エピローグ.俺の世界
――数分後。
俺は風呂を出て病院で待っているカミス達の所へ戻る。そこにはレフィアの姿もあった。
「あ…ミロク様…」
なにか気まずそうにしている。
いやまぁそりゃそうだけどさ、なにもあそこまでしなくてもよかったんでは…
「れ…レフィア…さっきはすまなかった…」
「いや別に大丈夫ですよ…」
「ミロク様、早くエイメノカサスに帰りましょうよ。こうしてる間にも依頼は来るはずです」
サラムがこの地獄の空気に割って入ってくれた。ありがとう。
「あぁ…それもそうだな」
俺達は駅へ急いで走る。
目の先には汽車がある。その中へ俺達は入り込む。
「ミナノ…」
ミナノの顔は既に敵にバレている状態だ。
この間に襲われてたりしなければいいんだが…
「なんやかんや部下のことが心配なんですねぇ」
「ミロク様はツンデレですからね」
レフィアとカミスがこそこそと話している。聞こえてるぞ。
そして三時間が経った頃、俺達はエイメノカサスに戻ることが出来た。
「いやー、一週間ぶりくらいですね!」
「ここがエイメノカサス…なんとも質素な街ですねぇ」
「とはいえ…ここが俺達の拠点、カオス・エデンのある所だ」
なんか…凄い久しぶりに感じる。
これが俗に言う実家のような安心感ってやつだな。
「レフィアもカネダもカオス・エデンの一員…拠点は見えるし触れれるようにしてある」
カネダとレフィアは目を凝らす。
すると二人とも目を見開いて驚く。
「さ…さっきまで見えなかったのに…いきなり前に家が現れたわ…」
「ふっ…凄いだろう。早く中に入れ」
中は特に多く荷物は置いてるわけでは無い。
リビングにはソファや机などを置いている。
「拠点ってよりただの家感が凄いような…」
「いいんだよ。隠れれば…」
まぁ、いつかは組織感もっと出せるようにしたいなとは思ってるけど…というか、カミスの持ってた財産を使えば新しく建てることも不可能ではない…!
「そうだ…レフィア…お前は他にディアマテや司祭達について知っていることはないか…?資料にまとめようと思ってな」
「そうね言えることがあるとすれば…」
レフィアは固唾を飲み込む。
「…少なくとも幹部はあんな少人数じゃない…二人殺して、ミリアさんを一人抜けさせたと考えても、少なくとも見えてる範囲以外でもあと三人は居るはずよ」
「なに…今回ネオミシスカに来た奴らだけじゃ無かったのか…!」
サラムは少し怖気づいたような表情を浮かべる。
カリンとカミスは眉間に少しシワを寄せる。
「なに、そんなに心配しなくとも俺が居る。そんなに心配することは無い」
「まぁ…確かにミロク様が居るなら大丈夫…だな!」
「それもそうね…」
サラムとレフィアは表情を明るくする。
「確かに…とはいえ情報は掴まないとですね…俺は情報係になるとします。別に戦闘は得意な方ではないですし…」
「助かる。それじゃあレフィア…他は何か知ってることはあるか?」
「私達に関係あるかは分からないですが…ディアマテ復活には神の力を持つ人の血…そして魔族の血が必要とされてます」
「あぁ…そういえば初めてお前に会った時に洞窟でその血を混ぜてたな…」
「そうでしたね…ですが、もう一つ…アマテラス本人の血、そして現在魔王の血も必要となります」
「なんだと…?」
現在魔王の血…つまりはレヴィアの血が必要になるということなのか…レヴィアは白マントに警戒心を示していたようだし、そう簡単に血を渡すわけは無いはずだが…
「現在魔王の血ということはレヴィアの血が必要なんだよな…?レフィアが入っているときには既にレヴィアの血っていうのは入手出来てたのか…?」
レフィアは眉間にシワを寄せて難しそうな顔をする。
「レヴィアは…血をそもそも寄越さないと思います…私が居た頃も交渉に失敗してましたし…」
「それじゃあアマテラスの血は?」
「それは分かりません…言えることがあるとすれば私が居た時にはまだアマテラスの血は入手出来ていなかったことくらいでしょうか…それにあの魔王城の東塔を襲撃したのがミリアさんだったってことも、あの時の私は知りませんでした」
「そうか…」
あまりにも情報が少ない…情報屋に聞きに行くしかないが、有益な情報が入るかどうか…
「とりあえず俺は情報屋でディアマテや白マントに関することを聞いてくる…依頼の電話かなにかあれば知らせてくれ」
