読み合いは信頼に
「「「え、えぇーー!?」」」
「ま…まじかよ」
つい最近会ったばかりの最強…まさかこんなすぐにまた会えるとは…てか、エクス以外誰もカーンズが来ること知らされてなかったのかよ。
「ん?おや、マルスじゃないか」
その言葉に周りの視線は俺とカーンズを交互に見る。
やりやがったなコイツ!!
「二人とも知り合いなのかい?」
エクスは俺だから特に不思議も無いかという顔で俺を見る。いや…いくらマルスの名が知り渡り始めたとは言ってもだよ?他の人が困惑するだろうが!
「お前みたいな奴が…?」
レヴィアは俺を睨む。相変わらずプレッシャーが凄い。
「そういえば、カミスの右腕どーしたんだよ」
メグメルスは虹色の瞳で見開いてカミスを見る。
「いやー、以前ディアマテの幹部にやられてしまいまして…あっしかし影響はほぼ無いですよ。俺ですので」
「自己効力感すげーなお前」
本当は俺が飛ばした腕なんだが…
カミスの奴はここに居る者の中では恐らくまだ弱い方なのだろう…カミスの存在がここまで薄く感じるとは…
「え、えーと…もう話していいかな」
カーンズは少し困り顔で言う。
その言葉に全員が姿勢を揃える。影響力のある男は違うな。
「今回のアマテラスの血のオークションについてですが、そもそもこのオークションを開く目的を話していませんでしたよね…それを話していきたいと思います」
そういえば、せっかくのアマテラスの血をどこの誰かも分からない貴族に渡すのは正直謎だよな。
「まず…我々はこの血を誰かに渡すつもりは到底ありません」
「えっ?」
「ちょ…ちょっと待ってくれよ。それならどうしてわざわざオークションを…?」
サラムは手を頭に置いて困惑の表情でカーンズに質問する。
「それは、白マント集団…つまりディアマテ信仰教を引き寄せるための"エサ"というわけです」
「なるほど…エサで釣れば、奴らはこの話に絶対乗っかってくると…しかし、それならオークションの前に置く物は本物である必要は無いのでは?」
レヴィアはサラムに続けて質問する。
「今回取り扱うものが貴重すぎるが故に偽者であることが魔力検査でバレでもしたら大事になる…だから本物を使用させてもらう…と、これが目的なわけだ。それじゃあ次の質問と行こうか――」
めっちゃ真面目な会議だ…なんというか、俺がこの場に居ていいのかって感じだな…
「そもそも、この作戦に不満がある人は居ないか?」
え、これ全員に賛同貰ってから決めた作戦じゃないのかよ…なんか所々すげー適当じゃねぇ?
そうして、何人かが手を挙げる。手を挙げた人物達は、カーンズ、エクス、メノン、メグメルス、マルメード、俺だ…あれ…?
「んー…そうか…じゃあ手を挙げてない者の意見も聞こうか…」
手を挙げてない人多くない!?なんでだ…?
手を挙げてない人はつまり…レヴィア、サラム、カミス、エリカノス、アサトラムだ。
「私は、この作戦に反対だ。なにせアマテラスの血でわざわざ引きつけようとする考えが浅いのだ。"貴様ら"の力なら十分に探し出せる時間があろうに…リスクを冒してまですることではない」
レヴィアは冷たい視線をカーンズとエクスに送る。
それは…確かにそうではある。
「俺も…レヴィア様と同じ考えです」
サラムは…多分様子から見てレヴィアの思考を読んで適当に言ってるだけだな。
「私の反対した理由と致しましては、そもそもディアマテ信仰教に対しては敵対心、そして興味がありませんので、メグメルス様の安全を考慮し、その様な危険な行動は慎むべきだと私は考えております」
アサトラムも冷たく言う。自分以外の国の事は基本どうでもいい主義のようだ。しかし、メグメルスはそんな様子のアサトラムをむーっと睨む。
「はい…では俺も言うとします…理由は二つ…一つ目は、あまりにもリスクが高いこと…アマテラスの血など一生手に入らないような物を…そして、それを世界最悪の目的で悪用されることなど、あってはならない。そして理由二つ目…ディアマテの情報については…"この方"からいくらでも聞き取れる」
この方…?誰のことだ…?
「私もカミス様と同じ意見です」
エリカノスもそう言う。
「さっ、エリ。連れてきなさい」
「かしこまりました」
――パンッ!!
