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終戦の鐘

 ――数分前。

サラムはシメルドに対して未だ大したダメージは与えられず、自分へのダメージだけが蓄積されていく。


「う…ぐ…」


サラムはふらふらとよろめきながらシメルドに剣を向ける。


「俺が…勝つ…」


弱々しくも意志のある宣言。

しかし、どれだけ覚悟があろうとも、勝てないこともある。絶対に勝つことは出来ない。サラムは今、勝てないと分かっていても立つ。そんな覚悟があった。


「はぁ…全くしつこい奴だな…」


シメルドはサラムに剣を振りかぶる。

サラムは間違いなく終わったと目を閉じる。

しかし、その瞬間――、


――ビカッ!!


世界が一瞬だけ光に包まれたかと思えばネオミシスカの建物は全て直り、自身の傷も治っている。


「こっ…これは一体…」


「あぁ…?どういうことだ…」


シメルドは唖然として剣の動きを止める。


「まさか…はぁ…そういうことかよ…」


シメルドはそう言い残し、どこかへ飛ぶ。


「おい…!待ちやがれ…!!」


サラムはシメルドを呼び止める。


「ハッ…残念だったな。サラム。今回は俺の勝ちだ」


シメルドはそう言い姿を消してしまう。

カミスとレフィアの方も――、


「ん…今…なにが起きたんだ?」


ネオミシスカが再構築された。

カミスは無傷になった自分を見て思考が止まる。


「これは…閃光司祭と音響司祭の魔力反応が消えましたね…」


ヤユンは上空を見つめる。

タラサマはまさかと目を細める。


「嘘でしょ…?二人も持っていかれたの…?」


赤血(せきけつ)司祭は無事のようですがね…もうアジトに帰ったかと…」


「最悪だよ…せっかく足止めしてたのに…作戦失敗か〜…」


タラサマはがくっと肩を落とす。


「なんだと…?足止め…?本気じゃ無かったっていうのか?なにをしようとしていた…!」


カミスは魔法陣を展開する。


「もう戦う気は無い。だから語る気も無い…我々は、これで失礼する」


「んじゃーね」


そう言い、ヤユンとタラサマは姿を消す。


「なんだったんだ…」


「とりあえず、ミロク様の元へ戻りましょう」


「それもそうですね…」


***


「ミロク様ー!大丈夫ですか!って…」


サラムはミリアを見てゾクッとする。


「ちょ…ミリア…!って…その感じだとなんかもう終わった感じっぽいですね」


「あぁ、それにコセヌミアを倒した…ミリアもこの通り無事だ」


「よかったですね。ミロク様」


レフィアがそう俺に声をかける。


「俺は別に…ミナノの依頼を叶えただけだ」


「感謝しているわ」


ミリアはニコッと笑う。


「あ…あぁ…」


なんとも言えない気持ちだが、悪くはないかもしれない。


「ミロク様…そういえばあの広範囲の爆発みたいなのはなんだったのですか?あれはミロク様が…?」


「あぁ、そうだ。範囲的にミナノの傷も治っているはずだから後で病院に戻ろう」


「流石ですね、ミロクさん。しかし、なぜ最初からあれを使わなかったのです?ミリアさん救出の作戦を実行するだけならそれでよかったのでは…」


カネダは肩をすくめる。


「あれには魔力のコントロールに時間がかかるんだ。そう何回も撃てるわけじゃないし、魔力での影響か魔法具の影響での被害しか治せないからな。もし、カリスイノが魔法以外での洗脳をしていたらミリアやコセヌミアの体力を回復させただけになってしまって、戦況が悪くなっていたかもしれない」


「なるほど…そういえば…他の司祭達に逃げられてしまいました…作戦がどうのこうの言って…」


カミスは悔しそうな顔を浮かべる。


「なるほど…それは調査の必要がありそうだな」


一体なにを企んでいたのか…。

ディアマテとネオミシスカはなにか関係があったのか…?


「そうだ…ミリア。白マントについての話を皆にも聞かせてやってくれ」


ミリアは首を縦に振る。


「えぇ、もちろん。洗脳される寸前の記憶――」


「私はカメアノサス駅で汽車を待っていたの。そうしたら突然後ろから白マントの集団が私を囲ったの…」


「理由がなにかあるんでしょうかね…」


「さぁ…分からないですが…その中に長い茶色の髪をした男性がなにかの魔法を私にかけ…そこからは記憶が無いっていう状態なんです」


「長い茶色髪…カリスイノの事でしょうか」


「そうね、アイツしか居ないわ」


ミリアは確かにエイメノカサスの大会に出るくらいには実力があるし、色んなところを旅していれば知名度もあるかもしれない。しかし、それだけの理由でミリアを強制的に洗脳してまで仲間に引き入れるだろうか…


「ミリア。お前はなにかしていることはあったか?」


「え…ん〜…私にしか出来ないこと…みたいなことですかね?それなら私は昔から神字(しんじ)を読むことが出来るんです」


絶対それじゃん。

しかし、神字と言えば未だに解読が進んでない超難しい言語なはずだけど。それを読めるってのはどういうことなんだろう?


「神字か…もしかしたらディアマテに関する資料かなにかを解読出来る役としてお前が選ばれたのかもしれないな…実力もあるようだし司祭に採用するには十分な理由だ」


「ごめんなさい…私のせいで奴らに何か情報を渡してしまった可能性がある…」


ミリアは表情を曇らせる。


「んなこと全然気にしてないって、少なくとも奴らがまだ本格的に動くにはまだ時間がある」


サラムはミリアの肩に手をかけ、笑顔で接する。

ミリアも少しだけ笑顔になる。


「サラム…救ってやったのは間違ってないが…俺達は人助けのためにやってるわけじゃ――」


――ピコンピコン。


魔法通信の石から音が聞こえる。

俺のからだ。こんな時に一体誰だろう?


「誰だ」


『あぁ…ミロクくん。あれからどうなったかな?』


優しさの裏に強さを感じるこの声――。


「はぁ…なんだ…勇者」


『すまないな。想定外だった…因果を見て予測しておけばよかったよ…』


電話越しだからか知らんが声に反省の色が宿ってない気がする。相変わらずムカつく男だ。


「ふん…こっちはもう終わった。ミリアは正常に戻し、幹部の一人である音響司祭、コセヌミアを殺した…それ以外には逃げられてしまった」


少しだけ沈黙が続く。エクスはうーんと声を出す。


『なるほど…その他の司祭の能力についてはなにか分かるかな?』


「赤髪の男…奴は赤血司祭のシメルドと呼ばれる男…血を操る魔法を持つ。そしてボサボサしてる水色髪の女が悪魔司祭、タラサマ…奴は魔族の魂を操る力…そして老人の野郎…ヤユン、奴は支配司祭。一定範囲の魔力を操る魔法だ」


『なるほど、情報提供感謝する。僕はしばらく別の用でディアマテの件に触れることは出来なさそうだ』


「別に関わんなくたって構わない。そもそも頼んでない」


『確かに、わざわざ君の心配なんてする必要は無さそうだな。って…姫様?なにしてるのですか?ちょっと!?――あ〜…すまない…というわけで…また連絡する…」


魔力通信が途絶える。


「くそ勇者めが…」


「まぁまぁ…ミロク様。とりあえずミナノの所に行きましょうよ。そろそろ起きるんじゃないですか?」


「それもそうだな…」


――と言うわけで、ディアマテ教とのいざこざはとりあえず一段落したのである。

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