虹色の眼光
メグメルスは俺が来ることを予知していたかのような言い方で虹色の瞳を俺に向ける。
「メグ…メルス…?」
俺が来ることを知っていたということにも驚いたが、その人物はまるでメグメルスじゃないような雰囲気を出していた。
「まだ入ってきて一日目の人がもう私を呼び捨てかい!……なんて冗談は通じないな。中々の観察眼だ。褒めてやる」
いつものわがままで気の軽いメグメルス……ではない。やはり違う人物なのだろうか。
「し、失礼しました。えぇと…聞きたいことが二つくらいあるのですが…あなたはメグメルス様なのですか?」
あまりの違和感にキャラが崩れてしまったがなんとか持ち直す。俺はメグメルス?にしっかり声をかける。
「余はメグメルスであり…そうではない存在…まぁなんだ。二重人格者というやつだな。自己紹介しよう。余はアメグスと言う。そうメグメルスと決めた」
「アメグス……様?」
「ははは。今は人格が違うから、わざわざ姫扱いなどせんで良い。柄でもない」
「そう…じゃあ好きに呼ばせてもらうけど…アメグス。あんたはどういう存在なの?」
俺は迷わずタメ口…というか上からな目線で喋りかける。それにも動じず、アメグスは鷹のような目で鋭く俺を見る。
「余とメグメルスは言わば、硬貨の表と裏…太陽と月のような存在として見てくれていい。朝から夕方はメグメルス。夜はアメグスと…人格が入れ替わる。昔からの体質なのだ」
「なるほど…それって人格が変わるだけ?」
「妙な言い回しをする…まるでもう既に違いを悟ってるかのようだな」
「いや…まぁなんとなくよ。メグメルス様が弱いということは知っているわ。でも、二重人格ならまた変わるんじゃないかって。二重人格って言っても原因は色々あるわ…なにかに対してのショックだったり、ストレスやトラウマから起こることもある…でも、あんたは体質…って言ったわよね?それなら、人格が変わることによって体質が変わることも可能性としてはあるんじゃない?」
この世界なら、産まれる前の胎児の段階で母と父の魔力要素を上手く分けれず、結果として人体に二つの魔力が残り、二重人格になる…というケースもたま〜にあるらしい。
「ははは…感が鋭いな。そうだな…今の余はメグメルスには無い"力"…がある」
「力…?それって…?」
「光魔法と闇魔法の究極進化魔法…"日食魔法"と"月食魔法"。それが余の魔法だ…まぁ自分で名付けておいてなんだが、太陽の力ではクロスに劣るだろう…奴はフェニックスの力を持っているしな」
「光魔法と…闇魔法の究極進化魔法?聞いたことがないわ。一体どういう魔法なの?」
「そこまで聞くとはそなたはかなりの強欲と見た…今夜は寝かさぬぞ?朝まで語り明かそう」
そう言いアメグスはニヤリと笑みを浮かべる。
「先ほども伝えた通り、日食魔法、月食魔法と名付けたのはあくまで余自身であり、他でそう呼ばれているかどうかは知らん。光魔法と闇魔法の究極進化と言ったのは、余とメグメルスの体質。そしてその力によって光魔法と闇魔法の到達点をとうに越えた力を発揮出来ることから、そう考えた」
魔法の到達点…少なからずとも魔法の威力やら範囲やら、ものにもよるが限界点が存在する。その限界点に到達すれば、その魔法は神級魔法レベルの魔法でさえ、下級魔法として使えるようになる。だが、その先…と、アメグスは言った。それがどれほどのものなのか…
「なるほど。それじゃあ…その魔法の効果は?」
俺は聞くも、アメグスは首を横に振る。
「流石にそこまで教えるのは難しいな。しかし、なぜ余が二つの魔力属性を扱えるのかは語っておこうか――。余は闇属性の魔力…そして、メグメルスは光属性の魔力を持つ。しかし、メグメルスは基本的には魔法を使えない。だから余がメグメルスの分の魔力を使えるというわけで、余は二つの魔法を使えるというわけだ」
「ふーん…まるで双子みたいね」
「そうだな…さて、次は余の番だ。まだそなたが何者なのか…そこまで把握は出来ていない。そも、そなた本来の用件をまだ聞けていない。余か…はたまたメグメルスに用があって来たのではないか?」
相変わらず鋭い目線がずっと俺に向けられる。この鋭い目はわざと睨むようにしているのか、アメグスの時は目つきが悪くなるのかは分からないが…
「あ…そうね。まず、言わなくちゃいけないことは多いけど。私は昨日からメイドとして、ミナノ・カーシャと一緒にここに来たサナ・グランドと言うわ…でもどういうわけか、次の日には周りの記憶がなくなって…私の存在は消え、他のメイドやクロスから追われているのです」
「まさか、メグメルスを狙っている不審者とはそなたのことだったのか…?その話は信憑性に欠けるとは言え、あいつらも話くらいは聞いてやっても良いだろうに…それで?どうして欲しくてここに来た」
