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最悪の力

 ――俺は、あの時にミロクとして戦うべきだっただろうか?「マルス・アンドラウド」としての姿を捨て、ミロク・プリンスとして…レフィアを守るため?いや、その気持ちもあったにはあっただろうが…エクス、レヴィア、カーンズを前にして、変身を解く覚悟なんて無かった。殺されるかもしれないなんて考えじゃなくて、二度と支配者を目指せなくなってしまうんじゃないかって考えが、一番最初に思い浮かんだ。


「――マルスくん!!」


「あっ…」


メノンの呼びかけに俺は意識を取り戻す。


「私、まだこの街に残るけど…マルスくんはどうするの?」


俺はまだここでやるべきことがある。

諦めるわけにはいかない。


「俺は…残る。オークションで白マント…ディアマテ信仰教を迎え討つ。メノン」


「ん?」


「市民の…怪我の治療、任せてもいいか?」


メノンは一瞬の迷いもなく頷く。


「うん!だって、お父さんもそうやって色んな人を助けてきたもん…私もそうするよ…!」


出来れば、他のメンバーも欲しい。"あいつら"は…妥協という妥協を知らない…だから、ネオミシスカの時みたいに殆どの妥協なんて無しに被害を出して攻めてくる可能性がある。そうなって来ると…また時間遡行を使わなきゃいけなくなるかもしれない場面が現れる可能性もある…


「行けんのか…俺に…」


色んな不安が押し寄せてくるのは久しぶりな感覚だ…


「大丈夫だよマルスくん」


「えっ」


「だって、マルスくんは学園でも炎魔法とか見せてくれて分かったけど、生徒最強じゃん!!」


「最強…か」


確かに、今は支配者としての自分を出すよりも、最強としてのマルス・アンドラウドで…人を守るべきなのかもしれない。


「そうだな、確かに俺は最強だった…心配なんて要らなかったな」


「おっ!ようやく元に戻った感じするねー!やっぱマルスくんは余裕な方が似合ってるよ!」


星のような綺麗な目で俺を見る。その瞳には希望が宿っている。


「そうだ、メノン。シルフィードの被害が他にも無いか、向こう側も見てきてくれないか」


「うん、分かった!任せて…!」


そう言い、メノンは飛行魔法で飛んでいく。


「さて…待たせたな。マル」


ずっと近くに居たけど話に割り込めなかったからか、少し機嫌が悪そうに見える。


「うむ…クフゾだろう?」


「あぁ、そうだ。あいつは大丈夫なのか?」


マルメードは深くため息をつき、腕を組む。


「あの娘だぞ?逆に怪我をする方が…難しいだろう」


「やっ無事だよ」


クフゾは物陰からヌッと出てくる。

まるでリスみたいだ…


「クフゾ。あのシルフィードとか言う奴は…どんな力を持っていた」


クフゾはうーんと声を出しながらしばらく考える。


「分かんない」


「本質で見るんだよ」


「あっそうだね」


「本質無しで分かるかよ…」


クフゾって…もしかして元は馬鹿なのか…?


「そうだね…彼の力はとても強力なものだった…僕もあれには目を疑ったよ。彼は恐らく、本質の使い手だよ」


「本質…なんのだ?」


「風の本質…と言うのが一番無難だろうか」


「風…か…」


そして、風の本質という言葉に一番反応したのは、マルメードだった。マルメードは目を細めてクフゾを見る。


「ちょっと待て、風の本質がもしも本当なのならば、それはどこで、どうやって手に入れたものだと言う…」


「それは…どういうことだ」


「そうか、お主は知らんだろうな。この世界には四大災害精霊と呼ばれるのが居ってだな…一体目が、火の本質の力を持つ黒と青の炎を持つ大トカゲ型精霊…サラマンダー。そして二体目が、水の本質の力を持つウンディーネ。女性の姿をしておる精霊だ。そして三体目が、大地の本質を持つノームという小人の老人精霊。そして、最後に風の本質を持つ大気型精霊のシルフィードだ」


精霊と同じ名前の奴ってことだったのか?いや、そこはどうでもいいけど…それじゃあ…


「シルフィードは…四大災害精霊の一体と契約している可能性がある…?」


「そういうことだな。いや、もしかしたら本来の精霊であるシルフィードを殺し…本質の力を奪った可能性すらある」


えっ、めちゃくちゃつえーじゃん。


「ということは…シルフィードは本質を使わなくても素の固有魔法や属性魔法が強い可能性がある…と?」


「――いや、もっと別の可能性もあるよ」


クフゾが神妙な顔で話に割り込む。


「別の可能性って?」


「それは…ディアマテ信仰教の…現在の支配者がシルフィードの力を奪ったんじゃないかなって…僕はそう思うよ」


つまり…あれか。シルフィードが言ってた四大魔神皇って…四天王ってこと?じゃあ、それを取り巻くボスが居るってこと?シルフィードより強い奴が居るの!?


