーズ大公爵はスティーブン陛下の弟だ。
点と点が繋がったノエル卿は頭を抱えどうするか考えた。
そして金庫を開け、逃げ出すための資金を取ろうとした、が、そこは空だった。ノエル卿は驚き、誰が、と考え、ハッとしてドゥエックの部屋へ駆けあがった。
ドンドンと扉を叩き、「ドゥエック!」と叫ぶが応答が無かった。
仕方なくドアを開き中に入るとそこはもぬけの殻だった。ノエル卿はやられた、と膝をついた。ドゥエックが資金を持って逃げた。会社はもう終わりだ、と考え、そこでノエル卿はピンと来て笑った。
まだいるじゃないか。家族全員を養う存在が。アリーという使役動物が。
ノエル卿は早速手紙を書いた。なに、少し優しくすればいい。そうすればすぐに言うことを聞く。あんな娘の扱いなど簡単だとノエル卿は書き上げた手紙を軍にいるはずのアリー向けて明日届けるように言った。
アリーは戦場から帰ると手当を受け、シャワーを浴びて自分の部屋の書類箱に入っているノエル卿からの手紙を見て、笑った。
そしてアッカーソン卿に手紙を書き、アッカーソン卿の提案に乗ると返事を書いた。それを届けてもらい。アリーはゆっくり煙草を吸って上を向いた。
馬鹿な男。
後日手紙が届き、アリーは内密にアッカーソン公爵の家に行き、父親からの手紙を見せ、アッカーソン公爵は心底下賤なものを見たような顔をして頷き、王に謁見し、内密にそして迅速にことを進めた。全部終わった後にアリーは所有していた家と別荘を売りに出し、登録している住所も変えた。
数か月待っても半年待ってもノエル卿はなかなかアリーから手紙が来ないことに苛立ち、ついにしびれを切らし軍に赴いた。受付に「アリー・ノエルはいるか?!」と怒鳴ると受付は怪訝そうな顔をした。
「そのような方はいらっしゃいません」
「いや、いるはずだ!アリソン・クリスティアナ・ノエル少佐だ!」
「ですのでおりません」
「~~~ふざけるな!」
ノエル卿が受付に手を上げそうになると警備員に取り押さえられ、門の外に追い出された。ノエル卿は立ち上がり閉まった門をガシャガシャと鳴らしたが、誰も出てくることは無かった。
そして怒りに感情を支配されたまま、家に戻り、書斎に置いてあった新聞を見て、ノエル卿は今度こそ打ちのめされた。
アリーが正式にアッカーソン公爵家の養子に入り、名前も改め、アリソン・クリスティアナ・ノエルからアリシア・リオノーラ・アッカーソンになったという記事だった。
アリーという略称に変わりはないが、これはノエル家を完全に捨てたという宣言だった。名付け親はスティーブン王でミドルネームのリオノーラは彼の母の名だった。その儀式には貴族も参加したらしいが、ノエル侯爵家よりも下級貴族も参加したのにノエル家には招待状もなにもこなかった。
そのことでノエル卿は我々は完全にこの国中の人間から見放されたのだと知った。
絶望に支配されたノエル卿は引き出しから拳銃を取り出し、自分のこめかみに当てた。
自社株を買ってなんとかやりくりしてもうまくいかず、会社の売却をしても誰も相手にしなかった。
そしてもう会社は倒産し、新しく事業を興しても投資家が集まらず、また経営もうまくいかず、金ばかりを溶かし、キャロラインの贅沢癖と毎日の生活はそのまま継続していたためにノエル卿は祖母の遺産を食いつぶし、借金は返せそうにない。
アーノルド・チェスター・ノエル侯爵が彼の名だが、彼は書斎で拳銃自殺しているところが見つかるまでに半日かかった。それくらい現在のノエル侯爵家はメイドも使用人も少なかった。




