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オレヲミルナ

 クフゾはごほんと咳払いをする。


「それじゃあ、始めるとするよ。試練時間は十五分だ。それが僕の魔力の限界だからね」


このレベルの空間を一瞬でも生成出来る時点で凄いのに十五分も保たせれるだなんて、流石全知全能と言ったところだ。


「なんで妾もついて行かなくてはならんのだ…」


マルメードが面倒くさそうな表情を浮かべて愚痴を並べる。早く戻りたいという意思が伝わってくる。


「帰るときにここの空間から出させれる人が居なきゃ僕とミロク君が空間ごと消えちゃうんだからしょうがないよ」


その言葉にマルメードの顔はあからさまに暗くなる。


「えっ!?え…はっ、早くするんだぞミロク!!」


「はいはい…」


俺は素っ気なく返事をして何もない空間の先を真っ直ぐ見つめる。


「それじゃ…始めるね」


クフゾは俺の背中に掌を押し当てる。


「あぁ、頼む」


――ドンッ!!

瞬間、俺の背中に衝撃が走る。

俺はその場に倒れ、ゆっくりと視界が狭まっていき、意識が段々薄れていく。



「――っ!!」


俺は目を覚まし、ぱっと起き上がる。


「ど、どうなっ…て…え…」


パジャマの姿に、暑い日差しの入り込む狭い部屋。俺のそばではスマホからアラームの音がピピピと鳴り響いている。


「……あ…れ…?これが…試練…なのか?」


なにをするかがよく分からないし、これをして一体何がどうなるっていうんだ。


「とりあえず元の現世と同じ過ごし方でいい…のか」


スマホを見るとそこには午前六時の時間が示されていた。


「うわっ…弁当作んなきゃ…」


刻まれていた習慣というのは中々無くならないもので、俺は咄嗟にベッドから起きて弁当を作りに行く。


「はぁ…面倒くさ…って……」


俺は二階の階段を降り、一階へ辿り着く。辿り着いたのだが…


「あら、おはよう弥勒。今日はあなたの好きなハンバーグを入れてるわよ」


そこには紛れも無い。俺の母親…姫野聖子(ひめのせいこ)の姿があった。俺の母親は…俺の生まれた頃に死んだはず…


「なんで…?母さんが…」


遺影以外で初めて見た顔だ。父さんから聞いてたけど明るく陽気な雰囲気のある人だ。

茶色い髪で綺麗な橙色の目をしている。


「なんでって…いつも弁当作ってるでしょ?にしても今日は早いわね。いつもは遅刻ギリギリで学校行くのに…」


ふふふと口を抑えて母さんは笑う。


「そんな…おかしい…」


「――なにがおかしいんだ〜?弥勒〜」


急に肩に手を置かれる。

その声はどこか聞き覚えがあった。


「えっ…あっ…」


スーツを着ている父親、姫野築虹(ひめのきずく)の姿が俺の目に映り込む。

癌で亡くなったのに…どうして父さんもなんだ…意味が分からない。なにが起きているのか俺には全く分からない。


「浮かない顔をしているな…いつもなら、『父さん大好きアイラブユー』くらい言うだろ」


「それは絶対言わないだろ!!」


「はっはっは。すまんな」


父さんは豪快に笑う。

そういえば…父さんは昔からこうだったっけ…

俺はなんとなく思い出に浸る。


「もう、あなたったら…弥勒はもうそんな年じゃないのよ?」


母さんはくすくすと笑う。こんな笑顔をするのかと、慣れない光景に俺は固まってしまう。


「なぁ…母さん…?」


「なんで急に疑問系なのよ。全く熱でもあるのかしら?」


俺は固唾を飲み込んで、喋りたかったことを必死に抑え込む。今は…ただ、『姫野弥勒』として、普通の人でありたかった。そんな気持ちが今は勝ってしまったのだ。


「やっぱ…もう少し寝る…!部屋…戻るね…早く起きすぎた…!」


俺は二階の自分の部屋へと再び向かう。



「…どうしてなんだ…」


俺はこの状況に不信感を抱いている。

そもそもだ、これは時間遡行魔法と似たような時間軸の分岐した場所なのか、はたまた俺の記憶のイメージから生み出された想像なのか…


(クラウモ)…」


