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エピローグ.仲間達の空気

 その場に死体として転がったシメルド。バラが再び再生させようとすると――。


――ギィン!ギィュン!


白い閃光は死体は幾度も撃ち抜き、とうとうアウルの体は原型がなくなってしまった。


「あっ…く…貴様は誰だ!答えよ!」


マルメードが遠くを見据える。そこには見覚えのある赤髪の男の姿があった。


「――まさかこんな所に空間の裂け目があったとは…ここから先は"勇者学園"の仕事だ。部外者は立ち去りなさい」


赤髪の教師、「レオル・カルレリーノ」。彼は騎士達を連れてマルメードの開けた空間の中へと来ていた。


「目撃情報とは姿が少し違うようだが…そこのオレンジ頭がミロク・プリンスだな…そして、その両隣に居るのが捕まっていたはずの自称全知全能の娘クフゾと水の災害ウンディーネ…にしても、まさかエルフの国の女王がこんなところで国の反逆者に手を貸すとは…見損ないましたよ」


レオルは鋭い眼光をマルメードに向ける。


「ふん、状況を飲み込めていない癖に何を言うのやら…確かに一時的には手を組みはしたが、ミロクは今回のアマテラスの血を死守するという作戦へと貢献した…クフゾやウンディーネもそうだ。それに、ウンディーネは災害を引き起こしていない」


マルメードの鋭い視線にレオルは少し怯むが、お構いなしと言った雰囲気で近付く。

すると、バラの表情が先ほどと一変して苦しそうになる。


「はぁ…そろそろ限界ねぇ…クフゾ。ミロクを頼んだわよ…」


「は?」


クフゾがバラの方を向くとバラの姿は変わりだす。


「――とはいえ、このまま去るってのも…面白味に欠けるわね…」


光の粒子がミロクの体から抜け、地面に倒れる。そうして現れた姿は――。


「……?」


「き、君はッ!?なぜ……だ…?そうか…そういうことだったのか…!」


レオルは手を頭に置いて苦悩の表情をする。ここに居る中でレオルだけがその状況を理解したように地面にいる人間を見る。


「『カルノ・ミアシュ』――!!なぜ君がこんな所に居る!!」


「カルノ・ミアシュ……?誰なのだ…その男は…ミロクではないのか?」


「あぁ…いや…ミロクでもあるか…?その男の本当の正体は…学園入学当日…謎の事故で亡くなったとされる…カルノ・ミアシュだったようだな…しかし…あの死体はどうして…?」


レオルは腰に滞納している剣を振り抜く。


「まぁしかしそんなことは関係ない…この男は殺す。いくら国を救ったとて、この男によって失った人間の数…エイメノカサス全域の占拠…世界支配の野望…そこは擁護はどう頑張ったとて擁護出来ないものだ」


レオルの眼差しからは一切の慈悲など感じない。それはレオルの後ろに居る騎士達もそうだ。あくまでミロクは罪人として裁かれるべき存在として躊躇は許されないのだ。


「待て…ミロクは一般市民を無駄に傷付けるような男でもない。それはディアマテ解放教との戦いでやむを得ずに出てしまった犠牲の一つなのだ…だから――」


「もし、ディアマテ解放教とカオス・エデンが繋がっていたとしたら…?」


「んな…」


「マルメード様。今あなた本人が『実はディアマテ解放教の内通者だ』。なんて言われても信用されないのと同じく、もしミロク本人から『我は正義の味方』などと言われようとも、行動で示されなければその印象の払拭など、出来ないのですよ」


レオルは剣を握る力を強める。そして、レオルの言葉にマルメードも思うところがある。


依頼の用件が終わった今。ミロクを庇う必要はあるのか?マルス・アンドラウドの正体がミロクであること、カオス・エデンの組織の居場所、誰が仲間なのか、何人が所属しているのか…この全てを暴露したって構わないことだ。しかし、マルメードは動かない。それが正しい悪なのか?間違った正義なのか?

