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血の舞う戦場

 そもそも、コイツらどこから入って来た…?警備は万全だったはず……


「ハハッ。今、どうやって俺達が入ってきたのか分からねぇって顔してんな…いいぜ、特別に教えてやるよ」


シメルドはふふふと歯を見せて煽るように笑う。


「最初、俺が身体に居た男の中の血液に俺が入ってたんだよ。ゴツい身体だったし、隠れるのには丁度よかったぜ……魔力測定検査でもすれば良かったものを…」


「そうやって…貴様はこの百万という命を奪ったのか…ディアマテの復活のために…!!」


俺が睨んで言うとシメルドは目を細める。


「あぁーやめろやめろ。ディアマテのためだっつーと、俺がディアマテの復活のために動いてると思われるじゃねぇかよ」


「は…?どういうことだ…」


え、ディアマテ解放教なのにディアマテ解放の為に動いていない……?コイツからは絶対に話を聞かなくてはいけない…そして、こいつはサラムから聞いていた通り、他の司祭よりも圧倒的に魔力の質が桁違いだ。


「マル!クフゾ!!周りの雑兵は任せた!!」


俺はマルメードとクフゾに向かって叫ぶ。


「分かった!!それなら、ミロク!この中で戦うがよい!!」


マルメードが手をバッと横に振ると、空間が俺とシメルドを覆う。


「あ…?」


「ここは…」


どこに飛ばされたかと思えば、そこは俺が試練で使った、だだっ広い黒い空間だった。


「おいおい…場所を変えたところでどうにかなんのかよ?」


シメルドが挑発をして俺を煽る。


「変わる。お互い…本気を出しやすいだろう?」


「上等だ…」


シメルドは自身の血を使って手元に剣を作り、俺に剣先を真っ直ぐ向ける。


「それじゃあ行かせてもらうぜ――」


シメルドは近付いて剣を俺に振り被ってくる。


「単純な剣筋だな…」


俺は剣を弾こうと、自分の剣でシメルドの手元に攻撃しようとする。


「へっ…まともに攻撃するかよばーか」


「…!!」


シメルドの剣先はまるで銃弾のようにぶっ飛んで俺の顔に直撃しそうになる。


「くっ――!!」


俺は後ろに下がり、間一髪俺の顔をすれすれで剣先はどこかへ飛んでいく。シメルドはニタニタと笑う姿勢を崩さない。


「なるほど…剣は騙すためのブラフだったか…」


「そーゆーこったよ。俺はお前を"本気"で殺しに行く」


向こうは本気に俺を殺しに来ている…俺はお前を殺せないって言うのに…最悪だ。


「面倒くさいから、早めに決着つけるぞ」


ここは異空間…高火力の魔法はいくらでもぶっ放せる。しかし、それは相手も同じ…とは言え、俺程の魔力量の持ち主は今のところエクス、レヴィア、カーンズくらいしか見ていない。それにシメルドがあいつらに並ぶ程に強いとは思えない…どう抗おうが、俺の全力に耐えれるはずはない。だが…あの自信はどこから来ているのだ…?


「おいおい、そう言う割には随分と考えてるような顔するじゃねぇか?ビビってるのか?」


なにか…隠し札があるのか…しかし、相手の血の中を移動しようが、操作しようが、結局は魔力で行なっていることに過ぎない。圧倒的な魔力量の前ではその魔法は通常の攻撃魔法より弱いものになるはずだ。つまり――


「反撃の手などないッ!!」


俺は両手に炎魔法と風魔法の魔力を纏わせ、魔族の魔力の性質を入れる。

莫大な魔力の渦が辺り一帯を取り巻いていく。


「ほほう…噂には聞いちゃいたが、人間のくせに魔族の魔力が使えるとはな…」


コイツは魔力の流れ的に人間なはず。この量の魔族の魔力なんてぶち込めば一発で死亡確定レベルだ。


「死ね!!極炎(ブラスト・)と狂風(ウィニング・)の魔界(デスロード)――!!」


◇


その頃、マルメードとクフゾは白マント達と、魑魅魍魎の魔獣達の攻撃を避けつつ、確定にディアマテ解放教側の戦力を削ぎ落として行っていた。


「次元斬(スペース・ブレード)!!」


マルメードが手を振ると、空間を裂いた斬撃が白マントと魔獣達を斬り裂いていく。


「自然よ!僕を守れ!」


クフゾの足元から地面を割って木の根が生え、白マントと魔獣達を串刺しにしていく。


「初めて使ったけど、悪くないね。"自然魔法"」


自然魔法は本来、エルヴィーナが妖精達の加護を受けて使える固有の魔力で行なっているものだった。つまり、大地魔法と同じで魔力の七大元素に属さない無色魔力だったものだが、過去にエルヴィーナが自然魔法を広めたお陰で今、自然魔法は定着化して来ている。


