稲妻走る戦場
ウンディーネはカロラントの首をギチギチとさらに強く絞める。
「ぐあぁぁっ!教えれねぇよ!教えれるわけねぇだろうがよ!!」
カロラントは声を振り絞ってなんとか言葉を口にする。
「ふーん…まぁそうでしょうね…それならもうあなたに用は無いから死んでくれないかしら?」
「待て待て!俺もどこまで言えるか分からんが…カリスイノのせいでディアマテ解放教に関する詳しい話っていうのは外部には出来ないんだよ!」
「カリスイノ…?」
ウンディーネは首を絞める手を少し緩め、カロラントを喋りやすくさせる。
「ゲホッゲホッ…なんだ…ミロクから聞いてないのか…?カリスイノ・マレーティカだ…」
ウンディーネは思い出す。カリスイノはネオミシスカで襲ってきたディアマテ解放教の実力者だ。
「思い出したわ…大体魔法は把握してる。だから、ディアマテ解放教を作った理由くらいは教えてくれないかしら?」
「それは言えないな…もちろん、俺の意思とかじゃなく、カリスイノの魔法でだ…だが、これも悪い情報ではないだろ?なにせ深い情報が言えないってとこは、ディアマテ解放教関係者が何か情報を漏らした時にそれはすぐに嘘だって分かるってことなんだからな」
「それもそうね…それじゃあ今度こそあなたには死んでもらうわ。さようなら」
――バリリィ!!
「うぐっ!?」
ウンディーネの体に電流が勢い良く流れ、一瞬にして体を焦がされる。
体が震え、動かないウンディーネを前にカロラントは「ニヒヒ」と笑いセレンを見下す。
「はっ…油断したな。俺の電気は魔力にも通すことが出来る!いくら身体を絶縁体にしようが、それを魔力で行なっているなら意味がねぇ」
ウンディーネは体を起こせずに地面でビクビクとしていることしか出来ない。
『まず…い…電気を魔力にも通せるだなんて…こんな攻撃何回も喰らってたら体が蒸発して消える…!』
「終わりだな…精霊だって言うからちょっとは期待してたが…所詮は水か…」
カロラントは手に魔力を纏わせる。その魔力はビリビリっと手の中で弾け、今にもウンディーネを殺す勢いで飛びかかりそうだ。
「電導!!」
カロラントはウンディーネの首にめがけて電気の魔力を纏った手を近付ける。
「――七大起源魔法…"流星群"!!」
――ゴオオッ!!
「うえっ?ああああ!?」
どこからか声が聞こえ、魔力を纏った巨大な石がカロラントの頭上に振り注ぐ。
「あいたっ!いたっ…いたって…あんま痛くねぇな…」
カロラントはデカさの割には火力の無い流星群に目を丸くして粉々になった魔力の石を見る。
「あちゃー…やっぱりまだ質量が足りないか…」
草むらから姿を現したのは髪色が紺色で目が星のような少女――、「メノン・フライメド」だった。
「う…あなたは…?」
ウンディーネはメノンを見ながら立ち上がる。
「はじめまして、私は勇者学園の生徒のメノン・フライメドです!マルスくんの"お友達"です」
「マルスくん…て…なるほどね…」
◇
――一日前。
「メノン」
マルスがメノンに声をかける。メノンは不思議そうな顔をしてマルスの方を振り向く。
「どうしたの?」
「明日のオークション…ディアマテ解放教の幹部が恐らく来るはず、そこでエルヴィーナの涙の湖でウンディーネが幹部の誰かと戦ってくれるらしい。もしウンディーネがピンチになっていたら向かってやってくれないか?」
突然のことにメノンは頭にハテナを浮かべて硬直する。
「えぇーと…ウンディーネって四大災害精霊の…?しかもなんでエルヴィーナの涙に…?」
「う…詳しいことはいいんだ。とにもかくにもウンディーネがそこに居る。だからなるべくウンディーネの近くに居てやって欲しい」
マルスはエルヴィーナの涙をじっと見つめる。メノンはそのマルスの姿を見て少しからかうことにした。
「それは…戦いに勝つためのお願い…?」
メノンは上目遣いでマルスを見つめる。
「…?そうだが?」
「ふーん…じゃあ嫌だ」
メノンが腕を背中の後ろで組んでマルスとは逆の方向を見る。
「は…?なんで」
「だってー、マルスくんっていつも命令してくるような感じするもん…凄い距離を感じる!」
そう言いながらメノンは腕をパタパタと動かせる。
「だから…さ…友達としてのお願いなら…いいけど?」
メノンはマルスの方を再び向き直してまた上目遣いで見る。
「あぁ分かった分かった…それじゃあ今日から俺とお前は友達だ…だからこの願い引き受けてくれないか?」
マルスは少し呆れたように言うも、メノンは目をキラキラと輝かせて頭を上下に動かす。
「うんうん!!いいよー!でもさ、私戦えないよ…?いくら最強の魔法…流星群を使えるとは言っても…魔力量が……」
「それなら心配要らない。俺の余りに余りまくっている魔力を分けてやる。まずは魔力を温存して戦え」
マルスはメノンの頭の上に手を置き魔力を分ける。するとメノンは少し顔を赤くしてじっとして魔力を受け取る。
「な、なんで温存して戦うの?」