エリが指パッチンをすると、扉が開き、一人の人間が縛られた状態で投げ入れられる。
「いらっしゃ~い!元ディアマテ信仰教…レフィアさんで〜〜す。拍手!あ、俺は拍手出来ないんでした」
は…?
「お…え…?なんで…」
俺はカミスの脳内に直接魔力を流して俺の声を送る。
『お前…!どういうことだ…!裏切り行為は許されないぞ…!』
何を考えているのか全く分からない。コイツは一体何をしている…?
『ミロク様。これは違うんですよ。俺は…読み合いをしてるんですよ』
『読み合い…だと…?』
『はい、俺とミロク様…あとはサラムの信頼に基づき、ね…』
『つまりどういうことなんだ…!』
『レフィアは必ず解放させます…しかし、それには読み合いが必要。読み合いと言うのはつまり…ここでどれだけ俺達のアドリブを聞かせ、レフィアがどれだけ安全なのか、放していてもいい存在なのか…それを示しつつ、ディアマテの情報を漏らさせるのですよ』
いつまでも魔力を流し続けられるわけではない。魔力に敏感に奴は沢山いる。あまり長く脳内会話は出来ないのだ。
『それにしたって…アイツはディアマテのことはなんにも知らないって言ってたんだぞ…!アイツに嘘を吐かせるってのか…!』
『ミロク様が昨日教えてくれたでは無いですか。新たなるカオス・エデンの新星…クフゾ・アルカミットの父、ガンスール・アルカミット…彼はレフィアとなにか関係があると…』
そうだ、レフィアはディアマテ信仰教については何も知らないと言っていた。なのに…なぜ…?
『あぁ、ミロク様。勘違いして欲しくないのは…レフィアは現状のディアマテ信仰教は知らないというだけで…創設の理由や、その昔の成り立ちはどうやら知ってるらしいですよ。ここは彼女に任せましょう』
ディアマテ信仰教の…初出…一体どんな…
「それで、連れて来たということは…何か聞き出せることがあ――」
レヴィアが冷たい態度でカミスに聞こうとした瞬間に、エクスは椅子から立ち上がる。
「レ…フィア…?」
その顔は絶望と恐怖に怯えたような顔をしていた。
恐らく、この場に居たサラム以外の全員がエクスのその表情の意味を読み取る事は出来なかっただろう。
「……」
レフィアは黙ったまま、エクスを見る。
そうして、レフィアの放った一言は――、
「えぇと…貴方は…誰なのでしょう…」
「え…」
その言葉を真っ先に出したのは、エクスだった。
そして、サラムの表情が曇っているのを俺は見る。
『サラム…どうしたんだ』
『そ…それが…レフィアの記憶をいくら遡っても、見れるのが十五歳の頃までなのです…』
『なんだと…!?つまり十五歳より前の記憶は見れないと言うのか…!?』
『そういうことです…ただ、記憶の型というか…元々あった形みたいなのは残ってるみたいです。つまり…これは誰かに消されたと見るのが正解かと…』
『い、いつから消されたんだ…!』
『それも分かりません。ただ、レフィアは嘘を付いているわけではない…ということくらいでしょうか』
『くそ…これじゃ完全に…!!』
『いいえ、諦めないでください。入場前にクフゾの話は聞いています。彼女の全知全能の力を使えば、なんとかならないでしょうか?』
『でもどうやってクフゾをここに…?』
『それは…』
俺とサラムがこうやって話している内に、話は悪い方向へと進んでいく。
「レフィア…僕を…!覚えていないのかい…」
「い、いえ…勇者エクス様の事を知らない訳がないじゃないですか…?」
「違う…そうじゃ…そうじゃ…」
「――甘い。甘いなぁ〜お前らって…甘いよなぁ。本当におめでたい奴らだ」
「っ!?新入――」
――バリリっ。
「ぐあああああっ!」
全員の動きが止まっていると、扉の近くに居た警備員の首が、いきなり吹っ飛ぶ。
「なっ…」
「――お前ら全員地獄送りの苦い人生にしてやるよぉ!!」
「皆を傷付けるわけにはいかないな…」
謎の声が響くと、カーンズが部屋の中心に来る。
――バリリっ!!
再び電流のような音が響くも、誰一人として攻撃はされない。
「あれ…?」
「さぁ、姿を見せてもらおうか――、ディアマテ信仰教」




