未来を決める手
世界が進む。光が俺の視界を覆う。
『――次元の挟み手!』
視えている。
『マルメード!ここから追撃だ!!』
あぁ、視えるぞ…!
「残念だが…お前らの未来は…書き換えさせてもらうぞ」
「なんっ――」
俺は一瞬で二人の間合いに入り込み、マルメードとクフゾに触れる。
「ふん…」
「なっ…なにをした…?」
マルメードもクフゾも、呆気にとられたような顔をしている。
「ははっ…ここから…お前らの攻撃は一切受けずに勝利させてもらうぞ」
「好き勝手に言いおって…!!」
マルメードは俺に飛び込んで来る。
そして上空で魔法陣を展開する。
「――次元の挟み手!」
魔法は発動され、俺をハサミで切るように挟み込む…はずだった――。
「んなっ…!!」
マルメードの魔法陣は砕け、魔法は発動せず終わった。急な事態にマルメードは空中で体勢を変え、俺から離れた地面に着地する。
「な…なにを…したのだ…?」
マルメードは目を疑う。魔法の発動の失敗など、子供の頃を除けばしたことがなかったからだ。
「まっマルメード…?どうしたんだい…?魔法は?」
「いや…今…発動を…」
マルメードは自分の手をじっと見る。
それだけに、マルメードは自分の見た光景を疑っているのだ。
「――俺が解除したんだよ。魔法をな」
「なっ…」
「そんな…魔法の解除…なんて…そんなの魔法の発動者にしか、発動するか解除するかの権限はないはず…」
俺の言葉にマルメードもクフゾも息を呑む。
「あぁ…そうだな…俺が解除したってのはちょっと間違ってる…正確に言うなら――、"俺がそうしたかったから未来に書き換えさせてもらった"…って言うのが正しいかもな」
「そ、そんな…そんな魔法は…今までのどこにも…!」
「――俺が編み出した…。そんな理由じゃダメか?」
「――っ…!」
マルメードは拳を固める。ここからは知らない未来だ。俺の干渉している未来は視てない。ここからクフゾが挽回してくる可能性だってあるかもしれない。
しかし――、
「くっクフゾ…!お主は魔法が使えぬのか…?」
クフゾは冷や汗をかいてただ地面を見る。
「つ…使えない――」
やはりクフゾも魔法を使うことは出来ない。
「俺の勝ち…でいいな」
マルメードは悔しそうにこくりと頷く。
「それじゃあ…解除してやろう」
俺は未来創世を解除する。
「さぁ…さっさと空間を開けてくれマル」
「本当は妾に頼まんでも出来るでおろうに…」
マルメードは空間を裂き、元の場所へと戻る。
俺は一度マルスの姿となり、この空間から出る。
「いやいや…マル。お前の魔法技術は凄い。空間系の魔法は、座標やらをしっかり把握してなければ全然違うところに出てしまったりするからな。空間魔法の技術だけなら俺よりも上だろう――」
「それに、正攻法じゃお前らを突破することは無理だった。お前らは強い」
マルメードは顔を赤らめ、視線を逸らす。
「そっ…そんなことはないぞ…」
クフゾは八重歯を見せて笑う。
「ははは…マルスくん、罪な男だ」
「えっ、いや…そんな褒めた…!わけじゃ…ないぞ」
「もう…素直じゃないなマルスくん…」
素直…か。ほぼこのテンションでやってきた俺にはしばらくそんな顔を見せることは到底無理そうだ…
「そ、そんなことはない……それより、俺の仲間…のミナノの所に行こう」
「了解だ」
マルメードは魔法陣を展開する。
「そうだ。聞いておきたいのだが、そのミナノという者はどこへ?」
一応、ミナノからカメアノサスに居るとは聞いていた。だからカメアノサスに行けば会える…とは思うのだが。
「とりあえず…カメアノサスに行こう」
「承知した」
マルメードはカメアノサスまで空間を繋ぎ、その次元の穴の中へと入る。俺とクフゾもマルメードに続いて入る。
「っと…あとは探すだけか」
しかし、俺は一つ確認したいことがある。
「なぁ…クフゾ…この世界ってストーカーの概念とかってある…?その人を追跡したらダメ…みたいな」
クフゾは目をパチパチとさせる。
「その…すとーかーってのは分からないけど、人を追跡すること自体は、悪用目的がなければ一応いいよ」
よかった…実は俺はミナノとかサラム達にバレないように魔力探知機を付けていたからある程度近くに行けば場所が分かる…
「それじゃあ、ミナノを探すとしよう」
俺は近くからミナノの魔力気配を感じる。
「マル。丁度いい場所に来れたみたいだ…」
俺は走ってミナノの元へ行く。
するとピンク色の髪が特徴的な二人組が並んで歩いているのを俺は見る。
「あれだ」
俺はその人物の肩に触れ、振り向かせる。
「えっ?」
