最強vs最恐
こいつの戦闘タイプは全く分からない…一応、この世界では国ごとによって戦闘タイプが分かれていたりする。もちろん、魔法属性によって変わったりはするのだが…その違いは剣を使う者なら顕著に現れるだろう。しかし――、クロスは素手だ。その上魔力を感じない。
「氷像分身」
俺はサナの分身を九体生成する。緻密な魔力操作、氷の温度調節――、その全てが揃っていなければならない。だが俺には造作もない動きだ。これならクロスに負けるなんて可能性は無いだろう。
「――大地隆起!!」
「――紅炎皇帝!!」
「――電磁砲滅!!」
「――水球乱混!!」
「――風裂殺連鋼!!」
「――光帝滅殺!!」
「――暗黒闇光!!」
「――青氷鋼牙!!」
「――自然崩壊!!」
「――魔烈爆光!!」
基本の第七元素の魔力属性の各最高技…さらに自然魔法、大地魔法、魔族の魔力という魔族以外にとっては有害な攻撃……期待外れでなければ、まぁこれでとりあえず気絶くらいはしてくれるだろう。というか、あまりに目立ちすぎてしまった…国の外とは言え、別に国から離れているわけでもない。
炎が燃え盛り、氷が地面を支配し、地面は隆起し、雷が地面を焦がし、水が周囲をぬからせ、風が木々を吹き飛ばし、木の幹が串のように伸び、闇と光の淡さが空間に亀裂を生み出し………まぁそれはそれは中々にカオスな光景だった。
「はぁ…はぁ…流石に…私の魔力でも…最上位クラスの魔法や、それをしながらの分身魔法のコントロールってのは骨が折れるわ…」
しかし、最大火力…までは言わないが、クロスは死んでいないだろうか?出来れば話し合いには持ち込みたかったし、ディアマテ関連の話も聞きたかったが…
「気絶で済んでるならいい方ね…」
と、俺が国に戻ろうとした時――。
「――お前、どこ見てんだよ?」
地面から手が生えてきて俺は足を掴まれる。
「なっ!?しまっ――」
――ドッガァァアッ!!
「雑魚が調子乗って真正面で戦おうとすんなよッ!!雑魚でも戦いやすいよう…"広く"使おうぜぇ!!」
俺はものすごい地面の中に引きずり込まれ、地面の中で引きずられる。魔力で防御をしているからそこまで痛くないものの、魔法陣がかけず、反撃が全く出来ない。
「ぐぅううう…」
俺が防御体制ばかりを取っていると、クロス飽きたような顔をして俺の腹を殴る。
「――かはっ…!?」
するとニヤリとし、そのまま魔法を発動してくる。
「獄炎破壊竜!!」
――ゴオオオオッ!!
地面を破壊し、炎の光線が地面を消し飛ばし、天を穿つ。俺は瞬きなどする間もなく上空へと吹き飛ばされる。
「くっ…!出し惜しみしてる暇も無いわね…!」
流石にこれはまずいと判断し、俺はサナの姿を解除し、ミロクの姿で全力を出すことにする。こうすると、サナの変身の分に回してた魔力や、魔力の総量を隠すために抑えていた魔力も無くなるため、本気が出しやすいのだ。
「グラ・ライオネス!!」
俺がそう叫ぶと雷が四方八方に飛び散る。属性相性にもよるだろうが、水属性の魔力の者なら一撃で吹き飛ぶ威力の雷だ。クロスもそう簡単には受けきれないはず。そう思い、地面を見ると――。
「おりゃりゃりゃりゃりゃあ!!」
は、弾いている。雷を…まるで剣のように手を振って弾いている。電気魔法の神級魔法だぞ…?
…これは終末戦争を生き抜いた理由にも頷ける…本気を出したいとこだが…これ以上はコクレクトにも被害が及ぶ…な…
「クロス!!」
俺はクロスの名前を呼ぶ。クロスは俺を見て不機嫌そうな顔になる。
「なんだよ…気持ちよくやってるとこじゃねぇか…」
「俺は殺り合うつもりは無いんだ。アサトラムの依頼で、この国に来ているだけなんだからな!――とは言っても…どうせ信じないだろうし、一旦目を覚まさせてやる」
俺はとりあえず使えるありったけの魔力を使い、"とある"魔法を使うことにした。
「新星魔法…!ビッグバン・スター!!」
宙に浮かぶ星々が光り、その光が柱となり、クロスに目掛けて放たれる。この魔法は星々…宇宙にある魔力の力を限界まで引き出し、放つ魔法…魔力依存の破壊エネルギーではないから、魔力耐性があったとしても無関係だ。
「――はっ…やるな。お前…」
――ドガァァァァッン!
