ソフィアの才能
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楽しんでいただけると幸いです。
翌朝、アリーはシャワーを浴びてバスローブのまま朝食をとっていると、ノック音がし、ソフィアに開けさせると大きな花束や包装された箱を持った使用人やメイドが大勢やってきて「どちらに置けばよろしいでしょう...?」とアリーに恐々と尋ねた。
「それはなに?」
「その、この国の貴族の紳士の方々からの贈り物でございます。あとはお手紙も...」
「適当に邪魔にならないところに置いておいて。手紙はテーブルの上に」
「かしこまりました」
メイドや使用人は花束やプレゼントの数々を置き、テーブルに手紙の束を置くとそそくさと出て行った。アリーは肉を切りながらソフィアに言った。
「昨日予想外に目立ってしまったのよ。しょうがないわ。アッカード公爵には逆らえない。軍の中将でもあるしね。ソフィア、今後アッカード卿が家に来た時は私以上に丁寧に扱って。あの人は私以上に厳しいわ」
「かしこまりました」
「あとはオールストン公爵とバーナーズ大公爵もよ。あの2人は軍に資金を惜しまないの。まるで王様のように扱って。アッカード公爵は逆。豪傑の軍人として扱って。敬意を持ってね。でないと機嫌が悪くなる。ーー頭に入れた?」
「はい、アリー様」
「アンタは頭が良いわね。数学でも習ってみる?」
アリーが面白そうに尋ねるとソフィアは少し考え、頷いた。今まで誰かに頭が良いと言われたことが無いソフィアは少しだけ気分が高揚した。自分に気分というものがまだ存在していたということに驚いた。
「じゃあ今日の午後に少し教えてあげるわ。初歩からでいい?」
「はい、アリー様、あの、」
「ああ、大丈夫よ。読み書きも教えてあげるわ。どうせ今後必要になってくる」
「ありがとうございます」
ソフィアは少しだけ口角を上げて微笑んだ。アリーはそれを見て「アンタ笑えるのね、結構可愛いわ」と笑った。
「この国の文字は全部で30文字。これを組み合わせて単語を作って文章にするの。子供用だとこういう文で覚えることが多いかしら。『にわとりがたまごを生んだらゾウが生まれて動物園に行った』。書いてみて」
「あの、アリー様、にわとりはゾウを生まないと思いますが」
「ああこれは韻を踏んでいるの。単語の発音が似ているでしょう?ただのジョークよ」
「はい」
「アンタはこういうジョークで笑ったことはないの?」
「ジョークをよく知りません」
「じゃあ今度コメディでも一緒に観に行きましょうか。ジョークを知っておけば大抵のことはどうにかなるわ」
「ーと、申しますと?」
「人生はユーモアがなければ生きていけないの。どんな状況でも笑えりゃ生きていけるわ」
さあ、続けて、とアリーは子供用の国語の教科書を指差し、挨拶や簡単な単語を教えていった。ソフィアは変な気分になった。メイドにこうして物を教える主人はほとんどいない。暇つぶしかもしれないが、メイドごときにこうして時間を割くアリーにソフィアは不思議な感情を抱いた。
昼食を終えて、アリーはソフィアに引き続き、文字の練習と単語の練習をさせている間、テーブルに積みあがった手紙を読んでいた。だいたいが愛の告白だが、中には将校からのアッカード公爵に頼んで欲しいことも入っていて、アリーは厳しい顔をした。そしてメモ帳を取り出し、誰に何を頼むかを書き記した。権威を示したい金持ちの貴族はたくさんいる。名前をそいつの名前にするという条件で行えないかと考えていると「アリー様」という声がしてアリーはソフィアの方を見た。
「あの、終わりました」
「終わったって、なにが?」
「この問題集です」
「見せてみて」
アリーはソフィアが持っていた問題集を取り、ペンで採点をした。AとBプラス。アリーは少し驚いてソフィアの方を見た。
「参考書を見てやった?」
「いいえ」
「だとすればアンタは天才よ」
素晴らしい点数だわとソフィアに解いた問題集を見せ、褒め、綴りの間違いを指摘した。それでも初めてにしては相当である。アリーは少し考え、ソフィアに言った。
「ソフィア、あらゆる国の言語に興味はない?」
ソフィアは頷いた。




