災害の形
「えーと…マルスくん。もちろんだけど、彼らはそんな簡単に会える存在じゃないんだよ…」
クフゾが言う。そう、あのクフゾですらまるで場所が分からないかのような物言いなのだ。
「どうしてだ?」
マルメードは空間を開いて新聞をそこから取り出す。
「あいつらは、人に化けているからだ。それに、その場所での目撃情報があったというだけで、そこが奴らの生息区域では無いということなのだからな。見つけるのは容易ではない…ほら、見てみろ」
「ん…?」
新聞を見てみるとそこには『賢者学園の火山が大噴火!?街に大損害が起きる』と、書いてあるただの新聞だ。
「これがどう関係ある?」
「はぁ…さっき聞いただろう。そもそも、災害なんて言葉はまず使われるのすら珍しいのだ」
そういえば小さい頃も津波だとか、地震だとかは全く聞いたことがなかった。
「自然災害は、四大災害精霊にしか起こせない。理由は簡単…自然にはそれぞれ魔力が宿っている。その魔力が暴走しない限り、自然の力というのは一定に保たれる…しかし、その自然の持つ魔力全てを操りきれる力を持つのは、例外を除いてこの四大災害精霊しか居ないのだ」
「確かに、自然災害を起こすほどの魔力操作を行える者なんて、そうそう居ないな」
「もちろん、この記事も…もしかするとディアマテ信仰教の者達がやったかもしれんという可能性は捨てきれぬが…それをする力を確認しきれていないと言うのなら、これを起こせるのは四大災害精霊くらいしか居ないだろう」
「ただ、肝心の本人を確認出来ないんじゃ…その真意は確認出来ないな…神とかに聞いても意味がないのか?」
「意味が無いことも無いだろうね、例えば…水の神とかが居れば水神の権限で探知は出来るかもしれない。ただ肝心の水の神が居なければ意味がないね」
水の神か…ん…?あれっ…水の神…水の神…
「あっ」
俺は思い出す。一人の存在を。
「どうかしたのかい?」
一人居るじゃねぇか…!
「知っているぞ…水の神の居場所を…!」
「なんだって!それは本当かい?」
クフゾは興味津々に俺に近寄る。
マルメードも予想外と言った反応を見せる。
「あぁ…カオス・エデンのメンバーに、水の神と契約してる奴が一人居るんだ…!そいつなら頼めるかもしれない…!ただ…」
ミナノは今は休暇中。わざわざ呼び出すのも申し訳ない。こんなことで呼び出していいのだろうか?
「何か呼べない用があるのだな…それならいい方法があるぞ」
「いい方法って?」
マルメードは何もない空間に手を付ける。
「そういえば妾の魔法を紹介していなかったと思っての〜。妾の魔法は空間を繋げたり裂いたりする魔法だ。これで、そのお主の仲間とやらに直接会えばよい。エルフの国へはいつでも戻ってこれるぞ」
空間を繋げる系の力…俺も使えないことは無い。しかしここまでちゃんと繋げれるのは凄い。
「しかし…」
結局どちらから行こうが、ミナノに頼ることになってしまうことには変わりない…それでいいのだろうか。
「何をウジウジしとるのだ。仲間なら信頼して当然だ。きっと、そやつも嫌だとは思わないぞ」
マルメードはフッと笑う。
「あぁ…そうだな…じゃあ行くか…だが――」
俺の言葉にマルメードとクフゾは目を丸くし、俺を見つめる。
「マル。クフゾ。まずは俺と手合わせしろ」
その言葉に二人は固まる。しばらくしてクフゾが口を開く。
「えーと…どういうことかな」
「どういうことも何も、そのままの意味だ。俺は今から世界で名を轟かせてるような大物を相手にしようとしてるんだ…お前らに勝てなければ話にならない。二人がかりでもいい。かかってこい」
俺は手をひょいひょいと二人を挑発するように動かす。クフゾは気だるそうに、マルメードは少し目を細めて俺を見据える。
「妾は手加減が出来ぬぞ」
「あぁ、その方がいい」
明らかにマルメードの雰囲気が変わった。その場の空気に震えを感じる。流石エルフの国の女王。
「場所だけ変えようか…クフゾ。あの空間出せるか?」
「あぁ…じゃあそこでやろう。マルメード、空間を開くのは頼んだよ」
「うむ」
マルメードは空間を切り裂き、クフゾはその空間の中に真っ白な景色だけが続いている空間を繋げる。
俺達はその中に入り、準備を整える。
俺は久しぶりに髪を赤ワイン色に染め、黒と金の衣装を身に纏い、ミロクの姿となる。
「決着の方法はどうするのだ」
マルメードは魔力を手に集中させる。殺気まで漂わせて…完全に殺る気のようだ。
「生殺与奪の権を先に握った者の勝ちにする」
「心得た…」
「ねぇ、これ僕もするのか――」
――ボォンッ!!
