プロローグ.姫を護れと言われる
――エルフの国の一件から二日。もうかなり前のことのようにも感じるし、まだエルフの国に居たという感覚が抜けないような感じもある。
ゆっくりと過ごしていた俺であるが、ついにとあることに気付いてしまう。
「あぁ…あと少しで学園に戻らなきゃいけねぇじゃねぇかよぉ!?」
懐かしい。これはあれだ。夏休み終わりの学生のアレだ。かーなり鬱になるやつだ。しかも学園に戻ったらカオス・エデンで出来ることも少なくなる。やばい。あとそろそろ魔王城にも戻らないとサボりだと思われて終わる。
「ぐぬぬぬぬ…いや…どうするか…まだ学園も、魔王城も…満足に調査は進んでない…むしろ来た時より調べたいことが増えたなぁ…」
流石にそろそろ依頼もこなすのが難しくなってくるか…大体依頼が来た時はすぐに終わるもんじゃない…学園に戻るまで残り五日しかない…その間に終わる依頼が来ればいいんだが…
「ま…来ないよな…しかたない…依頼は一旦区切りにして…久々にゆっくりでも――」
――ピリリッ。
終わったああああああ!!魔法通信石が光ったぁぁぁぁぁ!!
「うぐぅ……し……しかし…普段中々来ない依頼だぞ…?ここで切るのは……!くそっ!!やるしかない!行くしかないよな俺ええ!!」
俺は一気に魔法石へと手を伸ばし、魔力を繋いで依頼人の声を聞く。
「カオス・エデン代表のミロク・プリンスだ。要件を教えろ」
頼む。すぐ終わるやつ来い!!
『――私はコクレクト共和国のメイドです。要件は、この国の姫である「メグメルス・A・レイズス」を護ってほしいということです。とりあえず、国の中の門前に来てください。以上です』
――シュン…
「…………は?」
え?ちょっと待てよ。いやいやいやいや!ふざけんじゃないよ。誰だよ!コクレクト共和国の…メイド…あれてか…姫の名前…どこかで聞いたことがある気がする…?
「まぁ…とりあえず作戦会議だな…人は…連れてきてもいいんだよな…?」
◇
俺は一回のリビングに行く。カオス・エデンのメンバーを集め、これからどうするかを決める。
「よーし、と言うわけで依頼人は名前不明のコクレクト共和国のメイドさん…要件は、『コクレクト共和国の姫であるメグメルス・A・レイズスを護ってほしい』とのことなんだが…どうする?」
「いや、どうするって…依頼受けるんじゃないんですかー?」
サラムは後ろで手を組んでだらけながら椅子に座って俺の話を聞いている。
「それは…そうなんだが…」
「あー、私分かりますよー元々は勇者学園の生徒でしたし。課外授業が終わって、学校に戻らなきゃいけなくなったんですよね?」
ミナノが俺の心を的確に突いてくる。
「ん…まぁそうだな…それでだ。なるべく早めに終わらせたいから今回はカオス・エデンの全勢力で行って、早めにその護衛任務とやらを終わらせたい!だから今回は全員で――」
「いや、それ無理じゃない?」
レフィアがじっと俺を見る。
「えっ」
「コクレクト共和国はその姫の美貌を奪われないために、姫に認められた男しか入国出来ないと言われているんです…ですから、カリン軍、サラム、カミスは少なくとも入国は出来ませんよ。ミロク様は依頼で行きますし、姿の偽装も出来るから大丈夫だとは思いますけど…」
「ま…まじか。それじゃあ行けるのは…ミナノ、レフィア、クフゾ、俺になるってことか?」
俺が状況整理のために言うが、クフゾはすぐに手を横に振る。
「いや、僕はパスだね」
「………なんでだ」
「エルフの国で少し力を使いすぎたからね…休まないと魔法使えないよ」
「じゃあ…行けるのは俺とミナノとレフィアの三人…?」
いーーやこれはまずいかもしれない。二人には失礼だけど俺入れて三人…行けるか?