「流星群は馬鹿みたいに強いけど馬鹿みたいに目立つからな。不意打ちじゃ使いにくい。そこでなんとか隙を見つけて魔力全ぶっぱの流星群を放て、チャンスは一回だぞ」
「えぇえぇ!?そんな…一回だけって…てかぶっぱってなに…?」
「ま、まぁ…とりあえず全力ってことだ…とりあえず、お前には出来るはずだ。ウンディーネと協力して頑張ってくれ。必要なら応援だって呼んでいい」
「うん!分かったよ!」
◇
「ってな感じで…来ましたよ!」
メノンは元気よくウンディーネに話しかける。
「あ…あぁ…そうなのね…助かるわ。あなたと一緒ならあの人も倒せる気がする」
ウンディーネは両手に水の魔力を作り、カロラントを見据える。
「回復が必要だったら言ってくださいね…いつでもするので…」
「ふふ…先に若い子に心配されちゃったわね…それじゃあ存分に頼らせてもらうから…」
そして、メノンはカロラントの前へと一歩踏み出す。
カロラントは警戒を強めて体に纏う電気を強くする。
「ふふん…あなたなんて、雑魚のチビのウスノロのアホよ!!」
その場の時が止まる。カロラントとウンディーネは無表情でメノンを見る。
「あ…?は…?もう攻撃していいか…?え…?」
カロラントは困惑しながらメノンに攻撃をしようとする。
「今だー!やっちゃえドラノくん!!」
メノンがカロラントに向かって指を指すと草むらから影が空中へ飛び出す。
「闇影の炎!」
「んなっ…!!」
――ボウッ…
カロラントの影が黒色の炎で燃え、カロラントの体を燃やす。
「ぐおおおっ…!あちぃ!!」
カロラントは体を火だるまにしながら湖へと身を投げ出す。
「え…と…あなたは…?」
ウンディーネはメノンの隣の赤と白の髪色をした少年を見る。
「ドラノ・カラメマスだ…メノンに連れてこられた…」
ドラノはポケットに手を突っ込んで周りをジロジロと観察する。
「連れてこられたって…別に強制したわけじゃないでしょー!」
「分かった分かった…てかそんな茶番してる暇は無いぞ」
「あ…」
湖からぶくぶくと気泡が浮かんできて、カロラントが水面から飛び出して地面へと着地する。
「くそ…やりやがったな女!!」
カロラントは手に電気を溜め三人に向かい放出する。
「放電砲!!」
電気の玉が勢い良く放たれ、三人の元へとすぐに到達する。
「防げ!闇布蛇!!」
ドラノ、メノン、ウンディーネの影が一つに集約し、デカい影の盾となる。しかし――。
――バリッ!!
「「「うわああああっ!!」」」
完全には防げず、カロラントの攻撃により影は破壊され、三人は吹き飛ばされる。
「ふん…俺を馬鹿にしやがって…二度と逆らえないようにしてやる!」
「あなた…ほんとに馬鹿ね…」
ウンディーネは口角を上げてカロラントに言う。
「なんだと…?」
「自分の攻撃で…周りがよく見えていなかったんじゃないかしら…?」
「なっ…まさか…!」
カロラントは影が大きく出来ている地面を見て、異常に気付き上空を見上げる。そこには――。
「な、なんじゃこりゃああああ!!」
エルヴィーナの涙を覆い尽くす程の大きさの、メノンの流星群だった。
「くそっ…!どうせさっきみたいにあんま重くはねぇだろ…!」
カロラントは身体から空に到達する程の電気の魔力の柱を放出する。
「はぁぁっ…!!雷鳴砲弾電磁機関!!」
雷の光線が光の速さで流星群を穿とうとする。しかし、流星群のあまりの大きさにそれは無力になる。
「嘘だろ……?いや…まだだ!逃げ切ってやる!」
カロラントはまだ僅かに残っている魔力で森を駆け抜けようと身体を森の方へと向ける。しかし、カロラントは視界がグラグラと回り出す。
「あ…?なんだ…これ…」
カロラントは地面に腰をついてその場に座り込む。
「ようやく効いたのね…」
ウンディーネはカロラントに見せつけるように自分の魔力を見せる。
「私の魔力はね…この地球上の水なら大概どこからも取り出せるの…だからスラム街の汚い水をそこの湖に少し混ぜたの…あなたは自分で飛び込み、自分を苦しめた…」
「ふ…ふざけ…うぅ…おええっ…」
カロラントは地面に吐瀉物を撒き散らし、じわじわと近付いてくる流星群を見るしか出来なかった。
「ふざけ…ふざけるなよぉぉぉ!!!」
「二人とも…!影に隠れるぞ…!」
ドラノはメノンとウンディーネを引っ張って影の中へと潜る。
――ドガァァッ!!
地上では、カロラントは流星群によって蒸発するようにその姿を消す――。
◇
「はぁ…はぁ…勢い余って殺しちまったか…まぁいい…」
俺はシメルドに向かい、極炎と狂風の魔界を放った。きっとエクスだってまともに喰らえば致命傷な程の攻撃だ。
「よし…さっさとクフゾ達の所へ――」
――グシャッ。
「えっ……」
俺の腹から血の刃が勢い良く出てくる。内臓や骨がグシャグシャにされる感覚が俺を襲う。
「あああああっ!!?」
腸が俺の腹の中を飛び出し、地面へとぼとぼと落ちる。腰を抜かして俺はその場にうずくまって座る。
やばい…これは痛すぎる…死ぬ…死ぬ…やばい…
「よぉ…ミロク…腹の中からこんにちはぁ――!」