クフゾが完全に言い切る間もなくマルメードは地面を蹴り、俺に攻撃を仕掛けに行く。気付いたときにはマルメードは既に目の前だ。
「中々いい一手…だが…!」
俺は周辺に漂う魔力の流れを操り、マルメードの両手足を拘束する。
「っ…!!」
「殺意がだだ漏れ…攻撃することを予告しているようなものだぞ」
俺はただ魔力を圧縮してそれをマルメードの腹にぶち込む。
「かはっ!!!」
マルメードは吐血し、見えなくなる程、遠くまで吹き飛ぶ。
「ふん…エルフの国の女王が聞いて呆れる」
これで終わるとも思ってないが…
「――僕の事を忘れてもらっては困るよ」
クフゾが俺の真後ろに接近していた。反撃しようと思ったが…
――ドォン!!
「むっ…」
重力が重くなる。俺の身体は勢い良く地面に叩きつけられる。クフゾの力が強いのは知っていたが、まさかここまでだとは。
「いい攻撃…だな」
「そんな事を言っている暇は…無いと思うな」
次の瞬間、光の矢が俺を囲う。これもクフゾの力か。
「残念だが、俺の前で魔力を使うなどと自殺行為に等しいぞ」
そうは言ったものの…これは完全な格下相手にしか使えないのだが…まぁいけるだろう。
「ふんっ!」
俺の開発した魔法…!
「魔力暴走…!!」
――バリイッ!!
「うぐうッ!!?」
「既にお前は…俺の"盤面"に入っている…!」
カミスの魔法と、レヴィアから貰った魔族の魔力の技術を合わせた盤面付与型魔法、それが魔力暴走。俺の効果範囲内に入った奴は魔族の魔力を流され、魔族以外は正常の魔力を保てなくなる。
「俺の魔力は無尽蔵だ…お前の魔力量じゃ、この魔力を打ち消すことも出来ないし、効果範囲外に出ることも出来ない」
「ふふふ…そうだね…確かに僕だけなら負けてたかもしれない…でも、これは"チーム戦"なんだよ…?」
「はっ…まさか…」
マルメードの姿が見えない。これは、遠くに飛ばされたから見えなくなったのではない…!
「――どこを見ておる間抜け!!」
俺の目の前の空間が裂ける。そのまま裂けていく空間は勢いを止めず、俺の顔面に向かって真っ直ぐ裂かれる。
「ぬぅあああっ!!」」
咄嗟に周りの魔力の流れを変え、俺の体を後ろに吹っ飛ばす。間一髪で俺は空間の裂けから逃れる。
本当にあと少しで俺の顔面が裂けるところだった。まじであぶねー。
「やるじゃないか…マル」
マルメードは口角をふっと上げる。
「あの程度の攻撃でへこたれるなど、国の女王として恥ずべきことだ。当然無事だ」
「ふん…」
先にクフゾを潰しておきたい…後方支援に回られると凄く厄介だ。
「爆裂無双炎!!」
神炎魔法の一つ。俺の魔力ならば並大抵の者では即死もいいところだ。
「実に芸が無いの…火力でものを言わせればいいというものではないぞ!」
その通りである…マルメード相手に火力で押し勝てるなんて中々出来ない。
なんて思っている内に、俺の魔法はマルメードの空間を開く能力により、攻撃は簡単に違う空間へと飛ばされてしまった。
「やはり…お前ら相手に出し惜しみは良くなかったようだな…」
俺は手に魔力を込め、魔法陣を出す。
「なんだ…その魔法は」
マルメードは俺の魔法陣を睨む。クフゾですら興味津々に俺の魔法陣を見つめる。
「知るわけがない。俺の開発した魔法なんだからな」
「まだ開発した魔法が――」
クフゾが魔法を発動しようとするが、もう遅い。
俺の魔法は既に発動している…見せてやろう。俺の最強の技の一つ…!
「――未来創世」