「あの、入国しなければいいだけであるならば、俺は外からの援護が出来ますよ」
カミスは手を挙げ、そう言う。
「本当か!?」
「えぇ、俺の盤面支配魔法はかなり広範囲まで広げられますから…姫を狙う対象が、ディアマテ関連であれ、誰であれ…俺の援護出来る範囲であればいくらでも護れます」
「そうか…!それなら…まだなんとかなるかもしれないな…!」
「えと…盛り上がってるところ悪いんですが…」
レフィアが気まずそうに俺を見る。あぁ、嫌な予感しかしないんだけど。
「一応私…ネオミシスカに囚われてる元ディアマテ解放教の関係者…という立場ですので外には出れないんですよ…そのことはメグメルスも知っているでしょうし…」
「あぁ…そうか…そういえば、メグメルスって前にエルフの国の会議で来た奴だったっけ…?あのわがまま娘」
「そうですね。それに、俺たちが支配したエイメノカサスを除いて…都市開発が特に進んでいるカメアノサス、ネオミシスカ、エルフの国、魔王帝国、コクレクト共和国ですが…その中でも彼女は一番弱いです。なんなら魔法が少ししか使えないです」
サラムがそう説明する。
「えっ…じゃあなんで国のトップを張れるんだ…?それに、そんな弱い国じゃあいくら男の侵入を許可しないと言ってもすぐに潰されるんじゃ…」
「その理由には…あの国に居る実力者達の圧によるものが関係しています…」
カミスは目を光らせて語る。
「あの国のメイドは、基本的にカリンと肩を並べるくらいには強いんです。そしてその強さの者達がなんと総勢約百名…なにより、あの国には勇者と魔王より強いとされてるあの"最強の男"が居ますからね…」
「勇者と魔王より強い…だと!?誰なんだ?」
この世界の強者がまだ居るとは…俺も早く成長しなければな…そう思っているとカミスが口を開く。
「『クロス・ヴェングレル・ドラゴン』……普段国を出ないせいで知名度が全くと言っていいほどに無い最強ですよ…」
クロス…!確か、ウンディーネが昔の話をしていた時に出てきた男だ…!フェニックスと…ドラゴン…そして人間のクォーター…寿命まで最強のようだ。
「なるほど…それでこの国は保たれているわけか…」
段々とスケールのデカい話になってきたな…しっかし、そんな国を狙う奴らってのがわざわざ現れるのも気になるな?
「なるほど…分かった…それじゃあとりあえずミナノとカミスを連れて俺達は行くことにする。全員留守番は頼んだぞ!」
「「「了解!!」」」
残ったメンバー達は勢いよく返事をするのであった――。
◇
数時間後――。
俺達は汽車を使い、コクレクト共和国の門前に到着する。カミスは汽車から降り、すぐに近くの森へと潜伏しに行く。そして俺は事前にサナの姿となりこの国へと入ることになる。
「ここが…最可愛の姫の居る国…コクレクト共和国ね…」
門前を見ると門番も女性を起用しているようで徹底されている。
「すみません。入国をしたいのですが、許可を貰えますか?」
ミナノが門番に声をかける。すると門番二人は俺達を舐め回すように見る。
「通ってよし!」
よかった。結構判断甘めだ…そう思いながら門を通過すると、まず一番最初に目に入ったのはどデカい城だ。まさにお姫様の居るって感じの城。そうして、レンガ調の街…どこか静かな印象を受ける。
「あっ…そういえば門前に居るって言う約束だったはずだけど……」
俺は周りをキョロキョロと探す。
「ふふ…そういえばサナの時はちゃんと口調女性に合わせるんですね…」
ミナノが笑いながら小声でぼそっと呟く。
「う…いや…その方がいいじゃない?」
「ふふ…そーですねー」
そんな会話をしていると――。
――ピリリッ。
魔法石が再び光り出す。まさかと思い、俺は応答する。
『こちら、依頼したメイドです。門前に居るので、分かりやすく片手で丸を作りながらその辺を歩いていてください。私から接触しに行きます』
それだけ告げられ、再び通話は切れる。
「とりあえず…やりましょうか…」
ミナノにも言われ、俺達は片手で丸を作りながらふらふらと門前を歩く。すると、タキシードを着こなしてレモン色の髪を後ろで束ねている女性が俺達の前へと来る。
「カオス・エデンの人…ですね。裏へと行きましょうか」
◇
言われるがままとりあえず路地裏へと来る俺達。奥まで行くとその女性は止まる。
「どうも初めまして。私は姫一番の側近メイドであるアサトラム・エンヴィーナムと申します。ミロク様はそちらの白髪の女性ですよね?」
メイドらしい落ち着いた口調で話す。そういえばアサトラムは前の会議の時にも来ていた人だ。
「えぇ、そして隣にいるのがミナノ。あと一応この姿ではサナと呼ばせて。………あとそれより…メイドなのにタキシードなのね」
「えぇ、私は側近だと分かりやすく…それにこちらの方が動きやすいですから」
そしてアサトラムは咳払いをする。
「さて本題に戻りましょう。私が呼んだ理由は通信石でもお伝えした通り、姫の護衛任務です。それを目安としては"五日間"やって頂きたいのです。最も、あなた達の実力次第でもありますが…」
五日間……丁度俺の帰りたい日と同じではある。
「分かりました。ちなみに…護衛って言いますが…誰から狙われているのですか?やはりディアマテ解放教とかなのでしょうか?」
ミナノが聞くとアサトラムは首を横に振る。
「いいえ…私の知る限りではディアマテは一切関与されていないかと…姫を狙う者。それは――」
アサトラムは一息置いてから答える。
「――"忍"です」
スキーです!
今回の話はどうだったでしょうか!面白ければブックマークや評価をしていただけると励みになりますのでよろしくお願いします!宣伝や拡散もよろしくお願いします!




