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ノエル侯爵家の断罪

更新しました。

楽しんでいただけると幸いです。

キャロラインはここ最近ずっと舞踏会に出ることができず不満でいた。


母のセシリアが止めるせいで手紙がきているのに出席できない。キャロラインは喚き、「次の舞踏会は絶対に行く!」と母に啖呵を切った。


そしてある日、王族主催の舞踏会の知らせが届いた。さすがのセシリアも陛下の招待を反故にはできず、しかたなく出席の準備をした。ノエル卿とキャロラインは本を読んでいないのか嬉しそうに準備をしていた。



そして舞踏会の日。


キャロラインはピンクに金糸で刺繍がほどこされ、レースをふんだんにあしらったドレスを着て、ピンクの靴に髪を結い、化粧を施してウキウキと馬車に乗り込んだ。セシリアも水色のドレスを着、乘り、ノエル卿も新品のスーツを着て馬車に乗った。


会場の扉が開くと、皆がこちらを見た。それも今までのような温かな眼ではなく、冷ややかな目で見ていてキャロラインもノエル卿も困惑した。中に入ると周りの令嬢や貴婦人が扇で口元を隠し、ヒソヒソと話しており、男性たちはあからまさにノエル卿を無視していた。


キャロラインは意味が分からず、仲の良い友達のところへ挨拶へ行ったが、行くと皆は席を立ち、どこかへ歩いて行った。セシリアは溜息を吐き、目立たないようにしていた。



そしてそれはダンスが始まっても同じだった。誰もキャロラインを誘わなかった。そこでキャロラインは気づいた。皆のドレスが今日はずいぶん地味であることに。レースもリボンもほとんどなく、以前の舞踏会でのアリーのようにタイトなドレスか、地味なドレスであった。アクセサリーもチェーンに小さいダイヤやルビー、サファイヤなどがはめ込まれたシンプルなネックレスのみで、手袋も靴も髪型も皆シンプルにまとめていた。


ノエル卿はそんなことを知らずに仲間に話しかけたが皆は無視し、どこかへいった。これはどうしたことかと思っていると王室の家族たちが登場し、皆はダンスを止め、彼らの方を見た。アナスタシアはおらず、妹のマリアンもシンプルなレースもついていない紺のドレスを着、アンドレア王太子もヒューゴ王太子も王族の制服姿だった。

スティーブン陛下は口を開いた。



「今日は舞踏会への参加に礼を言う。ーーさて、今宵は軍人たちが敵と戦っている夜である。皆の者、戦うことができない我々はせめて彼らの勝利を祈ろうではないか。ーーところでノエル侯爵」

「は、はい」

「アリー・ノエルの本名は何だったかな?」

「は、アリス・ベティ・ノエルでございます陛下」



するとスティーブン王は高らかに笑い、他の貴族たちも笑った。ノエル卿もキャロラインも意味が分からず、周りをポカンと見ていた。スティーブン王は口を開いた。



「それは絵本に出てくるヒキガエルにされた少女の名前であろう?もう一度聞く、アリーの本名は?」



そこでノエル卿はようやく王の真意を知り青くなった。たぶんあの手紙が王にまで伝わったのだ。ノエル卿はしどろもどろになり、汗をかいていた。王は溜息を吐いてキャロラインの方を見て尋ねた。



「そなたは?姉の本名くらい知っているだろう?」

「え、ええと...」

「ああ、そういえばそなたの家ではアリーを『ヒキガエル』と呼んでいたそうだな。発端はそなたの祖母のマリアンナ・ミカエラ・ノエルだと。お前の家に勤めていたメイドや使用人から聞いたそうだ。ーーおい、例のものを」



王がそういうと使用人が恭しく銀の盆の上に本を載せてノエル卿とキャロライン、そしてセシリアに渡した。彼らが本を手に持つと王は言った。



「そなたらは自省ができるだろうか?人間ならばこのようなことをすれば恥と罪の意識に苛まれて夜も眠れなくなるはずだ。そなたらがそのような人間であることを祈ろう。ーーではノエル侯爵家の皆の者、即刻ここから出て行くがよい。ここはそなたらのような非道な行いをする者が来るところではない」



それと、と王は付け加えた。



「アリーの本名はアリソン・クリスティアナ・ノエルという。我が国の戦女神の名くらい覚えておいた方が良いぞ」



その言葉に貴族たちはクスクスと笑い、顔を赤くして去って行くノエル家の者たちを見ていた。王が手を振り「ダンスの続きを」というと、音楽隊が演奏を始め、ダンスは再開された。





ノエル家の3人はとぼとぼと家に帰った。彼らはどうしてアリーの名前を間違えて覚えていたのかを思い出していた。あれはキャロラインが5歳の時、祖母のマリアンナがキャロラインを膝にのせて例の絵本を読んでやっていたところだった。キャロラインは尋ねた。



「おばあさま、ヒキガエルになったアリスはどうなるの?」

「ああいう風になるのさ」



そう言って部屋の隅に立たされて下を向いていたアリーを指差し、祖母は愉快そうに笑った。キャロラインもノエル卿もセシリアもドゥエックも、メイドや使用人たちも皆がケラケラ笑っていたことを思い出した。アリーは水の入ったバケツを持たされて下を向いて震えていた。



「キャロライン、美しいお前はあんな風になっちゃいけないよ。あいつはそのうちどこかへ捨ててしまうからね。あんなのを愛する奴などこの世に存在はしない」



マリアンナの言葉を信じたキャロラインはもちろんのこと、ノエル卿もセシリアもドゥエックもその日からアリーを『ヒキガエル』と呼ぶようになり、皆の記憶からアリーの本当の名前は忘れ去られた。




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