マルメードは常に心の中で思い続けている。『正しい悪と間違った正義はどちらを信用すればいいのか』。


「光魔法――第五深層。"デヴ・アルフェ"!!」


閃光がミロクの首を断とうとする――。


――ギャイインッ!


一つの光線が剣の軌道をずらす。

光線の飛んだ方向を、マルメードとレオルが見る。


「ちょっと待ちたまえよ…カオス・エデンの一人の仲間として、トップを殺されるのを黙って見てるわけにはいかないじゃないか」


「クフゾ・アルカミット……!ミロク・プリンスを今すぐにこちらに戻せ!そして、カオス・エデンの一人と言うのが本当なのならば、今ここで貴様を殺すことになるぞ!」


「――クフゾ!!戻ってこい…!今ならまだ…!」


マルメードは涙目になりながらクフゾに言い聞かせる。


「マルメードちゃん…」


ウンディーネはマルメードを宥めるようにして近付く。


「組織は…エイメノカサスにある…と言ってたね…」


クフゾは何もない空間の上に魔法陣を描き始める。


「空間転移(スペース・マジック)…!」


クフゾがそう言うとミロクを抱えたまま姿を消す。


「くっ…!消えたか…」


レオルは歯を食いしばりながら剣を鞘へと納める。


「クフゾ……」


マルメードはクフゾを思いながら、何もない空間をしっと見つめるのだった――。


◇


「う…あぁ…」


意識が朦朧としているが、なんとか俺は目を開ける。すると、一番見知った天井が俺の視界を埋め尽くす。


「ここは…カオス・エデン…?てことはエイメノカサスか…いつの間に……」


シメルドは倒せたのだろうか?いや、それよりも――。


「クフゾとマルは…!」


「――いやあの、僕はここに居るんだけど」


俺がベッドから飛び起きると、なんか待ってたみたいにサラム、ミナノ、カリン、レフィア、カミス、クフゾが椅子に座って俺を見ていた。いや、どういう状況?


「おお…居たのか…まさか…クフゾが俺をここまで?」


クフゾは頷く。


「そうだよ。まぁ、シメルドは倒せたよ…でも、とても後味の悪い結果になったとだけ言っておく」


「どういうことだ?」


「マルメードと…ウンディーネ…彼女達には何も言えないまま…そして、後悔が残ったままここに来たんだからね…それもなにもかも、バラとレオルという男のせいさ…」


「なっ…どういうことだ!レオルが…?なんで…!」


俺の意識が無くなっていた間、なにがあったのかは知らないが、どうにと本当に良くない状況になっていたらしい。


「バラは…自分が眠りに戻る前、君を本来の…『カルノ・ミアシュ』の姿に戻したのさ…そこに、エルフの国での大混乱でレオルがエルフの国へ来て…まぁ、あとは言わなくても分かるかな?」


「くっ…バラの野郎…!約束を破りやがって…!」


カルノの姿が本来の姿だとバレた……わざわざ偽装して殺されたことにしたってのに…これじゃ学園内に俺が変装して入ってるって思われてもおかしくない…いや、絶対に思われる…学生証もカルノのものを偽装して使ってるんだからな…


「てか、レオルはなんで来るんだよ…!エルフの国でそこまで騒ぎを起こしたつもりはないぞ!」


「ミロク様。自覚ないんです?ギリギリ国の外だったとはいえ、国の外壁破壊する程の魔法使っておいてよく言えますね」


そう言いサラムが新聞を開く。そこには――。


「『エルフの国で大爆発!?カオス・エデンの仕業か――』……だと…?これはマルかクフゾか…いや、ウンディーネがやったのか?」


俺はクフゾに聞くが、彼女は首を振る。


「いーや?僕とマルメードは何も…ウンディーネもやってない。ただ…ウンディーネから聞いたけど、『メノン』という女のせいらしい…それをカオス・エデンに罪を被せるなんてよくやるよ…」


