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僕は全知全能

 マルメードは頬をぷくっと膨らませる。


「妾にも話をしてくれ!なんなのだ!」


マルメードはまるで子供のように俺に縋る。


「カーンズに会った…と言えばどれだけ凄いことか分かるか?」


マルメードは目を丸くする。


「え…今なんて…?」


「だからカーンズと会話した。その上、向こうは俺を覚えるようにしてくれた」


「何!?そんなことがあったのか…」


「あぁ、そうだ…」


マルメードは必死な表情で俺の前に顔を近付ける。


「お主!それが一体どれだけ凄いことか分かっておらぬのか!?」


「知らん…そんな凄いことなのか?」


「まぁ…奴はあまり外に出たからんからな…こんな所で会えたってことだけでも奇跡と言って差し違えん」


「ん…?アイツは引きこもりかなんかなのか?」


「いや…すまない言い方が悪かった。外には出てるな…しかし、ここまで来るのが珍しいという話だ…奴は基本的に賢者の地の周りにしか居らんからな」


「そうなのか…じゃあなんでここに?」


「それは知らん、しかし妾でも奴を見るのは国の話し合い同士の時にチラッと見たことがあるくらいで、まともに話したことはないとだけ言っておこう。それだけ凄いんだ」


「なぁ…カーンズは…アイツはどれぐらい強い?」


その問いにマルメードは口を閉じる。


「戦うつもりならやめておいた方がいいぞ。実力は勇者や魔王にも匹敵するどころか、二人まとめて相手にしても戦いが成立するくらいにはな」


「なんだと…いや…でもそれくらい俺だって…!」


「お主は少々、侮っておるな…カーンズは…あの人は――」


マルメードがなにか言いかけている時、汽車の外の風景が止まる。どうやらエルフの国へ到着したらしい。


「着いたぞ…」


「あ…あぁ」


マルメードと俺は席を立ち、駅へと出る。


「こ…これがエルフの国…!!」


西洋風の建造物がたくさんあり、人が賑わい、エルフに魔族に…その他の種族もたくさん居る。ここは幅広い国だ。


「どうだ?凄いだろう。妾の築き上げた国だ」


マルメードは自信満々な顔でドヤる。


「いずれ俺の物だ」


「ひっ…酷いぞ!悪魔!外道!ゴミ!」


「そんな言うと俺も傷付くぞ。それと依頼者の立場が偉そうにすんな」


「むぅ〜〜…」


マルメードは不貞腐れた態度で頬を膨らませる。


「マル。街案内頼む」


マルメードはこくりと頷き、ある一つの店を指差す。


「そうだな…ここは妾の街の美味しい食べ物が売ってあるぞ」


「どんなものだ?」


少し覗いてみるとこの世界ではあまり見慣れないお菓子が置いてある。


「ん…これは…」


間違いなくグミだ。ぷにぷにとした弾力にぶどうの甘い香りが漂ってくる。


「これはグゥアミと言ってだな…とても美味しいんだぞ」


この世界でグミなんて初めて見た…意外と進んでるのか?


「どうやって作ってるんだ?この"グミ"…」


「"グゥアミ"だ。これは魔力で砂糖とか果物を混ぜてこねて作ったものなのだ」


「へぇ〜…おじさん。これ一つ頂戴」


俺は店主に話しかける。


「おう兄ちゃん。じゃあ一個百円な」


「は!?」


おいおいおいおい…いくら時代と言いますか文化の違いと言いますか…そういうのがあったとしても一個で百円はたけぇよ!


「分かりました」


まぁカミスの財産持ってるし大丈夫か。

店主から貰ったものを口に入れる。食感や味はやっぱり現世のグミと同じだ。


「なんかすげぇ損した気分…」


「この国の物になんてことを…!?あとそれと…依頼料の代わりの人員についてだ…」


マルメードは顔を下に向ける。


「なにか?」


「少し牢獄へ向かうぞ」


マルメードは俺の手を引いて剣士の監視する牢獄場へ向かう。


「…ここに?」


「そうだ。許可は取ってあるから入っていいが…」


マルメードはなにか言いたそうな顔をする。


「どうしたって言う…来る前と言い…なにかおかしいぞ?」


マルメードは首を横に振る。まるで自分になにか言いかせているかのように。


「いや…特に何も…ない…出来ればあまり長くは牢獄の中に居ない方がいいぞ…"取り込まれる"からな…」


「ん…?取り込まれるって――」


「――おや…久しぶりの客人か、どうぞいらっしゃい」


どこからともなく声が聴こえてきたかと思えば俺の体は牢獄の中へと吸い込まれていく。


「うっ!?うおおおおっ!?」


俺の身体は宙に浮き、牢獄に飛んでいく。


「いって…って牢獄の中…?」


――ガシャン!


