暴風
で…ディアマテの者なのか…!!
「よ〜〜く分かったなぁ…俺様がどの立場に居る者なのかも、把握してる感じなのかなぁ!?」
すると、部屋の隅っこから二つの影が落ちる。
一人は白色の髪に緑色のマントを着た蒼眼の男、もう一人は黄色髪が荒々しく逆立った赤眼の男。
「俺はディアマテ信仰教の四大魔神皇の一人、シルフィード・ヴェスレルド!!」
蒼眼の男は頭を掻きむしり、目を血走らせながらそう言う。四大魔神皇という初めて聞くもの…これまで戦ってきたアウルやコセヌミアとは格が違いそうだ…
「そんで、俺は雷鳴司祭のカロラント・バスデリカ。以後お見知りおきを」
赤眼の男は調子が良さそうに言う。恐らく、シルフィードよりかは強くないだろうが、司祭ならその辺の白マントと一緒にしていればすぐに殺られる程の強さを持つだろう。
「皆、下がれ!」
カーンズが杖を取り出し、シルフィードとカロラントに向ける。
「極滅却怒焼爆裂黒炎砲!!」
し、神炎魔法の中でも禁句とされてきた世界法則すら焼き切る最強の炎魔法…流石に使えるか…
――ドガァァァァァン!!
その爆発は一瞬にして会場全体を吹き飛ばす。カーンズは防御魔法を味方全体に振りまいていたらしく、俺や他の皆は無傷だ。
『黒き炎は…空を焼き――、全てを壊し――、海ですら蒸発する――』そう言われている程の魔法…
それ程の威力の魔法をもろに受けたのだ。奴らもタダでは済まないだろう。
「あー…あー…俺の髪が一部焦げちゃったじゃないかぁ…!あぁぁ!ムカつくなぁ……!苦いなぁ…辛いなぁ…!お前ら許さないからなぁ!!?」
「ううん…受けれるか」
シルフィードとカロラントの居る場所だけ不自然に燃えていないし、崩れてもいない…
「――うぅあっ!!」
「――風斬!!」
「――魔王砲」
サラム、アサトラム、レヴィアの一斉攻撃…合計の威力だけならカーンズにも匹敵しそうだが…
「あのさ?一斉に攻撃すればなんでもいいってわけじゃないのが…分からないのかぁ!?」
シルフィードはやはり無傷…カロラントも勿論、無傷だ。
「シルフィード様…今回の目的はそんなんじゃねぇでしょう?」
カロラントが言うとシルフィードはハッとして落ち着く。
「あぁ…そうだったよ…今日はさ…交渉に来たわけなんだよぉ…」
「交渉…?」
シルフィードはクククと笑い声を上げる。
「いくつか条件がある…どれか一つを選んでくれよ…一つ目は…レフィアを寄越すか…」
レフィア…やはりまだなにか関係していると言うのか…
「二つ目…アマテラスの血を寄越すか…」
まぁディアマテの完成には絶対と言っていい程に大事な物ならな…
「最後に三つ目…エルフの国を寄越す…だ。さぁ好きなのを選べよ」
「そうだな…僕は一つも選べない。君達をここで倒さなきゃならないから」
カーンズは未だその余裕な姿勢を崩さない。
「そうか…それならさっさと全員死ねやぁ!!!」
空気が揺らぐ…気がした…?
「――!!マルメード!!!」
その言葉にマルメードは焦った表情で急いで空間を裂き、周りの建物なども一緒に空間の裂け目に俺達を入れる。
「なっなんだ…?」
そうして、すぐに空間の裂け目から俺達は出される。
「はっ…?」
辺りを見ると、俺達のさっき居た場所が、深くまで抉れている。まるで、地面を割いたかのようだ。
「喰らっていたらマズかった…」
コイツは…本格的に強い…!
「俺も本気を出すとするか…」
「えぇ…!マルスくん…危険だよ!」
メノンがあわあわと俺の腕を掴む。
正体がバレるかろミロクとして思いっきり本気を出せるわけではない…が。
「カーンズ、行くぞ!」
「あぁ…!」
ダブル…!!
「極滅却怒焼爆裂黒炎砲!!」
「こ〜れは流石に防ぎきれないなぁ…」
「んんっ!」
カロラントは呆然としているシルフィードを連れて走る。かなり早い…俺とカーンズの攻撃は避けられてしまう。
「だぁ…くっそ…!」
カリスイノが居るのなら、座標の変更で防げるのかもしれない。でも、どこを見てもカリスイノは居ない…つまり別の方法で防いでいる…?