爆発音が響く。間違いなく今回はクロスに直撃した。そう思っているとクロスの丸焦げになった身体が空中から地面へと落ちていく。そして俺もそのクロスを追いかけるように地面へと降りる。
「おい、こっちは分かってんだよ。クロス…お前、不死身なんだろ?」
俺がそう言うとクロスの身体はみるみるうちに回復し、むくっと起き上がる。
「はっ…知ってんのかよ面白くねぇな。俺のことをちゃんと知ってる奴なんて居ないと思ってたのによ」
「ウンディーネから聞いたんだよ。知ってるだろ?」
「な…?ウンディーネだと…?あいつ。まだ生きてたのかよ。俺の知ってる限りだとサラマンダーくらいしか生きてないと思ってたぜ」
クロスはやはり、ウンディーネ達四大精霊を知っているらしい。しかし、今は交流が無いのだろうか?
「少しは落ち着いたか?俺は殺り合うつもりはないんだ。ただ聞きたいことがいくつかある…質問していいか?」
リスクはあるかもしれないが、俺は魔力の気を完全に切り、敵意が無いことをクロスに伝える。向こうも俺に敵意が無いことを判断したようで、ようやっと目つきが良くなる。
「俺のことを知っておきながら魔力を切るのは正気じゃねぇな…どうやら本当に敵意がないらしい…いいぜ。俺の答えられる範囲ならなんでも聞いてやるぜ」
「そうか…それじゃあ聞きたいんだが…ミロク・プリンス…という男を知ってるか?カオス・エデンの大将だ。ここ最近だとディアマテ解放教にも匹敵する程のこの世界にとっての脅威…なんて言われてるが」
「お前…それは知ってるに決まってるだろ。逆に知らねぇやつが居るのか?」
クロスは俺のことを知っている…いや、"覚えている"…という言い方が今は正しいのか…?
「クロス。その名は…国の中でも覚えていたか?」
「もちろん。それ…は…あ…?」
クロスは自信満々に答えようとしたが、言葉が詰まる。やはり……そういうことなのか。国の中に居た奴らだけが俺を忘れているのか…?
「なるほど…分かった。次の質問…ていうか、俺のことについてなんだが…実は俺がそのミロク・プリンスなんだ」
俺がそう告げるとクロスは特に驚く様子も無く関心が無さそうに俺を見る。
「ほ〜ん?で、だからどうしたんだよ。まさかここを支配しようってか?俺がいるのによ」
「違う。今は支配が目的じゃない」
真っ赤な嘘である。まぁしかし、今は優先順位が違いすぎるのは間違いない。
「俺はその仕事の内容上…誰かからの依頼を受ける方式なんだが…その依頼主がアサトラムなんだ。えーと…アサトラムは知ってる…よな?」
「あぁ知ってる。そんで?アサトラムがどうかしたのかよ?」
「アサトラムの魔法を知っていれば教えてほしい。そして、最近のあいつの行動も知っていれば教えてほしいんだ」
俺が聞くとクロスはなぜか俺のことをゴミを見るかのような目で見始める。
「お前…そんなこと知ってどうすんだよ?きもちわりっ…」
「そういう意味じゃねぇーよ!!とにかく、教えてくれ…!」
「あいつの魔法は特に決まってねぇ。属性系の魔力は全て使える…いや、だからこそ使える魔法がある…その名は虹霓魔法だ。知ってるだろ?」
「虹霓魔法…!この世界で使えるってちゃんと聞いたのは初めてだ…!」
――虹霓魔法。第七元素の魔力である炎、水、電気、氷、風、光、闇の性質全てを持っていなければ使えない魔法…それに、魔力を持っているだけじゃダメだ。その魔法をきちんと理解し、制御を出来るようになってようやく使えるのが虹霓魔法…一応俺も使えるが、効率が悪いなんてもんじゃなくて使っていない。
「そしてアサトラムの固有魔法は、運命を悟る魔法……"だった"」
「だった…?だったってどういうことだ?」
「消えたらしい。突如としてな。原因は本人にも分かんねぇらしいから、まぁその辺はあんま気にすんな」
気にすんな言われても気にするよ…これ。
しかし、運命を悟る力……あまり便利な言い方をしない辺り、そこまで使い勝手の良い魔法でもなかったのだろうか。
「そうか…そんでクロス。信じてもらえないかもしれないが…俺はアサトラムの依頼でここに昨日来たんだが…どうにも誰も俺を覚えていないんだ。俺の連れさえもな…何か知らないか?」
そういえば、カミスはどうなのだろうか…?まだ連絡を入れていなかったが…
「さぁな…何も知らねぇ…また何かあれば声をかけろ。不審な動きをする奴が居たら伝える」
「分かった。それじゃあもう一度国に戻ろう」
そうして俺はサナの姿に戻ってからクロスと共に国へと戻る。
アサトラム……お前は何か知っているのか?どうやら…ただのメグメルスの側近…というわけじゃなくなってきたようだな。と、そう考えている内に俺達は国の中に戻る。
「さっ…クロス。あんたには期待してるわよ」
俺がクロスの背中を叩くとクロスは目つきを悪くして俺を見る。そんな馴れ馴れしくしてほしくなかっただろうか?ちょっとその顔はビビるからやめてほしい。
「――なんだよエロ女。どこの誰だか知らんが…気に食わねぇ"匂い"だな…?」
――は………?
スキーです!
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