牢獄の扉が閉まる音と共に俺は前を向く。

するとそこには八重歯が特徴的で、金髪にアカデミックキャップを被り、白一色の服を着ている目が深紅のような少女。見た目は学生くらいに見えるが妙に大人っぽい。


「ん…お前が…俺の組織に入ってくれるのか?」


少女はゆっくりと口を開き、白いスカートをたくし上げる。


「僕はクフゾ・アルカミット…君は僕に何を望むのかい?」


なにか凄い雰囲気だ。牢獄内は無音で静かなのにやけに落ち着かない。


「いや…だからお前は俺の組織に入る約束だってマルメードが…」


クフゾはぼーっとした顔で牢獄の右上を見上げる。


「あー…マルメードが…そうかい…そうかい…なんとなくそんな気はしてたさ」


ロッドと同じくらい話し方遅いかもしれん…いやロッドの方が遅いけど。


「そんな気はしてたって…?」


すふとクフゾは急にじっと俺を見つめる。


「名前を聞いていない…教えてくれ」


「んっ…一応…ミロク・プリンス…」


クフゾはふっと笑う。


「一応って…君は面白いねぇ…それで、君は僕に何を望む?」


「いや、だからマルメードとの契約でお前は俺の手下に…!」


「それはマルメードの望みであり、君自身の望みでは無いと僕は思うのだがね?」


金髪の少女は深紅の瞳で俺に圧をかける。


「んぐっ…いや…俺も…お前が組織の手下になってほしいって願っている…それが俺の望みだ…!!」


クフゾは口を開けてぼーっとする。


「つまらないな…君は…」


「ん…どういうことだ貴様…」


「まるで自分が全知全能なのかのように全てを分かったようなフリして、自分の思い通りになると思いながら喋っているのがつまらないなってことさ」


「ふざけ…!」


俺はクフゾの胸ぐらを掴み、壁に押し付ける。


「事実じゃないか、マルメードが居なければ君と僕は出会ってなかっただろうし、なのにまるで手下になるのがさぞ当たり前かのように自分勝手に話を進めるじゃないか…君は因果律を自由に操ったり出来るのかい?それなら話は別なのだけれど…」


「減らず口だな…契約だ!そして俺の望みだ!さっさと手下になるんだ…!」


「落ち着け、本来の君をどうやら見失いかけてるようだな…まるで深い呪いのような…まぁ、いいか…落ち着くためにまずは君から僕になにか聞くといいさ、なんで牢獄に居るのか、僕が何歳なのかとか、好きな食べ物嫌いな食べ物はなんだとかさ…そういうお互いの積み重ねから始めていこうじゃないか少年?」


「っ…」


「まぁ最も僕は君のことを殆ど知り尽くしているがねカルノ・ミアシュくん?」


「黙れ…その名は捨てた…!」


「それじゃあ君は僕に何を望む?」


クフゾはふっと笑う。


「お前は…なんで牢獄に居る…?」


なんとなく聞いてみる。


「それは僕が入りたくて入っただけさ」


「……じゃあ…年齢は…?」


もう一つなんとなく聞いてみる。


「女性に年齢を聞くだなんて失礼だな君は」


「お前がなんでもいいって言ったんだろうが…」


「そうだね。今は十八かな、君より三歳年上だ」


肉体的な年齢ではな…前世含めたら俺の方が年上だし!


「ん…じゃあ…俺のことをどこまで知ってる…?」


「全部さ、君が元はここの世界の住民じゃないことも、人生で目を擦った回数も…人生で欠伸した回数も…女神の力を持ってることも…ね」


「それじゃあ……ひとまず最後の質問だ…」


「なにかな?」


ニヤリと深紅の瞳をこちらを興味深そうに見る。


「お前の…正体はなんだ――!」


クフゾは八重歯を見せて「ふふふ」と笑う。


「僕は、全知全能さ――」

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