「――全知全能…と言う割にはやっていることが弱すぎやしないか…?なぁ…」


低い声が会場に響き渡る。強い魔力の反応が扉の方から流れてくる。


「よぉ、昨日ぶりか」


「貴様は…!」


マルメードとクフゾが振り向くと、シルフィードが会場の上から階段を降りてゆっくりとマルメードクフゾに近付いていく。床にある血の音とコンクリートの音が不気味な雰囲気を出している。


「はぁ…全知全能のガキ……少しは期待してたんだが、やってることが地味だなぁ…お前」


「はは…勝手に期待されたって知らないよ。それに僕は半分全知全能だからね」


そう言いクフゾは手を広げて上へと掲げる。


「とは言え、半分全知全能名乗るからにはそれ相応の力は見せようじゃないか!!」


クフゾは啖呵を切り、会場の部屋を覆う大きさの魔法陣を展開する。


「おぉ?やるじゃないかぁ…このサイズなら十分俺を消し飛ばす力はあるな…!さぁさ!さっさと俺に見せてみろよ!!」


シルフィードは目を見開いて興奮した様子でクフゾを見る。


「勘違いしているようだから教えてあげるけど、今回の僕の任務はあくまでアマテラスの血…そしてエルフの国を守ることだ。つまり――」


クフゾはニッと笑い、手を握り拳にして魔法を発動させる。


「わざわざ君を完全に殺すまで戦うことはしなくてもいいんだ」


「――なっ…!まさか…貴様ぁ!!」


「自在転移(フリー・ダム)!」


「くそがっああああああああ!!」


その瞬間、シルフィードの姿は綺麗さっぱりと消える。クフゾの使った魔法の正体は大魔法の一つ。自在転移(フリー・ダム)。普通の転移魔法とは違い、その発動範囲は地球上の魔力の存在する場所ならどこにでも飛ばすことが出来る。


「やるな。クフゾ」


「まぁね。昔マルメードが教えてくれた空間魔法のお陰だよ」


「昔見せただけで実現出来るのは十分天才だ。流石、ガンスールの娘だな」


マルメードが褒めるとクフゾはニッと笑う。


「ふふん、ディアマテ解放教幹部と戦ったんだから、アイスの報酬はプラス五個だからね!」


◇


「はぁ…ミロクくん達…大丈夫なのかしらぁ」


ウンディーネは湖に浸かりながらため息をつく。

綺麗な空がセレンの瞳には映るが、嫌な予感はどうしても絶えない。


「そういえば…」


◇


――昨日。


「ウンディーネ」


ミロクの声がセレンに向けられる。


「どうしたの?」


「お前は水の精霊…分かってるとは思うが…電気の魔力にめっぽう弱いはず…そこでさっき言った司祭の一人、カロラントにだけは気をつけて欲しい。コイツは雷を使う…お前がこの戦いに参加することも、この国に居ることも向こうは知らないと思うが…もしそっちに来た時には十分な注意を払って戦ってくれ」


◇


「――って言ってたわよね…まっ関係ないけど」


すると、湖の奥の草むらからガサガサという音が聞こえる。


「あら…動物…なんて…そんなわけないわね。こんな魔力量…」


――バリリッ!!


「ふっ!」


ウンディーネは突如飛んでくる電気を華麗に飛んで避ける。

電気が飛んできたのは草むらからだ。


「はぁ…飛べるのかよぉ。水の精霊ってそんな強いわけ?」


草むらから出てきたのは、黄色い髪に赤い目をした男――。


「あら…あなたね。カロラントくん。話は聞いてるわ」


「えぇ…こっちの情報漏れてるわけ…?くそ最悪なんだけど…まぁでも…」


電気が弾ける。しかし、ウンディーネがそう気付いた時にはもう遅い。


「あっ…!!!」


ウンディーネの体に電撃が走る…はずだった――。


――ガシッ。


「えっ…?」


電気体になっていたカロラントの体はウンディーネに掴まれ元に戻る。首を絞められたカロラントは急なことに動揺する。


「な…ん……で?」


ウンディーネは「ふふふ」と笑う。


「あら、知らないかしら?超純水…絶縁体よ」


「なる…ほど…体を超純水に変えたわけか……くそ…!」


「さて、洗いざらい吐いてもらうわよ。あなた達の…目的を――!」

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