メノン……そうか、俺がウンディーネに力を貸してやってほしいって言ったからか…


「まぁ…それはしょうがない。むしろ知名度が増していいさ」


「それは果たして本当に良いんでしょうか……?」


ミナノがツッコむ。なんだかこの空気も懐かしい。


「てかそういえば…クフゾはもうカオス・エデンのメンバーだったな…そうだ。せっかくだし祝杯でも挙げようか」


俺がそう言うとクフゾが以外の全員が目を丸くした。


「えっ!いいんですか?ミロク様!」


サラムは目を輝かせて犬のような目で俺を見る。


「ミロク様からそういうことを言うのは珍しいわね」


レフィアは少し驚いているような反応を見せる。


「もしかするとまだ体調が悪いのかもしれませんねぇ」


カミスは相変わらず薄気味悪い笑顔で俺を笑ってくる。


お前ら、俺のことをなんだと思っている。いや、まぁ…こういう気持ちを出せるのは、クフゾのお陰…なのだろう。


「ん…いいんだよ。今日くらいは気持ちを緩めよう」


そして全員と目を合わせるが、明らかに空気の淀んでいる"二人"が俺の目に入る。


「……」


とは言え、とりあえず俺達は地下に保管していた食材を取り出し、器具も出して"その料理"の準備を始める。


「ふん…これは俺の地元に伝わっていた最高のパーティ……"焼肉"だァ!!」


ちなみにこの後、部屋が油や肉の匂いで掃除が大変だったのは言うまでもない。


「おぉ!あっりがとうございますミロク様!早速いただきますか!」


サラムは肉をひょいひょいと自分の皿に移していく。


「ちょっと…サラム。あんま肉だけ食べるのやめてください…野菜も食べないとダメですし、皆の分が無くなっちゃうじゃないですか!」


ミナノはお母さんみたいなことを言いつつ肉を網の上に乗せ続ける。


「お前ら沢山食えよ!!」


「「「うおおおおお!!」」」


カリンが声を上げると自分の部下たちの剣士にたくさん食べさせている。


「お……」


ふと自然にクフゾへと視線を移すとどうすればいいのか分かっていないような感じだ。俺が喋りかけてやった方がいいかと思えば、レフィアがクフゾに近付く。


「もうちょっとゆっくりしていいのよ。私も最初は慣れなかったけど皆……優しいから」


レフィアは焼けた肉をクフゾの皿に優しく置く。


「あぁ…ありがとう。なんだか、こういう空気は懐かしい」


そこで俺はレフィアとカミスを呼ぶ。


「二人とも…ちょっと来てくれ」


◇


俺達は外に出て、二人を前へと立たせる。


「せっかくのとこ悪いんだが…レフィア。カミスの件について…特にもう何も思ってないのか…?」


「完全に忘れることは出来ませんよ…でも、私がなにか深いことに関わっている…と言うことは深く承知しています。まぁ最も私はそれを思い出せないわけですが…」


「レフィア。俺の行動には納得はしているみたいですが、どうも最近俺に当たりが強いんですよ〜」


カミスは笑い飛ばすが――。


「あのなぁ…カミス。レフィアの気持ちは考えやってくれないか…」


俺の言葉にカミスは真っ直ぐ視線を向ける。


「俺達は組織だ…そこのところはしっかりしてくれ。まぁ…ずっと上からな俺が言えることでもないし、お前の居てきた環境の影響もあるだろうがな…少しはリスクを考えろ」


「えぇ…すみません…俺の興味に巻き込んでしまったことに…責任は感じております…」


「俺にじゃなくて、レフィアに謝るんだな」


するとカミスはハッとしてレフィアへと向き直る。


「えぇ…ごめんなさい……」


俺が言ったけどコイツが真面目に謝っているところを見ると少し気持ち悪いな。


「もう別にいいわよ。今後は許可さえ取ってくれれば組織のためには動くから」


「よし、それじゃ焼肉の続きだ!いっぱい食うぞ!」


「「はい!!」」


新たな仲間…そして、新たなる組織の空気――。

まだまだ目標へは遠いし、沢山の障害もある。だが、カオス・エデンはまだまだ成長を続けられるだろう。

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