「ここから本気を出させてもらうよ」
その声が聞こえた時、風が横切る。
一瞬だけ強い風が吹く…
――ガキィン!!
「このままカーンズやマルスに任せっきり…ってわけにもいかない」
エクスがどこから拾ってきたか普通の剣でシルフィードに攻撃する。
「えぇ!勇者さん、エクスカリバーは抜かないんですか!?そんなことしてたら俺様にか〜んたんに殺られ――」
――ザクッ。
「!?!?」
剣はシルフィードに到達し、薄皮を斬る。
カロラントも明らかに動揺している。
「な…なんで…」
シルフィードは冷や汗をかきながらエクスをじっと見る。
「シルフィード様。きっとエクスの固有魔法か…本質の力です」
「ふん…だろうなぁ…ずるいよなぁ…殺してぇよなぁ!!!」
シルフィードは再び魔力を溜める。そして、その横ではカロラントが電気魔法の魔法陣をシルフィードの前に描く。
「暴流破壊!!」
風魔法…そしてその攻撃は電気魔法の性質を持っている。
だから最初のシルフィードの攻撃は電気を纏っていたのか…
「甘いな。戦いの粘度が足りないようだよ」
すると、一瞬の内にエクスはシルフィードの後ろに立つ。
シルフィードとカロラントはそのあまりに一瞬すぎる出来事に脳の理解は遅れる。
「終わりにしよう…激龍轟烈斬!!」
ドラゴンの魔力を宿した剣は、一瞬でその場を破壊する。これが、世界の英雄…勇者と呼ばれる男、エクス・カメアノサスの実力…!
「凄い…けど」
俺は前に出る。俺の様子をエクス達は不思議そうな顔で見る。
「ま…やっぱそう上手くはいかないものってのがこの世の摂理と言いますかなんと言いますか…」
爆煙の中に紛れていたのは、一切れの紙。
『再び、お前らの物を奪う。一つ一つ…ゆっくりと――』と、そう書かれた紙が置いてあったのだ。
「逃げられたのですね…」
アサトラムは神妙な顔付きでその手紙を見る。
他の皆もそうだった。この状況で、楽に終わることはない…
「…!そうだ…クフゾは…」
クフゾは本来、外での見回り…それを突破されてシルフィード達は来た…ということは…!
「ヤバい…!クフゾが…」
しかし、今ここで抜けるわけにも行かない…
「作戦会議という作戦会議は…これにて終了…か…なんとも、呆気ない結末だな。来た意味を返してほしいくらいだ…」
「あぁ…レヴィア様!」
レヴィアは呆れた様子で自身の国へと戻る。
「それでは私達も帰りましょうか、メグメルス様」
「うん…お腹空いたよ」
アサトラムとメグメルスも、国へ帰るようだ。
その様子を見て、他の者達も帰って行く…
「……」
その場に残ったのは、カーンズ、エクスとメノン、俺とマルメードとレフィアだけだ。
「マルメード様…すみません。この国に被害を残してしまいました…」
エクスは気分を落ち込ませたまま、マルメードに深く頭を下げる。
「よいよい、これは妾の失態だ…自分の国の問題くらい、なんとでもなる…幸い、市民達の死亡報告はない」
「すみません…」
もやもやとした空気の中、エクスは俺に背を向ける。
「僕も…任務が入っているので帰らせて頂きます…」
「あっ…」
メノンは肩を落としたエクスを見て、目尻を下げる。普段のエクスからはあまり想像出来ない表情に、メノンは困惑しているのかもしれない。
「エクス様…私は、マルスくんと一瞬にエルフの国へ居ます」
「えっ?」
「そうかい…分かったよ。気を付けてくれ」
エクスはそれを承認する。いや、いいのか…?まぁでも一応一時的な付添い人だったしいいのかもしれないが。
「それでは僕もこれで失礼しますね。アマテラスの血は渡しておきます。オークションの日にはまた戻って来ようと思います」
カーンズも踵を返し、一瞬でどこかへ消える。
なんとも言えない空気の中で俺とマルメードとメノンは立ち尽くす。
「シルフィード…」
人を守るための力は、時として呪いになる。そして、人を傷付ける力は、時に解放のための力となる…と、今回の件で俺は少し感じてしまった――。