「私は……メグメルス様…いや、今はあんたでもいい。ただ、助けてほしくて来たの。メグメルスの名声で、私のことを信用させてほしい。そして、この国とメグメルス様に迫りつつある危機を一緒に解決したい」
俺はその場に跪き、今見せれる誠意を見せる。アメグスは依然として威風堂々とした態度を崩さず、椅子に座ってただ俺を鋭く見る。
そしてしばらくして「はぁ」とため息をついたと思えば、アメグスは呆れたような顔で俺を見る。
「失望したな…もっと具体的な話でも寄越すのかと思えば…そうでもなく、信頼した上で助けてやる挙句に、本当かどうかも怪しいことを解決したいと…やはり、不審者ということに関しては間違いなかったようだ」
「なっ…本当なのよ…!信じて!あんた達は忍に騙されてる!シオンとの婚約は今すぐにでも破棄して…!それが、アサトラムの願いなの…!――あっ」
い、言ってしまった。アサトラムの名を口にしてしまった。余計に話をややこしくしてしまっただろうか…?終わった…それに、忍の話も絶対に出すべきじゃなかった…
「……なぜそこでシオンとアサトラムの話が出てくるのかは知らんが、余がそなたを信頼しない…というだけで、メグメルスなら信頼するかもしれないな」
「えっ?それって…」
「メグメルスの目には、魔法が刻まれている…その魔法の力こそ、世界の歯車を変え、誰かを救う力…それは――運命を悟る魔法だ」
「運命を…悟る魔法……!?」
アサトラムが消えたと言った魔法と同じだ。なにか関係あるのだろうか…
「メグメルスは確かに弱い。だが、誰かを助ける力…という点では、余より上なのかもしれんな…」
「もしかして、私が来ることを知っていたのも…その魔法で?」
「そうだ。余は来ることまでしか知れなかった…しかし、そなたが信頼には値しなくとも、本気でなにかを動かしたいという意志…決意を感じ取ることが出来た。故に、手を貸せる範囲でなら余も…メグメルスも手を貸そう」
「本当!?それなら――」
言葉を言おうとしたところでアメグスは手を俺の前に突き出し、表情をこわばらせる。
「だが…先ほども伝えたよう…完全に信頼したわけではない。余が不審だと思った動きをすれば、その瞬間に余とそなたのこの盟約は無かったものとさせもらうと同時、この国から去ってもらう…良いな」
アメグスの圧に俺は思わず息を呑む。なんとなくだが、この国が今まで残ってきた理由が分かってきた気がする。クロスや、精鋭のメイド部隊達の様な戦闘の強い者達が居るからではなく、メグメルスの気の良さや、アメグスの信頼がこの国を保っているのだろうと。
「それで?まずは何から手伝えば良いのだ?」
「えぇ…そうね…いくつかあるけどまず優先すべきは私の仲間とメイド達…そして一応あんたの記憶も…昨日まであったはずの記憶…これを戻すわ」
一応いくつかの理由は考えている。それを実行したい。だがそれにはメグメルスかアメグスの指示が無いと、国を傷付ける行いなため、勝手には出来ないのだ。
「ほう…それで?取り戻す方法というのは考えているのか?」
「全てとは言わない…けど、国の壁をぶち壊すわ」
「それは…なぜだ?」
アメグスはいきなり警戒することはせず、落ち着いた雰囲気で俺に問いただす。
「まだあくまで可能性…だけど、盤面付与魔法の可能性があるの」
「盤面付与魔法か…この国では見たことがないな。カミスくらいしか使っているのを見たことがない。それで、そう考える理由は?」
「そうね…今日…というか昨日ね。クロスと交戦になったの…それも、二回も」
アメグスは顔を歪める。
「ぬ…あの変態男と二回も戦ってよく無事だったな。そこは賞賛しよう」
「はは…そうね。私もギリギリだったわ。それで、その一回目で外に出て、クロスとは協力することになったはず…だけど、もう一度国の中に入った瞬間に、一回目の交戦の記憶が消えた…」
「それで二回戦目の交戦になったと…」
「えぇそうね…でも、一つ不可解なことがあって…一日目はクロスに会ってないから、昨日不審に思われて戦闘になっても仕方がないとして、一日目に会ってたはずのアンリメルは国の外に出ても記憶消滅の効果はなくならなかった…これだけ引っかかるわ…」
俺が言うとアメグスは何かに気付いたような表情を浮かべる。
「ひょっとすると…"呪印"…か?」
「呪印…?なにそれ」
「呪印――魔法と併用して使う忍達が使う忍術の一種だ。魔法の効果を物と人とで繋げることが出来る。実は魔法通信石もそれを元に考えられて作られてる。こっちは呪印無しで行けるが…そなたの身体のどこかに、呪印が刻まれてはいないか?」
俺はまさかと思いながら、身体をくまなく探す。すると――。
「え…?」
サナに変身していて分からなかったが、胸の下に、謎の紋様がある。
「なに…これ――」
スキーです!
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