新兵訓練2
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楽しんでいただけると幸いです。
女子だということで男子よりは重量は軽いが、それでも丸太を載せたボートを担いで浜辺を走るのはキツかった。脚がガクガク震えて、倒れそうになる。
見ると前の列も崩れてきている。ソフィアは痛い肩になんとか力を入れてボートを支えた。見ると隣のアナスタシアも苦しそうに汗をかき、呼吸が乱れている。ソフィアは1つ思いついて6人組の皆に言った。
「あの、教官を驚かせてみませんか?」
ほかの5人の女子たちはどういうことだと首を傾げた。ソフィアは続けた。
「ボートを高く掲げて『私たちは負けない』と叫んで走るんです。教官は今お茶を飲んでゆっくり新聞を読んでいます。こちらに視線を奪ってやるのも良いのではないでしょうか?」
「いい考えね、それ」
アナスタシアが賛同し、残りも笑って皆で力を振り絞ってボートを高く持ち上げた。そして叫んだ。
「私たちは負けない!」
「私たちは負けない!」
「私たちはこんなものに決して負けない!」
そう言って全速力で走るとやはり教官は驚いて立ち上がりソフィアたちのグループを見ていた。彼女たちに何が起きたんだ?というような顔にソフィアとアナスタシアのチームは内心『勝った』と思い、掛け声を大声で叫びながら走り続けた。
おかげでその日はソフィアとアナスタシアのチームは1位だった。
教官がその日の訓練後にアリーにソフィアたちの様子を報告すると彼女は手を叩いて笑った。
「殻を破り始めたわね。よい調子だわ」
「私は何が起きたのかと...」
「よい?ジョージ教官」
アリーは煙草をくわえ、微笑んだ。
「彼女たちは自分の中にライオンを飼い始めたのよ。何があろうが負けてなるものかっていう強い意志が芽生え始めたの。訓練はまだ20日あったわね?一度私が彼女らと近接戦を行うわ。日程を調整してもらう。牙はもっと磨かないとね」
「はあ...」
「だからって人より厳しくする必要はないわ。今までどうりにカリキュラムを続けてちょうだい。人間は自分を鼓舞して挑戦はできるけど訓練生には訓練生の限界があるわ。それを忘れずに」
「了解しております。ノエル少佐」
「しかしソフィアはともかくアナスタシアがねえ...あの子も特待生のリストに入れておきましょうか。彼女もできるでしょうしね」
アリーは嬉しそうに言い、ジョージ教官が退出すると陛下に宛てて手紙を書き始めた。アナスタシアを特待生に入れてもいいかどうか。アリーはようやく煙草に火をつけ煙を吸い込んだ。
今年はできる奴が多そうだ。
そしてそういえば、と思い出し、情報班に連絡を取った。ノエル侯爵家のメイド長と庭師と料理長の動向だ。アリーはこの3人が家に入り込んだネズミだと知っていた。
連絡をするとたしかに3人は行方をくらませていた。ちょうどいい、とアリーは考えた。印はついている。弾痕は消えない。アリーはこの3人を要注意人物として探ってくれと命令した。
我が国に入り込む邪悪なスパイは早急に排除しなければならない。




