表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/71

姉妹の絆

 ――病院。

さっきまで夜だったが、気付けば朝日が少し窓から差し込んでいる時間だ。

それにしてもミナノは目覚めたのだろうか。


「ミロク様」


サラムが笑顔で廊下の向こうから走ってくる。


「ミナノが目を覚ましたそうですよ」


サラムは微笑んで言う。


「……そうか」


短く返す。するとカミスは少しだけ笑った。


「随分と嬉しそうですね」


「なに…気のせいだろう」


「ふふっそういうことにしときます」


なんかこいつ最近妙に楽しそうだな。

右腕の件は気にしてないのか…?


「ミリアさんは既に先程向かいました。今頃再会してるんじゃないでしょうか?」


「……」


少しだけ気になった。 俺はそのまま病室へ向かう。

扉の前まで来ると、中から声が聞こえた。


「……お姉ちゃん?」


ミナノの声だった。

本当にもう目が覚めているようだ。


「ミナノ……!」


「よかったぁ……!」


ミリアの泣き声が響く。

二人の涙が朝日で反射して輝く。


「ごめんね……!ごめん……!」


「ちょっ……お姉ちゃん……苦しいって……」


「だってぇ……!」


なんだろう。この感覚は…


「……」


支配をしない信頼…か。

俺も出来たのだろうか?いや、ここまでのものは出来なかったか。


「いや〜…感動しますねぇ…私も涙が止まりません…」


カミスは両手で顔を覆い隠しておいおいと泣く。


「お前はそんな奴じゃないだろ」


「あっバレました?」


カミスはバッと顔を上げる。

ニヤニヤと笑っている。


「にしても……入らないんですか?」


「盗み聞きとは趣味が悪いですよ」


「お前も居る時点で同類だろうが」


「ははは…それもそうですね〜」


「まぁ……悪くない光景ですね」


「あぁ……そうだな」


自然とそんな言葉が出た。

そんな言葉に自分で少し驚く。


「ん?どうかしました?」


「いや……なんでもない」


俺はノックをして扉を開ける。


「あっ……ミロクさん!」


ミリアが慌てて立ち上がる。

ベッドの上ではミナノがこちらを見ていた。


「……ミロク様、本当に助けてくれたんですね…」


「依頼を達成しただけだ」


そう返すと、ミナノは少し笑う。


「……ありがとうございます…なんか本当に色々と助けてもらって…」


「……」


「ミロク様!」


ミナノがベッドに座ったまま頭を深く下げる。


「改めて…姉を助けてくださり、本当にありがとうございました!」


「礼ならもう十分受け取った」


「え?」


「なに、情報のことだ」

 

「ところでカミス」


俺は後ろを振り向いてカミスに話しかける。


「お前、俺にネオミシスカを渡したわけだが、これからどう稼ぐつもりだ?行くところはどうするんだ」


「あぁ、そうでしたねぇ」


カミスが肩をすくめる。


「俺、行く場所無いんですよ」


「……」


そういえばそうだったな。

ネオミシスカの所有権は俺に渡した、だからカミスは働く場所も見つかってなければ権力だってない。


「ん〜…あっじゃあ俺もカオス・エデン入りますね」


数秒感沈黙する。


「え、軽っ」


「いや、だってもう貯金も無いですし…まぁ入るとは言っても、サポート役に回るんですがね。俺のところで雇ってたチンピラ共も二十人くらい入れます。自由にお使いくださいね」


