黄金の炎に終焉を
オレンジ色髪の男はどこまでも魔力の底を感じなく、圧倒的な圧により逆にその魔力圧を感じない。そんな不気味な雰囲気が場を呑み込む。
「てめぇ…誰だよ…"ミロク・プリンス"――!!」
「……この姿ではミロクではなく、『バラ』と呼ぶがいい」
男は口を開く。そう、姿はミロクそのもの。しかし、髪色はオレンジ色で目は水色。姿はほぼ変わらないが、別人にも見えるほどには今のミロクは変わっている。
「く…う…君は…この世界に顕現されてはダメな存在…だ…!今すぐにミロク君の身体から離れるんだ!」
クフゾがバラに向かって弱々しく叫ぶ。
「かと言って…今この状況を、ミロクに打開出来るほどの事は出来ないわ…特にそこのエルフの王女…」
バラは倒れてぐったりとしているマルメードを指差して見る。
「あれはもはや死んでいる…それを助けられるのは間違いなく今、この世界で私だけ…そしてこのシメルドという男も、今は私だけしか倒すことが出来ない。それならもう出てきていい理由にはなるわよね?」
「……そうか…い…でも、表世界にわざわざ顕現したんだから、それだけの対価は支払ってもらうよ…?」
「別に構わないわよ。さっ…さっさと倒しましょう」
バラは興味もなさそうな目でシメルドを見る。
「く…そ…!くそくそくそくそくそがぁぁあ!!」
黄金の炎と空中を無数に舞う血の武器がシメルドの背後を覆う。魔力の渦がその場を支配しだす。
「はっ…!魔力はもう使い切ってもいい…!てめぇをぶち殺す!!」
シメルド及びアウルの身体からは血管が激しく浮き出し、激しい苦痛に襲われる。
シメルドはもがき苦しみながらも、その"禁忌の魔法"の名を口にする。
「ぐぅあああああ!!魔力限界加速魔法!!」
自身の持つ因果律全てから魔力を自分へと送り込み、その魔力全てを使う禁忌の大技…二度と魔力を練れなくなるが、その火力は絶大である。
「死ね!!くそミロクぅぅぅぅぅぅ!!」
空間を支配する程の黄金の炎と無数の血の武器がバラに向かって襲いかかる。普通の空間であれば地形が変わるほどの威力になるだろう。
「へぇ…なるほど…その魔法技術には感心ね…賞賛させて貰うわ…まぁ意味無いけど」
そう言いバラは黄金の炎を前に手をただ前に突き出す。
――ギュウウウウンッ!
黄金の炎がバラに直撃するかと思った時、黄金の炎はまるで吸い込まれるかのように小さくなり、その姿を消す。
「はっ…おま――」
「終わりだ…」
シメルドが言いかけた時、身体が真っ二つに切り裂けて地面に落ちる。
「さて…治してあげようかしら…」
バラはマルメードになにかの魔法をかける。すると、先ほどの傷口は一瞬にして塞ぎマルメードの血色に生命が宿る。
「――うっ…い、生きている…?」
マルメードの意識は完全に戻る。
「さっ…あんたもよ」
バラはクフゾの右手へと手を伸ばそうとするが――。
「まて…一体なんのつもりなんだ…!十五年前、突如として姿を消したかと思えばいきなり復活して…」
「まぁまぁまぁ落ち着け…姿を消したと言ってもそれによって世界の法則が変わるわけでもないし…」
「そういう問題じゃないだろう…大体、どうして姫野弥勒という男を転生という形で助けようとなんてしたんだ。君らしくもない…そんなことしなければミロクくんに従う必要なんて無かったのに…」
クフゾが話しながらもバラはクフゾの右手を治療する。
「私が好きでしたのよ…文句あるわけ?」
「ない…と言ったら嘘になるかな…君がしばらく姿を見せなかったせいで、神々達は色々心配したんだから」
バラは神達の顔を思い出し、どこか苦い表情を浮かべる。
「うぅ…あいつらは…まぁいいのよ…それより、あんたは全知全能の神本人じゃないのにそんなところまでよく知ってるわよね」
「まぁ記憶は一部共有しているわけだしね…それは分かるには分かる…」
「そう…あぁ…そういえば――」
バラは指をパチッと弾くとシメルド基いアウルの身体が再生する。
「――あっ…!?あ…なん…で…」
「シメルド…ディアマテについて、色々と教えてもらうわ…"この子"も混ぜてね…」
そう言いながらバラが空間を開くと、ウンディーネが黒い空間の中へと入って来る。
「あれっ…ここは…?」
ウンディーネが辺りを見渡して状況を理解しようとする。
「やぁウンディーネ…マルメード達は色々あったけど…なんとか無事だ。そっちは?」
「あぁ…私は雷鳴司祭を名乗る男を倒したわ。情報は聞き出せなかったけど…まぁそれにこっちも、ギリギリ国外で大技使ったとは言え、エルフの国からの大技で周辺は調査されてるわ…」
「別に構わない…今から赤血司祭の男から情報を聞き出すつもりだったからね…」
クフゾがシメルドを見るとセレンは少し目を見開く。
「えっ…ディアマテ関係者は全員なにも話せないんじゃ…?」
「そうだね、だから…"話させるようにする"」
クフゾが言うとバラはシメルドの前で手を振る。
「なっ…何をしやがったてめぇ!!」
「何…?あんたのディアマテに関わる全ての因果律を消し去っただけよ。これで制限は無くなったわ」
「は…?なんつー…バケモンだよ…てめぇ…」
「はいはい、どうでもいい。さっさと話させてもらうわ」
「……喋んねぇっつっても…強制的に喋らすんだろう?そんなら俺からもう喋るとすっか…」
シメルドはその場であぐらをかき、口を開く。
「まずだな…ディアマテ復活は俺達の目的ではあるが…それは最終目標じゃあねぇってことがまず一つだ」
「なん…だと」
マルメードが息を詰まらせる。
「それなら…!一体…貴様らの最終目標は何だと言うんだ…!」
「俺らの最終目標…?そこまでは知らねぇ…いや、知らねぇってか…教えられてねぇんだよなぁ…あっ、コイツぁ嘘じゃあねぇぞ?疑うってんならそのバラってやつの力で脳内覗き見たっていいんだぜ?」
「いいえ…その必要は無いわ…なにせ、私には嘘ついてるかついてないか分かるもの…にしても、妙ね…」
バラはシメルドの記憶を覗き見る。嘘をついているわけじゃない。そう分かってはいても、なぜ真の目的を教えられていないのか、組織として見るならおかしい。目的を話されずにどうしてシメルド達は目的遂行の為に動いているのか?
「ふ〜ん…記憶に穴が空いているように見えるわ。記憶を抜き取られたか…何か罠が張られていたのかもしれなかったわけね…チっ。しくじったわ…」
「それで…?一つ目…ということはまだ話すべきことはあるんだろう?聞かせてほしい」
クフゾはシメルドに聞く。シメルドは気だるそうに答えようとする。
「あぁ…そうだな。まだ話すべきことは――」
――キィイイイインッ!!
「ぐっ…あ…」
白き閃光が、シメルドの身体を穿つ――。
シメルドは再び命を落とす――。