俺は雲を生み出す低級魔法の呪文を試しに唱えてみる。すると、俺の掌の中に小さい雲が現れる。


「魔法は使えるんだな…てことは、これは仮想空間みたいなものなのか…ん…?」


よく聞くとなにか声が聞こえてくる。夢…のような空間だから他の人の視点も見れるみたいだ。


***


築虹と聖子は様子のおかしい弥勒に疑念を抱いていた。

なんとも言えない無言の空気の中、築虹が口を先に開く。


「弥勒…恋の病か?」


その場を(なだ)めようと築虹は冗談交じりに言ってみる。


「そんなんじゃないでしょ?汗もかいてたし…なにか動揺してたみたいだったわ…」


『父さん…母さん…』


弥勒が聞いているとも知らずに心配そうに聖子は階段を見上げる。


「あいつはきっと大丈夫だよ…そんなに弱い子じゃないって…俺は知ってる」


「そうね…あの子には、バスケもあるし恵まれた友達も居るわ。きっと、あの子なりの悩みってのは、とても大事なことだものね…」


『違う…俺に…友達なんか…!それに…イジメの悩みなんて…なにが大事なんだよ…』


弥勒はベッドの上を叩きつける。

ボフッと布団が音を立てる。


「そうだな、アイツのやることは大体なんでも中途半端だ…でも、それがアイツの良いところなんだよ。一見、悪い事かもしれないが、その中途半端が、完成へと答えを導く。未完成の式は答えを導けないわけじゃない…見えてないだけで答えはいくらでも導けるんだ。つまり答えは一つじゃないって…俺が言ってた」


「あなたってば…いつもそればっかりね」


調子を取り戻したように築虹と聖子は笑いを取り戻す。

しかし、弥勒はその前向きな言葉とは裏腹に自分に対する嫌味でいっぱいいっぱいだった。


***


「あぁ…ぐっ…」


俺は聞きたくない言葉を強制的に流し込まれるように聞かされ、そろそろ限界が近付いてきた。


「俺は…どうすれば…どうすれば…」


「――全部壊せよ。気に入らないものは壊せ」


「え………?」


前を見上げるとそこには俺の姿が何故かあった。

薄気味悪い笑みを浮かべて、哀れみの含まれている目で俺を見る。


「今までのお前の人生はそうだったろうミロク!?欲しい物は自分の物だとしか思えず、独り占めし…思い通りにならなければ捨てるか逃げる!!そして壊すために動きだす!!イジメは辛かったかぁ!?辛かったよなぁ!!上手くもないバスケをやって和真達を自分の拠り所だと勘違いして、捨てられれ現実から逃げ、自分を壊した!!」


俺は自分自身に馬乗りにされ、顔をずっと殴られ続けながら語りかけられる。


「さぁ、やっちまいなよ…受け入れられない現実なんて…要らねぇよな…!?自分を見捨てた現実が憎いよな!?!?なぁ…ミロク・プリンス…俺と…姫野弥勒と代わろうぜ…?そうすりゃ全てが楽になる…この世界じゃイジメも無く、普通の自分の生活を送れれるんだぜ?」


「俺は…お前とは違う…俺は…支配者で…誇り高き存在なんだよ…!お前みたいな充実してる奴に何もかも捨て駒な支配者の気持ちが分かるかよ!!」


俺は魔法陣を展開し、弥勒の周りを炎魔法がすぐに発射出来る状態にした。


「…オレヲミルナヨ。ニセモノ――」

こんにちは、スキーです。

今回の回はどうでしたか?

いやー、今回の回は自分でも書いてて凄く気持ち悪いなって感じました。ミロクは確かに強いけど、周りからしたら強いというだけで、自分から見れば弱いとしか思えないんですよね。だからこそ自分を壊し続けて周りから見た理想の自分だけを作り上げてきたという形になったんですよ、だからこれまでのミロクは傷がそのまま理想になっただけでそれは本心じゃない、つまりは自己否定の延長なんです。

ミロクは弱いからこそ、それを力でしか埋めることしか出来ずに未熟なまま成長してしまった悲しい主人公になってしまったんですね。

とまぁミロクを今回は徹底的に打ちのめしてみました笑最近ミロクの強さが曖昧になってきたんでここらでそろそろミロクの強さってのを見せたいですねぇ…

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