久しく見てなかったミナノの私服を俺は見る。
「よう、ちょっと裏で話すぞ」
「な、ナンパだーーーっ!?」
その言葉にミナノの隣に居たミリアも大袈裟に俺を振り向く。
「あんたミナノに手を出したらぶっ飛ばすわよ!?」
「いや、ミリアはともかくミナノは覚えてろよ!?」
そういえばマルスの姿をミナノに見せるのは地味に久しぶりだった…
◇
なんとか路地裏に連れてきた俺はミナノとミリアを前に立たせる。
「この緑髪のエルフがマルメード。金髪のガキがクフゾだ」
「ガッ――!?」
「いやいや、理由は分かりましたが…『クフゾだ』。とかじゃなくて、休暇くれたじゃないですか!!約束破るんですか!」
クフゾが何かを言いかけるがミナノに遮られる。
ミナノは少し涙目になりながら必死に俺に呼びかける。
「すっすまん…些細なお願いなんだ…それだけ聞いてくれないか…」
ミナノは頬を膨らませて言う。
「むっー…なんですか?」
「セレンをここに呼んでほしい」
「は…?」
ミナノは表情を固める。
「ミロクさん、あなたは知らないかもしれませんが、セレンはかなり綺麗好きな神なので水のある所か、主のピンチくらいにしか動きませんよ」
ミリアはミナノの左耳の星形のイヤリングを見つめながら言う。
「そうなのか…それじゃあここに水溜りでも作るか?」
「馬鹿なんですかミロク様」
ミナノは相変わらず支配者に向かって切れ味抜群の言葉を使うものだ…
「流石に水溜りじゃダメか…」
「それに、ここでセレンを呼べば異常な魔力量で住民達を驚かせてしまいます」
「それもそうか…」
「それなら、イヤリング越しで話すことは出来ないかい?直接召喚は別に必要ないんだ」
クフゾはミナノに言う。
「あぁ、それなら…聞いてみますね」
ミナノはイヤリングに手を当て、目を閉じる。
すぐにミナノは目を開ける。
「聞けました!用件はなんですか?」
「四大災害精霊の一人、ウンディーネの居場所を探せないか聞いてほしい」
「四大災害精霊…また随分と危ない場所に足を突っ込んで行きますね…」
そう言い、ミナノは再びセレンとの会話に入ったのか目を閉じる。
しばらくしてミナノは目を開け、西側に指を向ける。
「あの、エルフの国に居るみたいですけど…」
「えっ!?」
と、灯台下暗じゃねぇか。
「ま、まぁ場所が分からないよりかはいいじゃないか」
「そ、そうだ。よかったじゃないか」
クフゾもマルメードも少し俺を慰めるように言うのやめてくれ…!心に刺さる…
「すまないな…ミナノ、ミリア」
ミナノは呆れたように俺を見る。
「ホントですよ…あと数日の休暇、きっちり楽しませてもらいますからね!」
なんか…申し訳ない。
「あ、あぁ…そうしてくれ…ところで、エルフの国のどの辺りに?」
「えっと、東側に大きな湖?があって、そこに居るみたいですよ?」
「東側…?」
「あぁ、きっと"エルヴィーナの涙"のことだな」
マルメードは心当たりがあるようにして言う。
「エルヴィーナの涙とはなんだ?」
俺も知らない場所だ。
「妾の祖先、『エルヴィーナ・エルフ・マナノリスカ』が戦いの跡地に作った湖だ。二度と戦争が起きないようにと、作ったのがきっかけで付けられた湖の名前だな」
「なるほど…そこに居るんだな?」
「えぇ、セレンが言うにはそこに大きな水属性の魔力を感知したらしいです。しかも、人間には到底潜れない深さに居るから間違いないだろうと…」
「なるほど、それは説得力が増す。よし…マルメード…」
俺はマルメードを見る。
「あぁ、案内は任せるがよい。妾の大切な国を、どこぞやの宗教団体に支配させてたまるものか――!」
そうして俺達は四大災害精霊の行方を追うため、水の精霊ウンディーネの元へと行くことになった――。
どうもスキーです!
今回の話、どうだったでしょうか!自分としてはミロクの活躍を久しぶりに書けて凄く楽しかったなという印象ですが…なぜ最初にマルメードが空間魔法を使わずにミロクと一緒に汽車へ行ったのか疑問に思った人は居ませんか?これには理由があって…実はマルメードはその時はまだミロクを信用しきれておらず、魔法を見せる段階ではないと判断したからなんですね。まぁ、支配者名乗る男に急に手の内見せるのも怖いですよね…と言った感じでマルメードはその時はまだ魔法の使用を控えていたのです。クフゾや、マルメード自身の会話でやっと信用を得られたようで、最初、明らかに色仕掛けのようなことをしてたのは試す理由もあったからなんです笑
ということで今回の補足は終わりです!次回もお楽しみにしててください!次回は2026年の7月31日です!