「そ、早急に潰さなきゃまずいなぁ…」


ディアマテ信仰教なんてぽっと出のモブかと思ってたのにだいぶヤバいことになってきた。


「そのディアマテ信仰教のボス…?は、どんな力を持ってるんだ」


俺はクフゾに問いただす。


「流石に分からない…けど…」


「けど…?」


「僕の知ってる限りでは、四大災害精霊を倒す実力を持つ神だとか、禁術だとか…候補に挙がるのは色々あるよ」


俺も思い付くのは色々あるな。禁術とかは小さい頃に自分も使えるかもと思って、噂程度のやつくらいなら知っている。


「まず一つ目は魔法停止(マジカル・ストップ)。これはその名の通り、魔法の無効化、または停止出来る魔法だ。これを使えるのなら、四大災害精霊相手でも、魔法を停止して勝てる可能性はある…が、本質を使えるなら魔法を止めてもあまり意味が無さそうだ…これでは倒すための説得力としては欠けるね…」


「そもそも、魔法停止(マジカル・ストップ)は魔法として存在している可能性は高いと言われているが、肝心の魔法を行使するための魔法陣が未完成で使えないはずだ」


「まぁどのみちあまり現実的ではない力を使っていることには間違いないだろうの〜」


「うん…そうだね。と、なると他の禁術も同じ理由で説得力はないかも…」


「それじゃあ他の理由は?」


「となると、あとは神か…想像も出来ないほど強い本質を持っている者が居るかなんだけど…」


「神は人間との契約が無いと基本的にここへは来れないよな。それに、神は真にいい人間にしかつかないからな、アイツらに神がつくとも思えん」


俺にはなぜか女神ついてるし、契約交わした覚えもないのに普通に顕現出来てるけどな。


「でも…一つだけ、一番可能性のあるものがあってね…」


「まさかっ…クフゾ。あの伝説の話か…?」


「あの伝説…?あの伝説って?」


クフゾとマルメードは少し言いにくそうな顔をする。

そんな言えない理由があるのか?


「マルス。お主にはこの国に行く途中の汽車で、この国の伝説について話しただろう?」


そういえばなんか話していた気がする。


「エルフの国の大精霊神『ヘンナルス・エルフ・カーササス』の伝説ってやつか…?あの、最後に消えてしまったって言ってたやつ」


マルメードはこくりと頷く。


「あぁ、それだ。それなんだが…実はその話は続きがある」


えっ、この話の流れだと絶対バッドエンドじゃねぇか。


「ヘンナルスは…あの一件のあと、人間との生活に干渉するという神の掟を破り、牢獄に入れられていたとされてる…そして、ヘンナルスは理不尽な世界に、自分を見てくれない世界に力を暴走させるんだ。元々は森や自然の神だったのだが、それはいつの間にか全てを吸収する力に変わっていった…」


めちゃくちゃ物騒じゃん。


「全てを求め、人からも…神からも愛されることを願った彼女は…最悪の異名を付けられる…それは…」


マルメードは息が詰まったかのように一度、喋るのを止めてからから口を動かす。


「『求愛の死神』だ」


「求愛の…死神…」


「彼女は十六代目勇者とその当時の魔王によって打ち倒されたとされるが、その力の片鱗は未だ全てを消すことは出来なかった…そう言われておるぞ」


「じゃあ…つまり…その当時のヘンナルスの力を使ってる奴が居るかもってことなのか…?」


「あるいは身体が別の彼女本人の可能性もある。しかし…ディアマテは世界を滅ぼす存在…なぜ人からの愛を求める彼女が世界を滅ぼすのか…?」


いや…違う…きっとこれは…俺には分かる。


「いや…ディアマテは思想の形そのものだ…それなら、ヘンナルス以外の全てが滅びてしまえば…ディアマテはヘンナルスの言うことだけ聞く魔神と化す…それなら、無限の愛すらも手に入れることが出来る…そう考えたんじゃないか」


「なるほど…確かに、それなら人類を一度滅ぼすという選択も悪くはないか…」


と…話してみたものの…俺のするべきことってなんだ…?今は…ディアマテの謎を解くこと…それなら…!


「よし、分かった…これからその四大災害精霊ってのに会いに行こうぜ」


「えっ!?」


マルメードとクフゾは目をパチパチさせながら丸める。状況が飲み込めていないようだ。


「オークションまではあと一日ある…それなら今のうちに真相を確認しに行ってみようぜ…四大災害精霊…その力は俺も気になる――!」

皆さん今回も読んでくれてありがとうございます!今回は魔法についての設定を話していきます。

まず、魔法にはそれぞれ属性魔法があり、その全てが全員に備わっています。基本の第七元素である炎、水、風、電気、氷、光、闇の魔法があって、その中の得意な属性を使って基本は戦います。そしてその魔力を使い、皆それぞれが色んな魔法を使っているわけです。例えば、カミスとかなら電気魔法の魔力を使ってギルティ・ジャッジの空間を使えています。

あと魔法で言うなら固有魔法がありますね。その人にしか使うことの出来ない、唯一無二の魔法というやつです。これも、さっき言った基本の第七元素の魔力からなるものなので、全員の使う魔法は第七元素に依存しています。それと、魔法には階級があって、初級魔法、中級魔法、上級魔法、神の領域の魔法である神級魔法があります。神級魔法で言うと、マルスことミロクが序盤に学園で神級レベルの炎魔法、神炎魔法を使ってましたね。(実際は炎魔法だけど威力で言えばあのくらいです)

あとは魔法では無いですが、忍術も一応ありますね。これに関しては忍の関係者しか使えませんし、今のところ該当者がカンノしか居ませんが…また出せたら出します。と、言うわけで魔法についての紹介でした。次の回もよろしくお願いします!

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