カミスは怪しく笑う。


「はぁ…相変わらずだな」


「それじゃあ、これからよろしくお願いしますよ。支配者様」


サラムがため息をつく。


「変人が増えましたね……」


「お前が言うな」


「酷いですよ!?」


病室に少しだけ笑い声が広がる。

そしてミリアは嬉しそうに、しかし、悔しそうに言う。


「ミロクさん…あなたには感謝しています…しかし、世界の支配を狙うテロ集団ということは見過ごせません。元勇者学園生として、今度は見逃しませんからね」


「ふん、俺の歩く道に障害は無い」


ミリアはふんと首を振る。

そしてミナノに向き直る。


「あの……ミナノ」


「ん?」


「私達、街に戻ろう?」


その言葉で空気が止まる。


「……」


ミナノは視線を落とす。

そして気まずそうに言う。


「戻れないよ」


「え……?」


「私、カオス・エデンと契約してるから…お姉ちゃんを助けるっていう契約で…カオス・エデンを抜けることは出来ない…」


ミリアの顔色が変わる。


「そんな……」


「これはミロク様との契約の上…仕方ないことなの…」


「そんなの……!」


ミリアは拳を握る。


「そんなのおかしいじゃん……!」


「……」


「ちょ…ミロク様〜?」


サラムが肩をつつく。


「はぁ……」


俺はため息をつく。


「一週間だ」


「え?」


全員がこちらを見る。


「ミナノ。お前に休暇をやる」


「休暇……?」


「ミナノ、お前は一週間だけ自由に動け」


「で、でも契約が――」


「俺が許可する。俺の命令に背くのか?」


「一週間、遊んでこい」


「ミロク様……」


ミナノが目を見開く。


「ただし一週間後には戻って来い。お前は俺の組織の人員だ」


「……はい!」


ミナノは嬉しそうに笑った。

ミリアも頭を下げる。


「ありがとう……!本当に……!」


「礼はいい」


俺は背を向ける。


「それじゃあ…カミスさん!」


ミリアは急にカミスの名を呼ぶ。


「私…ですか?」


「はい!あの、ネオミシスカには何回か行ったんですけど…カミスさん見るの初めてで…!サインくれませんか!」


ミリアは紙を取り出す。


「ははっ…いいですよ。非売品ですからね?」


カミスは魔力をインクに変換し、指先でサインを書く。


「どうぞ」


渡されたサインを見てミリアは目を光らせる。


「わぁ〜!それじゃあ…本当に…!ありがとうございました!」


ミリアはミナノの手を引っ張って廊下を駆け抜けて出ていく。


「はぁ…」


俺は病室を出る。 廊下を歩くたびに身体が重くなる。


「流石に…疲れたな…」


「でしたら、近くに露天風呂がありますよ」


カミスは窓の向こうを指差す。


「本当か…!サラムとカリンも入るか?」


「いえいえ、俺達はエイメノカサスで入ります。ごゆっくりどうぞ」


カリンがそう首を振る。

サラムもうんうんと頷く。


「分かった。では行ってくる」


窓から露天風呂のある方角に飛ぶ。

あっという間に入り口へ到着だ。


「よし…」


俺は脱衣場で服を脱ぎ、タオルを腰に巻きつける。

そしてドアを開けると朝日が見えるいい景色――


「キャァァァァア!」


「ミロク様!?」


「あ…あぁ…」


レフィア、ミナノ、ミリアが全裸でタオルを抱えて赤面ヅラで俺を見る。


「「「こんの変態がぁぁぁぁぁ!」」」


光魔法と水魔法二つのトリプル攻撃。

咄嗟に出した魔力ガード如きで防げるわけもなく。


「ぶべぇ!?」


俺は吹っ飛び、脱衣場の壁にぶっ刺さる。


「また…この展開かよ…」


まぁ、ある意味いい景色ではあった――。


「――はっ!?」


目を開けるとそこは真っ暗な空間。


「今度はなんの用だ…女神!」


俺が後ろを振り向くと橙色の髪をした女性が赤ワインを片手に揺らしながら椅子に座っている。


「あら、呼んじゃ悪かった?変態」


「あれはわざとじゃねーよ」


「それにしても…あなた…いい魔法使ったわね」


世界(ワールド・オブ・)は我の調和(コンソナンス)のことか?」


「えぇ、そうよ。あなたが強い魔法を使うたび、あなたの精神に潜んでいる私の意識は引き出されていく…一分くらいなら意識を外に出すことも可能になったわ」


「最悪だなそれ…」


「酷い言いようね…でも、これからもよろしくね。ミロク」


「それだけか…全くつまらん…」


俺は徐々に前が明るい光に包まれる。

目を開ければそこは脱衣場の椅子の上に居た。

横を見ると『ごめん』とだけ手紙が置いてある。


「最悪…」


俺は頭痛が残ったまま風呂へと入る。

次の依頼を楽しみに俺はゆっくり湯へと浸かる――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