「分かりました」
俺は組織を出て情報屋やへと足を運ぶ。
窓は黒布でボロい家屋のような外観だ。
――カラン。
店の扉を開けると鈴の音が鳴る。
店の静かな雰囲気に飲み込まれる。目の前には新聞紙を片手にコーヒーを飲んでいる情報屋のおっちゃんの姿があった。
「やぁ…まさかミロクが既にこの街に入り込んでいたとはねぇ…恐れ入ったよ…」
情報屋のおっちゃんがため息をついて気難しそうな顔を見せる。
「俺は支配者だぞ。敬語を使え」
「はぁ…それで?ここに来たということは何か聞きに来たということですな?何の情報を望みます?」
「今回は、最近世間を騒がせているディアマテ、白マントの集団についてだ」
情報屋のおっちゃんは目を細め、新聞を下げる。
「物騒な話題ですな…まぁいいでしょう」
おっちゃんは水晶に手をかざす。
「どうやら、近頃エルフ王国にて…"何か"が起きるようですぞ…」
「何かって?」
「むー…そこまでは分からない…ですが、それだけは間違いない…そして、私個人から言えることはエルフ王国で大規模なオークションが行われるということ…」
「なにかを賭ける…のか?」
「そうです。景品の内容は…"太陽の化身アマテラスの血"」
「なに!それは…本当か…?」
「もちろんです。アマテラスの血を飲めば…地を照らし、全てを焦土とする…そんな言い伝えがありますな」
アマテラスの血…それに"何か"が起きるという予言…
「まさか既に目を付けていると言うのか…ディアマテ…」
「うーむ…だがそれがディアマテに関する事とはまだ限りませんぞ」
「だとしてもだ…きっと目を付けることには間違いない…こんな絶好の機会…奴らも見逃さないはずだ」
ディアマテ…奴らに世界を奪われてたまるか…俺の野望は…俺の世界は取らせない…
「ありがとなおっちゃん」
俺は店の扉を閉めて組織へと戻る。
「ただいま…何かあったか?」
俺が帰ってくるや否やサラムが慌ただしい様子で突っ込んでくる。
「あっミロク様!」
「どうかしたか?サラム」
「依頼ですよ!次の依頼先はエルフの国です!」
おいおいまじかよ。まさかの依頼先もエルフの国かよ。
「そうなのか…!依頼主は?」
「なんともう客室に居ます」
「そうか…じゃあ話してくる」
俺は扉を開け、部屋の中に入ろうとする。
すると目の前にぷにぷにとした弾力のある物が顔面に衝突する。
なんじゃこりゃ…?
少し体を後ろに下げてその物を見るとまぁなんとも大きな胸!!
「うわぁぁぁっ!?」
俺は思わず後ろに倒れてしまう。
流石にビビるわ。
「おぉ〜お主がミロク殿だな?」
見上げれば露出の多い服装にマントを羽織っている。森林のような深い色の緑髪が肩まである女性だ。
「なっ…なにをするんだ…!」
「いやーすまんすまん部屋をウロウロしていたらたまたまだな」
にしても身長の大きい奴だ…ミロクとしての身体でも一七〇センチはあるのに…それに何と言ってもエルフ特有の長い耳。
「と…とにかく座れ…」
「そうさせてもらう」
俺とエルフの女は向かい合って赤いソファに座る。
「さて…今回お主を呼んだのは他でもない。来週エルフの国でアマテラスの血を賭けたオークションが行われるのは知っとるか?」
「あぁ…一応な」
「それの監視をしてほしいのだ」
「なんだと…?」
「本当は勇者とかに頼みたかったのだが他に用が入ってるようだしな、お主に頼むことにした」
「お前…依頼料は金じゃ無く、カオス・エデンに入ることが条件だということが分かっているかのか…?」
「あぁ、もちろん分かっているとも、あっ妾が入るわけではない。代わりの人員を呼んどるんだが…」
エルフの女は目を逸らす。
「だが…?」
「まぁ…その説明は後ででもよいか…それともう一つお願いがあって…」
「お仲間さんを連れていきたい気持ちもあるかも知れんが、今回はお主一人に来て欲しい」
「なぜにだ…?」
「それも向こうに着いてから教えよう…とにかく、カオス・エデンには依頼がある。ちゃんと人員も連れてくる。それでよいな?」
なんかモヤモヤするけど…理には叶ってるか…
「分かった。それでは早速行こうか…エルフの国…!」
「今日はエルフの国の汽車は止まっておるが」
「あっ…」
なんか締まらないけど、俺の新たな世界への道は少しずつ広がって行くのであった――。




